脊柱管狭窄症が進行すると連続歩行が困難になり神経マヒや排尿・排便障害も合併

長野寿光会上山田病院/財団大西会千曲中央病院整形外科医師
吉松俊一

脊柱管狭窄症は圧迫されている神経の部位によって「神経根型・馬尾型・混合型」に分類

[よしまつ・しゅういち]

日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本体育協会公認スポーツドクターとして活躍。主に子どもの肩・ひじ関節、またスポーツ現場で見られる腰痛と遺伝の関連性などを40年以上の長期にわたって研究。さらに、日本屈指のスポーツドクターで、負傷したプロスポーツ選手が数多く治療に訪れ、復帰に貢献している。

 腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症と略す)の患者さんは、足腰の痛みやしびれ、だるさを訴えることが多く、ひざや股関節周辺の痛みやしびれを訴える方もいます。患者さんによって訴える症状に違いが出るのは、圧迫されている神経の部位が異なるためです。脊柱管狭窄症は、圧迫される神経の部位によって、一般的に「神経根型」「馬尾型」「混合型」の3つのタイプに分けられます。

 神経根は、脊髄の末端から左右に枝分かれした神経の根元のことです。神経根が脊柱管の狭窄によって圧迫されるタイプを神経根型といいます。神経根は背骨の左右に1つずつあり、通常は左右どちらかの神経根が障害を受け、症状も左右どちらかの足腰に出るのが特徴です。

 馬尾は、脊髄にある末端の神経の束のことで、腰椎部の脊柱管の中に存在します。馬尾が脊柱管の狭窄によって圧迫されるタイプを馬尾型といいます。馬尾が圧迫されると、馬尾とつながっている左右の下肢全体の神経に影響が出るため、左右両方の下肢の痛みやしびれが広範囲に及び、間欠性跛行が現れるのが特徴です。

馬尾:脊髄神経から枝分かれした神経の束。腰椎部の脊柱管に存在する
神経根:馬尾から枝分かれした神経が脊柱管から左右に出ていく部分

 神経根型と馬尾型の両方が合わさったタイプを混合型といいます。2つのタイプが合わさっているため、症状も馬尾型と神経根型の2つの特徴を持っています。

 脊柱管狭窄症は、ゆっくりと進行していきます。歩いているときだけではなく、立っているだけ、あおむけに寝ているだけでも、痛みやしびれがひどくなります。腰を反らすと痛みが悪化し、前かがみになったり、イスに腰かけたり、横向きになって体を丸めて寝たりすると、痛みは軽くなります。背中を後ろに反らすと脊柱管がさらに狭くなって神経への圧迫が強まり、腰を丸めると脊柱管が広がって圧迫が緩むためです。

 ただし、神経が圧迫されれば、前かがみの姿勢でも痛みやしびれが出ることもあります。そのようなときは、痛みが出る姿勢や動作を避けるようにしましょう。

脊柱管狭窄症の症状は痛み・しびれだけでなく知覚異常、下肢の脱力感、排便・排尿障害など多数

腰部脊柱管狭窄症が原因で起こる症状

 脊柱管狭窄症がさらに進行すると、足の感覚が鈍くなる感覚障害や、足の筋力が低下する運動マヒが見られるようになります。また、膀胱・直腸の機能や感覚に関係する神経に障害が起こるケースもまれにあります。排尿や排便がうまくコントロールできなくなったり、肛門の周辺にしびれや灼熱感を覚えたりするようになるのです。次に、脊柱管狭窄症の患者さんが訴える主な自覚症状をご紹介しましょう。

● 腰痛
 脊柱管狭窄症の患者さんの半数以上が腰痛を訴えます。腰椎椎間板ヘルニアでは安静時でも痛みがあるのに対して、脊柱管狭窄症では立ったり歩いたりする動作時に痛みが悪化し、安静時には軽減するのが特徴です。

● 下肢痛
 腰痛に次いで多い症状が下肢痛です。痛みを感じる部分は、圧迫されている神経の部位によって、太ももの前側や股関節、ひざの上に症状が出たり、太ももやひざの裏側、ふくらはぎに痛みが出たりします。

● 足のしびれ・知覚異常
 お尻から太ももの裏側、足先にかけて、しびれるような感覚が生じることも少なくありません。その他、冷感や灼熱感、引きつり感、締めつけ感など、さまざまな知覚異常が出る場合があります。足裏がジリジリする、足裏の皮膚が厚くなったように感じるなども知覚異常の1つと考えられます。

● 下肢の脱力感
 脊柱管狭窄症の患者さんの約半数に下肢の脱力感が見られると報告されています。具体的には「足に力が入らない」「かかとを上げられない」「階段や段差などでつまずく」「スリッパがすぐ脱げる」などの症状です。下肢の脱力感は、動作時だけではなく、午後や夕方に強まるのも特徴です。

● その他
 馬尾には膀胱・尿道・直腸・肛門につながる神経の出発点があるため、重症例では下肢のマヒが進行して歩行時に尿や便をもらす排尿・排便障害が見られることがあります。尿を出しづらくなる尿閉や残尿感、歩行時などの失禁や頻尿、便秘などです。男性では、間欠性跛行と同時に痛みを伴う陰茎勃起(間質性勃起)が起こることもあります。

 脊柱管狭窄症によるさまざまな症状の悪化を防ぐため、血流を悪化させる喫煙はやめることをおすすめします。また、適正体重を維持するとともに、腰に負担をかける姿勢や動作を避けるようにしましょう。