B型肝炎ウイルス抑制物質「CDM-3008」の作用機序解明

京都大学

 京都大学と理化学研究所の共同研究グループは、、インターフェロン様活性を持つ低分子化合物「CDM-3008(RO4948191)」が、B型肝炎ウイルス(HBV)の「cccDNA(完全閉塞本鎖)」抑制効果などにより抗B型肝炎ウイルス活性を示すことを明らかにしました。

インターフェロン製剤の副作用の問題

 インターフェロン製剤は注射剤であるため投薬の際には病院に行く必要があり、また発熱・倦怠感などの副作用を伴うなどの問題を生じることがあります。しかし、インターフェロンはAPOBEC3ファミリーのシチジンデアミナーゼ活性を介して「cccDNA(covalentlyclosedcircularDNA完全閉塞本鎖)」を分解することが報告されており、B型肝炎の完治に向けてインターフェロンは欠かせません。一方で、核酸アナログ製剤(エンテカビルなど)は強力にB型肝炎ウイルスの複製を阻害しますが、cccDNAを完全には抑制することができず、治療の中止と共にB型肝炎ウイルスが再活性化する可能性があります。

CDM-3008のHBVに対する効果の検討

 インターフェロンの問題点の解決を目指して、経口投与が可能でインターフェロン様の活性を持つ低分子化合物「CDM(cccDNAmodulator)-3008」の抗HBV活性を解析しました。CDM-3008(RO-4948191)は、イミダゾ[1,2-a][1,8]ナフチリジン骨格を有する分子量373の化合物で、C型肝炎ウイルス抑制効果が報告されていた化合物ですが、HBVに関しての薬効はこれまで不明でした。

 そこで当研究グループは、初代培養ヒト肝細胞を用いてCDM-3008のHBVに対する効果を検討した結果、CDM-3008はHBVDNA、cccDNA、HBsAg(B型肝炎ウイルス表面抗原)、HBeAg(B型肝炎ウイルスe抗原)の量を抑制することを明らかにしました。一方、CDM-3008は核酸アナログ製剤エンテカビルと相加的に抗HBV効果を示しました。

 そこで、CDM-3008によって影響を受ける遺伝子群の発現解析を行った結果、CDM-3008はインターフェロンαと同様な細胞内シグナルを活性化することで抗B型肝炎ウイルス活性を発揮していることが示唆されました。一方、CDM-3008特異的に発現増強される遺伝子を解析した結果、「STAT(Signaltransducerandactivatoroftranscriptionシグナル伝達兼転写活性化因子)」シグナルを阻害する「SOCS(SuppressorofCytokineSignalingサイトカインシグナル伝達制御分子)」ファミリーを同定しました。したがって、CDM-3008はフィードバック阻害によりインターフェロン受容体からのシグナルをより強く抑制し、インターフェロンαの副作用軽減効果も期待されます。

本研究結果から今後期待されること

 本成果は、これまで注射剤として処方されているインターフェロン製剤を安価で経口投与が可能な低分子化合物に置き換え、核酸アナログ製剤との併用によって、より効果的にB型肝炎ウイルスを抑制できる可能性を示しています。

 現在、同研究グループでは、CDM-3008をリード化合物として精力的な構造活性相関研究を展開しており、今後、活性の向上、副作用を軽減した新規抗B型肝炎治療薬の開発が期待されます。