緑内障が生体リズムに影響

奈良県立医科大学

 日本人の緑内障の有病率は40歳以上で5%と高い頻度を記録しています。緑内障は慢性の神経変性疾患で、視野と視力に影響を及ぼすものです。自覚症状に乏しく視神経障害の改善治療がないことから、国内の中途失明原因の第一位ともなっています。視機能障害は医療コストの原因となり、生活の質を著しく下げる原因にもなるため、現代の社会問題になっています

緑内障とうつとの関係

 ヒトの血圧は、生理的に睡眠中に下がることが知られています。睡眠中の血圧は心血管系疾患の発症を予測する目安にしやすく、臨床での参考にしやすい数値でもあります。
生体内リズム調整では、網膜神経節細胞をはじめとした眼への光刺激が重要な役割を果たしています。緑内障にかかると網膜神経節細胞が障害されるため、緑内障患者は睡眠や血圧など、生体リズムに様々な疾患が生じやすくなります。光を浴びる量と独立して、緑内障がうつ病と関連しているとの報告もあります。

睡眠中の血圧上昇

 奈良県立医科大学眼科では、通院中の緑内障患者109名(平均年齢71.0歳)と、地域住民を対象とする疫学研究参加者から緑内障患者を除いたコントロール708名(平均年齢70.8歳)を抽出し、24時間連続血圧データの比較を実施しました。その結果、睡眠中の緑内障患者の血圧は119.3mmHg、コントロール群の血圧は114.8mmHgが測定されました。この結果、緑内障患者は睡眠中の血圧が下がらない傾向にあり、心血管障害や死亡の生じる可能性が高いことが示唆されました。

十分な実験データ

 従来の報告では、睡眠中の過度の血圧低下が緑内障の悪化と関連すると考えられていました。緑内障の患者は睡眠中の血圧が低下していると考えられていたのです。今回実施した新たな研究では、データのサンプルサイズを大きなものとし、信頼性の高いデータから緑内障患者の睡眠中の血圧が上昇していることを明らかなものとすることに成功しました。通院患者109名、緑内障を除外したコントロール708名を対象とした24 時間連続血圧測定を行ない解析した結果、年齢・肥満・糖尿病などにおいて、年齢・肥満・糖尿病等とは独立して緑内障患者の夜間血圧が高く、心血管イベントや死亡が生じやすい原因として示されました。

臨床への貢献

 ヒトの生体内のリズム調整には、眼への光刺激が最も重要な手段とされています。緑内障患者の場合、網膜神経節細胞が障害されることから生体リズムに関わる様々な疾患が起きやすいことが知られています。睡眠中の緑内障患者の血圧は若干上昇傾向にあり、心血管障害、あるいは死亡のリスクも高いことが明らかになってきました。これらの研究結果から、緑内障患者において、心疾患の発症リスクを予測することが可能になってきました。視機能障害による医療コストなど、社会的問題の解決にもつながる研究と言えるでしょう。