健康は骨の維持に重要なタンパク質「LAT1」を発見

国立研究開発法人日本医療研究開発機構

 岐阜薬科大学の檜井栄一教授らの研究グループは、金沢大学の金田勝幸教授、小川数馬准教授、東京医科歯科大学の越智広樹助教、佐藤信吾講師、松本歯科大学の小林泰浩教授、米国国立衛生研究所のYun-Bo Shi(ユンボシ)上席研究員、英国ダンディー大学のPeter M. Taylor(ピーターテイラー)教授らとの共同研究により、健康な骨の維持に重要なシグナルと新しい分子メカニズムを発見しました。

骨の健康な状態を維持する仕組み解明するために

 超高齢社会を迎えたわが国において、骨粗しょう症を代表とする運動器疾患は健康寿命の短縮の大きな原因の一つになっています。従って、骨を健康な状態で維持する仕組みを明らかにすることは重要な課題となります。骨組織は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収により、骨リモデリングが繰り返されていることが知られています。

 本研究グループはこれまでに、グルコースやアミノ酸などの栄養環境シグナルが、骨格の形成やその恒常性の維持に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきました。しかしながら、骨芽細胞や破骨細胞に発現しているアミノ酸トランスポーターが、どのようにして骨組織の恒常性を維持しているのかについて、詳細は明らかにされていませんでした。

アミノ酸トランスポーターの一種「LAT1」の研究

 本研究グループは、アミノ酸シグナルによる骨組織の恒常性の維持に、LAT1が関与しているかどうかを明らかにすることを試みました。LAT1は、「L-type amino acid transporter」と呼ばれる、アミノ酸トランスポーターの一種であり、ロイシンやイソロイシンなどの大型中性アミノ酸を細胞内へ輸送する働きを持っています。

 まず、骨芽細胞特異的なLAT1不活性化マウスを作製してみたところ、骨代謝に異常は認められませんでした。一方で、破骨細胞特異的なLAT1不活性化マウスを作製してみたところ、骨量が大幅に減少することが明らかとなりました。このことから、破骨細胞に発現するLAT1を介したアミノ酸シグナルは骨代謝にとても重要であることが明らかになりました。

 次に、「どうして破骨細胞のLAT1を不活性化すると、骨代謝に異常がみられるのか」という疑問を解決することを試みました。そこで、 LAT1不活性化細胞における細胞機能を調べました。その結果、破骨細胞の数や大きさおよび骨吸収能が増加していることが分かりました。さらに詳細な解析を行ったところ、LAT1不活性化細胞では、「mTORC1」と呼ばれる、細胞の成長、増殖、生存、分化などのさまざまな機能を調節する、 複数のタンパク質による複合体のシグナルが抑制されており、「NFATc1」と呼ばれる、破骨細胞分化に必須の転写因子の発現量の増加と核内移行の亢進が観察されました。

 以上のことから、破骨細胞におけるLAT1を起点とするアミノ酸シグナルは、mTORC1を介してNFATc1の発現量や機能を調節することで、骨代謝に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

本研究成果による今後の展開

 本研究成果は、骨が健康な状態で維持される仕組みについて、新しい知見や概念を提供するとともに、「適切なタンパク質・アミノ酸を摂取する適切な食生活習慣は、健康な骨の維持に重要」という概念に新たなエビデンスを提供します。さらに骨代謝異常や、骨組織の恒常性維持の破綻によって引き起こされるさまざまな運動器疾患や骨系統疾患に対する新しい知見と解決法を提供し、アンメット・メディカル・ニーズ(未だ有効な治療方法が確立されていない疾病に対する医療への要望)の解消にも貢献することが期待されます。