白血病の発症に関わる新たな分子機構が解明

国立研究開発法人日本医療研究開発機構

 大阪大学の研究グループは、リボヌクレアーゼであるRegnase-1が造血幹細胞および造血前駆細胞の自己複製を制御していることを明らかにしました。また、Regnase-1遺伝子を欠失させたマウスでは急性骨髄性白血病と類似した症状を示すことを発見し、Regnase-1が白血病の発症に関与していることを明らかにしました。生体内に血液細胞を供給し続けるためには、血液の幹細胞である造血幹細胞や造血前駆細胞の増殖や分化を適切に制御する必要があります。この制御が異常になると、血液細胞が過剰に増殖するなど、白血病の発症へと繋がります。

増加傾向にある日本の白血病事情

 日本における白血病の発生率は年々増加傾向にあり、年間約8,500名が死亡しています(2017年、国立ガン研究センターによる調査)。小児から高齢者まで幅広い年齢層で発生しますが、特に若年層にて発生頻度が高いことから、治療法の確立が社会的に求められています。これまで、造血幹細胞制御や白血病発症に関わる分子群が同定されていましたが、本研究ではこれまで考えられてこなかったリボヌクレアーゼであるRegnase-1を新たに同定しました。これにより、Regnase-1などのリボヌクレアーゼを標的とした新概念に基づく白血病治療薬や再発抑制薬の開発が期待されます。

血液のガンとも呼ばれる白血病とは

 私たちの体の中では白血球、赤血球、血小板といった血液細胞が常に作り出されていますが、これらは血液の幹細胞である「造血幹細胞」が増殖・分化することで維持されています。血液のガンである白血病は、何らかの原因で造血幹細胞や造血前駆細胞が正常に増殖・分化することができず、異常な細胞が増加してしまうことで起こる病気です。このような異常が起きないように、造血幹細胞は様々な分子によって緻密に増殖と分化のバランスが制御されているわけですが、本研究で新たにその機能が発見されたRegnase-1も造血幹細胞の異常な増殖に対するブレーキとして働く分子です。

Regnase-1遺伝子の機能解析

 今回の発見の特徴的な点は、Regnase-1のユニークな機能にあります。Regnase-1は標的とする特定のRNAを分解する働きを持つ分子であり、遺伝子の発現量を制御する役割を持つことが報告されていました。

 本研究ではRegnase-1遺伝子を欠失した造血幹細胞が過剰に増殖し続けてしてしまい、白血病を発症してしまうことをマウスモデルにて明らかにしました。これまで、造血幹細胞制御や白血病発症に関わる遺伝子として、エピジェネティック制御と呼ばれる、遺伝子配列の変化を伴わない遺伝子発現の制御や、シグナル伝達制御分子などが見つかっていましたが、今回初めてRNAを分解する分子(リボヌクレアーゼ)も関与していることが明らかになりました。造血幹細胞の増殖や分化の制御は生命活動の維持に重要であり、異常が起きないように点検機構が働いているため、単一の遺伝子異常が起きても白血病が発症することは稀です。しかしながら、Regnase-1遺伝子を欠失したマウスはわずか3ヶ月ほどで重篤な造血異常によって死亡してしまいます。その原因を調べるため、Regnase-1の機能を解析したところ、Regnase-1がGata2やTal1といった造血幹細胞の制御に重要な転写因子のmRNAを分解することで、造血幹細胞の増殖を制御する転写ネットワークを制御していることが明らかとなりました。そのため、Regnase-1のみの欠失でも広範囲の遺伝子発現の変化が誘導されてしまい、白血病の発症が誘導されてしまうと考えられます。

本研究成果による今後の期待

 本研究成果により、白血病の発症にリボヌクレアーゼであるRegnase-1の異常が関与している可能性が示されました。

 白血病は若年層に多く発症するガンであり、同世代のガンの約4分の1とも言われています。治療法の発展によって寛解できるようになりつつありますが、患者さんの多くは再発の恐怖に悩まされており、完全寛解を可能とする治療法の開発が望まれています。今回、白血病の原因となる分子機構が新たに同定されたことで、Regnase-1などを標的とした新概念に基づく白血病治療薬や再発抑制薬の開発が期待されます。