〝隠れ子宮内膜症〝は月経時の重い痛みが特徴で激痛を伴ったら発症を疑いましょう

ロマリンダクリニック院長
富永國比古

急増中の子宮内膜症は月経のある女性の10人に1人が発症し重い月経痛が主症状

[とみなが・くにひこ]

1949年、福島県生まれ。1975年、岩手医科大学医学部卒業。東京衛生病院産婦人科医長を経て、米国ロマリンダ大学大学院博士課程に進む。1997年、福島県郡山市にロマリンダクリニック(婦人科・心療内科)を開院。岩手医科大学医学部非常勤講師。女性の心と体に関する研究や著書多数。

 私が院長を務めるロマリンダクリニックは、婦人科を中心に心療内科やアレルギー科、がん患者さんを対象にした統合医療も併設する〝女性のための総合クリニック〟です。私のもとには、全国から女性ならではのさまざまな悩みを抱える患者さんが訪れています。

 女性を取り巻く環境の変化に伴って増加しているのが、子宮内膜症です。子宮内膜症は、月経(生理)がある女性の10人に1人が罹患している疾患です。

 子宮内膜症と診断されて治療を受けている患者さんは、1997年の厚生省(現・厚生労働省)による調査では約13万人、2014年に日本産婦人科学会が行った調査では約22万人と報告されています。治療を受けていない人も含めると、200万人以上が罹患していると推計されています。

 子宮内膜症の患者さんの多くが抱える悩みは重い月経痛です。9割近くの人が月経時に重い痛みを経験し、およそ7割の人が月経時以外でも痛みを感じています。日常生活が困難になるほど、痛みなどの月経に伴う症状が強く現れている状態のことを、月経困難症といいます。

 子宮内膜症は、月経困難症を引き起こす疾患として知られ、多くの患者さんが月経期間中に下腹部痛や腰痛、頭痛、吐き気などの症状に苦しんでいます。現在、日本における月経困難症患者さんの人数は、800万人以上に上ると推定されています。ところが、その中で医療機関を受診しているのは、わずか10%だといわれています。

子宮内膜症は不妊の原因になり卵巣に嚢胞ができると卵巣がんを発症するリスク大

子宮内膜症は子宮内膜組織が子宮以外の器官や臓器に付着して起こる難治性の疾患。子宮の外に付着した子宮内膜は、月経時に強い痛みを引き起こす。進行に伴って周囲の臓器と癒着が起こり、不妊や強い下腹部痛の原因となる

 では、次に子宮内膜症が起こるしくみについて解説しましょう。

 女性の卵巣からは、毎月1回、卵子が排出されます(排卵)。そのさい、子宮では受精卵が着床しやすくなるように子宮内膜の厚みが増します。精子が卵子に到達して受精卵になり、子宮内膜に着床すると妊娠が成立します。妊娠しなかったときは、不要になった子宮内膜が剥がれて体外に排出されます。これが月経です。

 子宮内膜症は、月経血の逆流によって発症すると考えられています。月経のある女性の9割に、月経血の逆流が見られます。子宮内膜組織を含む月経血が逆流し、子宮以外の臓器や腹膜などの表面に付着します。通常であれば付着した子宮内膜組織は自然に消失するのですが、なんらかの原因によって残ってしまうことで子宮内膜症は起こります。

 私は、子宮内膜症はダイオキシンなどの環境ホルモンの問題が原因で起こるという説を支持しています。ごみ焼却時の化学反応などによって発生するダイオキシンは、毒性の強い物質として知られています。ダイオキシンは体内でホルモンと似た働きをするため、女性ホルモンのバランスがくずれやすくなると考えられるのです。子宮内膜症とダイオキシンの関係は、海外で行われた質の高い動物実験でも確かめられています。

 子宮内膜が付着しやすい場所は、子宮の周囲にある卵巣や腹膜、ダグラス窩(子宮と直腸の間にあるくぼみ)、直腸などです。まれにへそや肺、膀胱、リンパ節などにも起こります。

 子宮以外の場所や別の器官・臓器に付着した子宮内膜組織も、月経を迎えるたびに増殖・出血します。通常、子宮内膜は月経時に排出されますが、子宮以外の場所にできた子宮内膜組織は体の外に排出されません。出口のない場所で子宮内膜組織が増殖して炎症が起こると、激痛が起こります。

 さらに、付着した子宮内膜組織が定期的に増殖を繰り返すことで組織が変質し、周辺の組織と組織がのりのようにくっついてしまいます(癒着)。癒着が進行すると、器官や臓器の働きが低下していきます。さらに、臓器どうしが引っ張られることで激しい痛みが起こります。

 卵巣や卵管に子宮内膜症が起こると、不妊の原因ともなります。子宮内膜症の患者さんの約半数に、不妊の傾向が見られるといわれています。

 卵巣で子宮内膜症が起こると、出血して卵巣が大きく腫れて嚢胞が発生します。古くなった血液の色がチョコレートのような色に見えることから「チョコレート嚢胞」と呼ばれています。チョコレート嚢胞が起こると、卵巣がんを発症するリスクが高まるため注意が必要です。

