大腸癌の転移を引き起こす新たな遺伝子「Crumbs3」が明らかに

新潟大学

 新潟大学院医歯学総合研究科分子細胞病理学分野 近藤英作教授、飯岡英和助教らの研究グループは、胎児の発生に必須の遺伝子であるCrumbs3(Crb3、クラムス3)が、大腸ガンの転移を引き起こすことを明らかにしました。今後詳細なメカニズムを解析することで、転移の激しい難治ガン・進行ガンの新たな治療法が見つかる可能性があります。

ガンの浸潤・転移が治療を困難にさせる背景

 ガン(悪性新生物)は男女ともに日本人の死因の第1位であり、中でも大腸ガンは罹患者数、死亡数で上位を占めます。他の部位のガンと同様に、浸潤・転移の有無は治療法の選択や患者の予後に大きな影響を与えます。特に、遠隔転移を有する大腸癌患者の5年生存率は20%程度であり(遠隔転移が認められない場合、80%以上)、浸潤・転移が治療を困難にし、予後を悪化させる大きな要因となっていることを浮き彫りにしています。浸潤・転移の激しい難治ガン、進行ガンに対する手立ては不十分であり、新たな対処法の開発が求められています。

Crb3の機能を解析

 Crb3は、発生生物学的研究から正常な上皮組織と呼ばれる、体や臓器の表面を覆う細胞層の形態や機能の構築に必須の遺伝子として同定され、実験動物や培養細胞を用いた実験によって、ガンの形成に対し抑制的に働くことが報告されていました。本研究ではヒトの大腸癌サンプルを用いて解析することにより、実際のヒトの大腸癌におけるCrb3の機能を解析しました。

Crb3がFGFRとの結合でガン細胞の転移を促進することが明らかに

 Crb3特異的抗体を作成し、ヒト大腸癌組織切片や大腸癌培養細胞を用いた分子病理学的解析より、Crb3が多くの癌組織に発現することを明らかにしました。特に大腸癌ではCrb3の発現が強い傾向が認められため、大腸癌培養細胞からCrb3-ノックアウト細胞と呼ばれる、Crb3遺伝子を破壊し、Crb3タンパク質が存在しない細胞を作成し、機能解析を行いました。その結果、Crb3が線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)と呼ばれる、FGF(線維芽細胞増殖因子)という分泌タンパク質により活性化される受容体タンパク質と結合し、活性化することで大腸癌細胞の移動性を高め転移を促進することが判明しました。

ガン転移を阻止する新たな治療法への期待

 Crb3が転移を促進することはこれまでに知られておらず、詳細なメカニズムの解析を進めることで、転移をターゲットとした新たな診断法や治療法の開発に繋がる可能性があります。