運動恐怖は腰の曲げ伸ばし動作を緩慢にさせる

畿央大学

 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターは、地域在住の慢性腰痛者における運動恐怖が運動にどのような影響を及ぼすかを明らかにしました。今回の研究のポイントとして、腰の曲げ伸ばし運動における「運動の開始」と「運動方向の切り返し」は、運動恐怖によって修飾されることが明らかになったとのことです。

運動恐怖とは

 慢性腰痛者の多くは「腰を曲げるのが怖い」と訴えます。「動かすと痛くなりそうで怖い」「(再)損傷しそうで動かすのが怖い」という感情のことを運動恐怖(kinesiophobia)と呼んでいます。

 多くの研究から、運動恐怖が慢性腰痛者の日常生活動作を悪くしていることが明らかになっていましたが、どのような運動異常をもたらすかは分かっていなかったそうです。

腰の曲げ伸ばし動作を計測

 畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの研究グループは、地域在住の慢性腰痛者を対象に腰の曲げ伸ばし動作の計測を行ったとのこと。計測に参加した慢性腰痛者には「合図が鳴ったら、できるだけ大きく・速く腰を曲げて、すぐ元の姿勢に戻ってください」と伝えて、運動課題を実施したそうです。

4つの相にわけて分析

 腰の曲げ伸ばし運動を

Phase1:合図音から腰曲げ動作が始まるまで
Phase2:腰曲げ動作開始から腰曲げの速度が最大になるまで
Phase3:腰曲げ動作最大速度の時点から腰伸ばし動作の速度が最大になった時点まで
Phase4:腰伸ばし動作最大速度の時点から元の姿勢に戻るまで

の4つの相にわけて分析したとのことです。

腰椎を過剰に保護

 慢性腰痛のない方、慢性腰痛があって運動恐怖がない方、慢性腰痛があって運動恐怖がある方で比較すると、運動恐怖がある慢性腰痛者においてのみ、Phase1「運動の開始」とPhase3「運動方向の切り返し」に時間がかかることが明らかになったそうです。

 このことは、運動の躊躇あるいは凍結のような現象であり、いずれも腰椎を過剰に保護しようとしたためにもたらされたものと考えられるとのことです。

臨床意義と今後の展開

 運動恐怖は目に見えづらいものではありますが、それを運動計測によって捉えた点は臨床的意義があるようです。今回の研究で、運動恐怖のある慢性腰痛者において顕著な運動障害は認められませんでした。しかし、「運動の開始」あるいは「運動方向の切り返し」において動作に時間がかかったことから、腰痛が重症化する前にも出現する初期症状であることが考えられます。今後、これをリハビリテーションによって改善させることができるかが検証される予定とのことです。