 子宮内膜組織が子宮を形成する筋層の中に入り込んで増殖する疾患は「子宮腺筋症」と呼ばれています。子宮筋層の中で子宮内膜組織が増殖・出血を繰り返すため、子宮がどんどん膨らんでしまいます。子宮腺筋症の患者さんも、子宮内膜症と同じように重い月経困難症に悩まされています。かつては、子宮腺筋症も子宮内膜症の一つといわれていました。現在では、一般的に子宮内膜症と子宮腺筋症は別の疾患と考えられていますが、私は子宮腺筋症は子宮内膜症の一つであると考えています。

 子宮内膜症は進行性の病気のため、早期発見・早期治療が有効です。月経を重ねるたびに痛みが強くなる場合はもちろん、つらい月経痛で悩んでいる方は必ず専門医の診療を受けるようにしてください。

低用量ピルは副作用が軽く有効な治療法だが血栓が生じやすくなるため医師の指導が必要

 一般的な子宮内膜症の治療には、大きく分けて薬物療法と手術療法の2つの治療法があります。患者さんの年齢や症状、妊娠を望んでいるかどうかなどによって選択肢が変わるため、医師と相談しながら最適な治療法を選びましょう。

 子宮内膜症の薬物療法は、鎮痛剤とホルモン剤の2つに分けられます。鎮痛剤は痛みの緩和にはたいへん有効な手段ですが、子宮内膜組織には作用しないため、対症療法にすぎません。子宮内膜症の進行を抑えて症状を改善するには、ホルモン剤を用いた治療が行われます。かつては、体を閉経した状態に近づける治療法が一般的でしたが、現在は低用量ピルを用いて妊娠した状態に近づける治療法が普及しています。

 プロゲステロンとエストロゲンという女性ホルモンの両方を配合している低用量ピルは、避妊薬として飲まれています。プロゲステロンには、子宮内膜組織に直接働きかけて増殖を抑える作用があるほか、月経痛を和らげる働きもあり、副作用が軽く済むという長所があります。

 ただし、ピルに含まれるエストロゲンには血栓(血の塊)ができやすくなるなどの副作用があるため、肥満や高血圧で血栓のできやすい人には使いにくいという問題があります。また、ピルを長期間使用した後に服用を中止すると、数年後から子宮内膜症の発症率が上昇するという報告もあります。低用量といえども、ピルの使用は医師の指導のもとで慎重に行ってください。

 血栓ができやすい肥満や高血圧の方には、プロゲステロン単体の薬の投与を行うこともあります。ただし、プロゲステロン単体の薬を投与すると、体内で分泌されるエストロゲンの働きが不安定になり、不正出血などが起こりやすくなるという問題もあります。

 子宮内膜症の治療において、手術療法は重要です。特に、腹腔鏡手術の技術の進歩には、目をみはるものがあります。なんといっても傷が小さくて済み、患者さんの負担が小さいという点が最大の長所です。

 ただし、腹腔鏡手術も万能ではありません。手術経験の不足した医師であれば、臓器の機能を損なってしまうおそれも考えられます。とはいえ、腹腔鏡手術の経験が豊富な医師は、現在どんどん増えています。手術の必要がある場合は、主治医と相談して腹腔鏡手術の技量が確かな医師を紹介してもらうといいでしょう。

漢方療法をもとにした「ハーブ療法」は有効でニンジンジュースとの併用がさらに効果的

ニンジンジュースの作り方

 子宮内膜症患者さんには、漢方療法もおすすめです。ホルモン療法や手術療法に比べて副作用が少ない点が、最大の魅力でしょう。桂枝茯苓丸や当帰芍薬散、芍薬甘草湯などは、さまざまな大学で子宮内膜症に対する臨床結果が報告されています。

 ただし、漢方療法はオーダーメイドの治療が基本です。1人の子宮内膜症患者さんに有効だった処方が、他の患者さんにも有効とは限らないのです。

 そこで私は、漢方療法の考えをもとに研究を重ね、すべての子宮内膜症患者さんに効果を発揮する治療法を探し求めました。そして、試行錯誤の末にたどりついたのが、厳選された5種類のハーブを用いた「ハーブ療法」だったのです。現在に至るまでに5000人以上の患者さんがハーブ療法を試し、多くの方がその効果を実感しています。

 私が提唱するハーブ療法は、菜食中心の食生活を送ることによって治療効果をさらに高めることが期待できます。ただし、動物性の食品をいっさい口にしないことに抵抗を覚える方もいることでしょう。そんな方におすすめなのが、ニンジンジュースです。ニンジンジュースであれば、手軽に作ることができ、毎日の食生活に取り入れやすいと考えています。

 前述のとおり、私はダイオキシンなどの環境ホルモンが子宮内膜症の要因として無視できないと考えています。そこで、食事療法の一環として子宮内膜症の予防・改善に重要となるのが、ビタミンAの摂取です。実際、最近の研究によって、ビタミンAが子宮内膜症の予防・改善に有効であることが学会でも報告されています。

 ビタミンAを効率的に摂取できるのが、ニンジンジュースです。ニンジンには、βカロテンという天然の色素成分が豊富に含まれています。βカロテンは、ビタミンAの前駆体であり、体内に取り込まれるとビタミンAに変換されます。βカロテンは、ニンジンの皮の部分に豊富に含まれているため、ていねいに洗って皮ごと利用するといいでしょう。

 ニンジンだけで作ったジュースが飲みにくい場合は、リンゴを半個分程度加えることをおすすめします。一日コップ1杯飲む習慣をつけましょう。時間がないときは市販のニンジンジュースでもかまいません。毎日継続することが大切です。