うつ病発生には仕事への不満足、回復には職務ストレスが影響

富山大学

働く人の抑うつ症状の発生と回復について1年間追跡調査

 富山大学は、働く人の抑うつ症状の発生と回復について1年間の追跡調査を行った結果、抑うつ症状の発生には「仕事への不満足」が、回復には仕事の裁量度や要求度といった「職務ストレス」が強く影響していることを明らかにしました。今回の研究では、労働時間は抑うつ症状との関連は特にみられず、むしろ、仕事への満足感や職務ストレスといった労働の質との関連があることが示されたとのことです。

抑うつ症状と仕事のストレス・満足がどのように影響しているか

 うつ病は、以前から仕事によるストレスが影響しているといわれてきました。また、仕事が不満足な状態では意欲の低下によって、労働生産性の低下がみられたり、メンタルヘルスに悪い影響を与えたりすることが知られています。

 しかし、過去の研究では、仕事によるストレスと仕事満足を同時に扱っていたので、うつ病との関連を評価したものはなかったそうです。また、ストレスマネジメントの観点から簡単で客観的なうつ病予防、またはうつ病回復のインジケーターが必要とされています。

 そこで今回は、公務員研究の参加者2088名のデータを用いて、抑うつ症状の発生と回復、それぞれにおいて、仕事のストレスと仕事満足がどのように影響しているのか調べたそうです。

うつ病の発生因子と回復阻害因子を同定

 抑うつ症状については、標準的に用いられるうつの度合いを診断するテスト CES-D(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)を用い、19点以上を抑うつ症状ありと評価しました。また、今回抑うつ症状への影響をみる2つの心理社会的指標(職務ストレスと仕事満足)においては、英国ホワイトホールⅡ研究と同じ国際的な指標を用いたとのことです。

 分析においては、初年度の段階で抑うつ症状の有無を測定し、翌年、抑うつ症状が新たに発生したグループと、抑うつ症状が回復したグループでそれぞれ検討し、うつ病の発生因子と回復阻害因子を同定したそうです。

 統計解析の結果、1年後の抑うつ症状においては、「仕事不満足」「未婚」「短時間睡眠(6時間未満)」が発生要因として影響していたとのことです。また、1年後の抑うつからの回復には「仕事の裁量度」「仕事の要求度」という職場ストレス要因が強く影響したほか、「慢性疾患」があることも関連していたそうです。

「うつ予防」「うつ回復支援」それぞれの改善指標が明確に

 今回の研究では、仕事満足因子と職務ストレス因子を同時に解析した結果、抑うつ発症には仕事満足が、回復には職務ストレスが大きく影響することがわかりました。このことは、抑うつ予防、抑うつ回復対策においてそれぞれ着目すべき因子を同定できたという意味で、職場におけるヘルスマネジメント戦略に大きく寄与することと思われます。

 また、今回の研究では、労働時間やシフトワークに関した指標は、それ単独では抑うつと関連していなかったとのことです。その他、抑うつ発症には、未婚と短時間睡眠が、抑うつ回復阻害には、慢性疾患があることも影響していることがわかりました。

 仕事による抑うつの発生と回復に影響する要因は違っていることがわかったことで、職場でのストレス対策における「うつ予防」「うつ回復支援」それぞれの改善指標が明確になり、また、抑うつ「予防」における仕事満足の向上、「回復」支援のための職務ストレスの改善が1年間という短期間での成果につながることが示されたとのことです。