末期腎不全の患者さん必読!透析治療の長所・短所と怖い合併症を専門医が徹底解説

駒沢腎クリニック院長 
中村良一

腎機能が低下し末期の腎不全になると受ける透析療法は血液透析と腹膜透析に分けられる

[なかむら・りょういち]

1982年、東邦大学医学部卒業。医学博士。東邦大学大橋病院、国立療養所東京病院(現・国立病院機構東京病院)、日産厚生会玉川病院、虎ノ門病院分院勤務などを経て、1989年、日産厚生会玉川病院透析科医長。1995年より現職。日本循環器学会循環器専門医、日本透析医学会指導医、日本腎臓学会指導医、日本抗加齢医学会抗加齢専門医。

 慢性腎臓病が進行して血液のろ過機能が低下すると、老廃物や尿毒素が体内に蓄積して尿毒症といわれる中毒症状を起こします。尿毒症は、皮膚や神経、循環器、消化器などに悪影響を及ぼして、最終的には命にも関わります。

 腎臓の機能が15%まで低下した状態を、末期腎不全と呼びます。末期腎不全になると、尿毒症が深刻化して生命を維持することができなくなります。腎臓の機能を代わりに補う「腎代替療法」が必要になるのです。

腎代替療法には「人工透析」と「腎移植」の2つの方法があります。残念ながら、日本は諸外国に比べて、腎臓の提供者が圧倒的に少ないのが実情です。末期腎不全と診断された患者さんの多くは、医師との相談を経て人工透析治療を受けることになります。

 透析療法は、人工的に体の血液を浄化する働きを代行する治療法です。透析療法を受けた末期腎不全の患者さんは生命を維持し、ある程度までは普通に生活することが可能になります。

 人工透析には血液透析と腹膜透析の2つの方法があります。血液透析と腹膜透析は、どちらかが優れているというものではありません。それぞれに長所と短所があるため、医師と十分相談し、自分の生活スタイルに合わせて選択することが大切です。

 まずは血液透析について解説しましょう。血液透析は血液を体外に出し、ダイアライザーという透析器(人工膜)によって浄化する治療法です。静脈が発達しているほうの腕に、血液の出入り口であるブラッドアクセス(シャントなど)を造設する手術を行う必要があります。一般的な血液透析は1回につき約4時間かかります。多くの透析患者さんは、週2~3日、透析施設が整った医療機関に通院して治療を受けています。

 日本では、透析患者さんの95%が血液透析を選択しています。治療成績も高く、腹膜透析に比べて治療できる医療機関が多いため、通院可能なエリアが広がります。一般的に、血液透析は腹膜透析よりも尿毒素や余分な水分の除去能力が高いと考えられています。さらに、医療従事者が透析機器を操作するため、手技を覚えなくても安心して透析を受けることができます。

 血液透析は通常、週に2~3日の通院が必要になるため、生活の中で時間の制約が生じます。透析を受ける医療機関は、できるだけ自宅や職場近くの病医院を選びましょう。

 血液透析は透析のたびに専用の針を体に刺す(穿刺)必要があります。また、血液透析は全身にたまった尿毒素や余分な水分を一度に取り除くため、腹膜透析と比べると、体に負担がかかります。 食事に関しても、塩分、水分、カリウムなどの摂取量に注意が必要です。

 次に、腹膜透析(PD)について解説しましょう。現在、日本では透析患者さんの約3%、約1万人弱が腹膜透析を選択しています。 日本では少数派の透析法ですが、腹膜透析は腎臓の残った機能を生かせることから、まずは腹膜透析を導入し、数年後に血液透析へ移行する患者さんも増えています。

 腹膜とはおなかの中にある胃、腸、肝臓などの内臓の表面を覆っている薄い膜のことで、腹膜透析とは腹膜を介して透析を行う治療法です。 腹膜の中に透析液を入れておくと、体内の余分な水分や尿毒素が透析液に吸い込まれていきます。定期的に透析液を取り除いて、新しい透析液を入れる作業を繰り返すことで、血液が浄化されます。

 腹膜透析を導入する場合、透析液を交換するための細い管(透析カテーテル)をおなかに取りつける必要があります。透析カテーテルを留置する手術は通常、1~2時間程度で終わります。透析液の交換は、基本的には患者さん本人またはご家族(介護者)が行います。

 血液透析より時間をかけて透析を行うため、体への負担が少なく済みます。針を刺す必要もなく、透析カテーテルから透析液を6時間程度ごとに交換するだけです。

 血液透析は、専用の医療機関に週2~3日通院する必要がありますが、腹膜透析は月1~2回程度の通院で済みます。透析液を交換することができれば、場所や時間の制約を受けることはほとんどありません。最近では、在宅医療といっしょに提供されることも多くなっています。

 腹膜透析は腎臓の残った機能を生かすことができるため、食事面では血液透析に比べて水分やカリウムなどの制限が緩やかです。尿が出る期間も血液透析に比べて長期になる傾向があります。

