肥満に対する新しい治療法確立の可能性

群馬大学

 群馬大学と国立感染症研究所は、寄生虫が体重増加を抑制するメカニズムを世界で初めて証明したと発表しました。寄生虫による免疫抑制のメカニズムを利用することによって、肥満に対する新しい治療法の確立につながることが期待されるとのことです。

肥満に対する新しい治療法を目指して

 肥満は慢性炎症のひとつとして知られ、世界中で増加傾向にあります。肥満になると、糖尿病や心筋梗塞、脳卒中、腎機能障害などになるリスクが高まります。これらの病気になってしまうと、一生続く人工透析や継続的な降圧剤の服用など莫大な医療費がかかるため、大きな社会問題になっています。

 そこで今回、肥満に対する新しい治療法を目指し、寄生虫による免疫抑制メカニズムを利用することになったとのことです。

寄生虫によって痩せるという話は昔からあったが

 世界的に有名な歌手であるマリアカラスさんがサナダムシを利用して、106kgあった体重を約1年で55kgまで落としたという話など、以前から寄生虫によって痩せられるという話は存在していました。しかし、「本当に痩せるのか」「健康被害はないのか」など不明な点が多い現状があったようです。

体重増加が抑えられた

 28日間、高脂肪食を与えて太らせたマウスに腸管寄生蠕虫(ぜんちゅう)という寄生虫を感染させると、体重増加が抑えられ、脂肪量も低下したそうです。また、血中の中性脂肪や遊離脂肪酸が有意に低下したとのことです。

ノルエピネフリン濃度が増加

 寄生虫を感染させたマウスでは非感染マウスに比べて、血中のノルエピネフリン(神経伝達物質のひとつ)の濃度が増加していたそうです。また、糞便中のエシェリキア属とバシラス属が増加していたとのこと。これらの腸内細菌はノルエピネフリンを分泌することが知られています。

肥満に対する新しい治療法の確立へ

 寄生虫を感染させると腸内細菌叢が変化し、ノルエピネフリンは脂肪細胞上に存在する受容体と結合するとミトコンドリア UCP1の発現が増加し、熱産生を行うそうです。寄生虫に感染したマウスではエネルギー代謝が亢進し、その結果、抗肥満的に働くことが明らかになりました。

 寄生虫による免疫抑制のメカニズムを利用することによって、脂肪の燃焼が亢進しやすく、痩せやすい体になるということが証明されたので、今回の研究が肥満に対する新しい治療法の確立につながることが期待されます。