解熱剤使用の必要性が明確に

東北大学

 東北大学と仙台医療センターの研究グループが、インフルエンザウイルスに感染した際の高熱に相当する高温が細胞傷害に与える影響を調べ、ウイルス感染のない状態でも高温下で細胞傷害が生じること、細胞傷害に起因してインフルエンザウイルスの増殖が減少すること、インフルエンザウイルス感染後に平熱と同様の細胞傷害を生じることを明らかにしました。

 これらの研究結果によって、インフルエンザウイルス感染時の治療における、安全性の確立されている解熱剤使用の必要性が明確になったとのことです。

発熱の維持か?解熱か?

 インフルエンザに感染すると白血球などからインターフェロンが放出されます。このインターフェロンは発熱を促す一方、ウイルスの増殖を抑制する効果があります。また、免疫反応を活性化する役割もあるといわれています。

 しかし、高熱が続くと、小児ではけいれん、高齢者では脱水などのために症状が重症化することが指摘されていました。このため臨床現場では、症状の改善と重症化を防ぐために解熱剤が使われています。

 これまで、インフルエンザに感染した際の高体温が人体にどのような悪影響を与えるのか、科学的に証明されていませんでした。「発熱の維持か?解熱か?」患者さんにとってどちらが有益か曖昧なままだったそうです。

ウイルス感染が細胞の傷害性に及ぼす影響

 今回の研究では、ヒト由来の呼吸器の細胞(気道上皮細胞)を高温(39度、40度)および平熱(37度)で培養し、インフルエンザウイルス感染が気道上皮細胞の傷害性に及ぼす影響を調べたとのこと。

5日間高温で培養すると感染していない場合でも

 インフルエンザウイルスに感染していない細胞と、2019年新型インフルエンザウイルスを感染させた細胞を比較した結果、5日間高温で培養するとインフルエンザウイルスに感染していない場合でも細胞の生存率が低下することがわかったそうです。

高温で培養した細胞の生存率の方が

 インフルエンザウイルスに感染させた場合、感染3日後から平熱で培養した細胞に比べて、高温で培養した細胞の生存率が大幅に低下したとのことです。

インフルエンザウイルスの増殖が減少

 2019年新型インフルエンザウイルスを感染させた細胞を高温下で3日間以上培養すると、ウイルス増殖(放出量)が減少したそうです。2019年新型以外の季節性インフルエンザウイルスでも同様の結果が出たとのこと。

 また、インフルエンザウイルスが細胞に侵入するために利用している細胞内の小胞(酸性エンドソーム)が高温で減少し、高温による細胞傷害がウイルスの増殖抑制に関連することが明らかになったそうです。

研究手法と成果

 研究結果から、抗インフルエンザウイルス薬でウイルスの増殖を抑え、安全性の確立されているアセトアミノフェンなどの解熱剤を活用して平熱を維持した方が、身体に対する悪影響(細胞傷害性)を回避できると考えられるようです。

 今回の研究は、インフルエンザウイルスの治療における、安全性の確立されている解熱剤使用の理由を明確にし、インフルエンザ患者の重症化を防ぐ治療の促進に貢献することが期待できるとのことです。