 腹膜透析を管理できる医療施設はまだ少なく、地域によっては腹膜透析を選択できない場合もあります。さらに、腹膜透析は、本人またはご家族の自己管理力が求められます。特に、カテーテルの出口付近は感染症を起こしやすいため、できるだけ清潔に保つ必要があります。

 腹膜透析は常におなかに透析液を入れていることから、腹膜炎を起こすおそれがあります。腹膜炎を繰り返すと、腹膜が徐々に傷んできます。腹膜透析ができなくなるまで傷むと、血液透析に移行することになります。

 食事制限に関しては、血液透析に比べて水分やカリウムなどの制限は緩やかですが、あくまでも腎機能が残っている患者さんに限られます。腎機能が低下して尿の量が減ってくると、血液透析と同様に食事制限が必要となります。

透析患者さんはめまいなどの合併症に要注意で食事と運動のバランスの改善が大切

血液透析や腹膜透析は病状や生活スタイルによって選択する

 透析療法を長く続けることで、透析に伴う合併症が生じやすくなります。透析を受けている患者さんのほとんどに見られる合併症が、貧血です。疲労感や動悸、息切れ、めまいなどの症状が起こります。造血ホルモンが十分に作られないことや、尿毒素の影響で赤血球の寿命が短くなることによって起こります。

 また、透析患者さんに特徴的な合併症として、透析アミロイドーシスが挙げられます。透析でろ過されにくい尿毒素の1つにβ2ミクログロブリンがあり、透析期間が長くなると、β2ミクログロブリンから変化したアミロイドという物質が全身の骨や関節に沈着します。すると、骨や関節の痛みやしびれ、変形を引き起こすのです。

 皮膚に尿毒素が沈着したり、汗腺の劣化によって汗をかく量が減少したりすることで、かゆみを訴える透析患者さんも少なくありません。また、透析を行っている患者さんは、高血圧や脂質異常症、カルシウム代謝異常などが重なりやすく、動脈硬化を起こしやすくなります。その結果、閉塞性動脈硬化症や脳梗塞、心筋梗塞、眼底出血などが起こる可能性が高まります。

 さらに、腎不全になると免疫力が低下することから、感染症にかかる確率が高くなります。シャント部の感染や、カゼからの肺炎、肝炎、足の壊疽には注意が必要です。長期間に透析治療を受けている患者さんは、がんになりやすいことも知られています。特に、腎臓をはじめ、胃、大腸などの消化器系にがんが発症しやすいといわれています。

 血液透析特有の合併症の代表は、血圧の低下です。短期間に体内にたまった水分を除去することで血圧の低下が起こるようになります。血液透析を受けている患者さんにとって避けられない状態ともいえるでしょう。

 さらに、透析導入時期には、不均衡症候群も起こりやすくなります。透析によって血液中の尿毒素は排出されるものの、脳の尿毒素は抜けにくいため、脳と血液の間に尿毒素の濃度差が生じます。濃度を調整しようとして脳に届けられる水分が過剰になると、さまざまな不調が現れるのです。血圧の低下も不均衡症候群も、吐き気や嘔吐、頭痛などが主な症状です。不均衡症候群は、透析に慣れるにつれて起こりにくくなります。

 一方、腹膜透析の合併症は、腹膜やカテーテルの問題がほとんどです。最も重視したい合併症が腹膜炎で、腹痛や発熱などが主な症状です。腹膜炎は病原菌が腹膜の周囲に入ることによって起こるため、カテーテルや透析液が入ったバッグをていねいに管理して予防しましょう。

 被嚢性腹膜硬化症にも注意が必要です。被嚢性腹膜硬化症にかかると、腹膜全体が厚くなり、腸管が動かなくなります。腹膜透析を長期間続けることで起こり、進行すると腸が癒着して腸閉塞になることもあります。具体的な症状としては、吐き気や腹痛、便秘などです。

 透析の合併症を防ぐには徹底した自己管理、特に運動・食事のバランスが大切です。近年の研究で、運動が透析患者さんの生活の質を向上することが分かりつつあります。特におすすめなのがウォーキングで、肩甲骨から大きく腕を動かしながら歩くようにしましょう。無理は禁物ですが、連続して30分以上歩くことを目標にしてください。

 食事ではたんぱく質やカリウム、リン、塩分の制限をしっかり行う一方、不足しがちな栄養素を積極的にとりましょう。特にたんぱく質は、極端に控える患者さんが多く、不足しがちな栄養素です。たんぱく質の過度な制限は、筋力の低下を招きます。制限された範囲の中で、十分な量をとるようにしましょう。

 他にも睡眠の質や薬の服用など、気になる点が少しでもあったら、必ず担当医に相談しましょう。私のクリニックでは、透析患者さん向けのサプリメントをおすすめしています。慢性腎臓病や透析患者さんでも安心して摂取でき、体調の維持に役立っています。