ステロイドによって起こる糖尿病のメカニズムの一端が明らかに

大阪大学

 大阪大学研究グループは、ステロイドによって生じる糖尿病等の代謝異常に脂肪細胞のグルココルチコイド受容体が寄与することを明らかにしました。ステロイドはアレルギー性疾患など様々な疾患の治療に用いられる薬ですが、その副作用として糖尿病を始めとした代謝異常を引き起こすことが知られています。しかし、そのメカニズムは不明な点が多く、解明が待たれていました。

ステロイドの脂肪細胞への作用に注目

 これまで、ステロイドはアレルギー性疾患といった様々な疾患の治療薬として用いられる一方、副作用として糖尿病などの代謝異常や脂肪肝などを引き起こすことが知られていました。しかし、ステロイドは全身に作用するため、どの臓器の影響でこのような副作用が生じるかは不明でした。そこで研究グループは、ステロイドの脂肪細胞への作用に注目し、研究を行いました。

遺伝子改変マウスを用いた研究成果

 研究グループは、ステロイドの受容体であるグルココルチコイド受容体に着目し、脂肪細胞特異的なアディポネクチンプロモータCre※2を用いて、脂肪細胞特異的にグルココルチコイド受容体を除去した遺伝子改変マウスを作成しました。この遺伝子改変マウスに対してステロイドを投与したところ、脂肪組織が肥大する一方、肝臓への脂肪蓄積が減少し、インスリン抵抗性が改善されたことから、健康的肥満が誘導されていることがわかりました。

 次に、健康的肥満が誘導されるメカニズムを、脂肪細胞特異的にグルココルチコイド受容体を除去した遺伝子改変マウスを用いて調べたところ、以下のことが明らかとなりました。

     

  1.  脂肪細胞では、コラーゲンがターンオーバーすることにより脂肪が蓄積していきます。脂肪細胞特異的にグルココルチコイド受容体を除去した遺伝子改変マウスでは、遺伝子改変していないマウスと比較してコラーゲンに関連する遺伝子の発現が上昇していました。つまり、グルココルチコイド受容体によってコラーゲンに関連する遺伝子の発現が抑制され、これによって脂肪細胞への脂肪の蓄積が妨げられていることが示唆されました。
  2.  脂肪細胞は、その前駆体である前駆脂肪細胞を経て成熟化します。遺伝子改変マウスでは、前駆脂肪細胞の増殖が促進していました。つまり、ステロイドは、脂肪細胞のグルココルチコイド受容体によって、前駆脂肪細胞の増殖を抑制していることが示唆されました。
  3.  

  4.  ATGLは、脂肪を分解する機能を持っています。遺伝子改変マウスでは、このATGLの遺伝子の発現が低下していました。つまり、グルココルチコイド受容体は、ATGLによって脂肪を分解していることが示唆されました。
  5.  グルココルチコイド受容体の発現が上昇すると、時計遺伝子Per1の発現も上昇することが本研究結果からわかりました。siRNAを用いてPer1をノックダウンさせると糖取り込みが上昇することから、グルココルチコイド受容体はPer1を介して糖取り込みを抑制することを示唆しました。

 以上の結果から、脂肪細胞におけるグルココルチコイド受容体の役割として、脂肪細胞への脂肪蓄積の抑制、前駆脂肪細胞の増殖抑制、脂肪の分解、糖取り込み抑制を行っていることを示しました。これらにより健康的な肥満が抑制され、脂肪肝やインスリン抵抗性といった代謝異常が生じ、糖尿病を引き起こすことを明らかにしました。

本研究成果から期待される今後の展開

 本研究成果により、多様な疾患の治療薬として使用されるステロイドによって糖尿病が起こるメカニズムの一端を明らかにしました。ステロイド糖尿病に対する新たな創薬につながることが期待されます。