骨粗鬆症は50代以上の女性3人に1人が発症し背骨の圧迫骨折から呼吸不全も誘発

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王メディカルセンター女性医療センター長
太田博明

骨粗鬆症は寝たきりの主要な原因の1つで50代以上の女性の3人に1人が発症

[おおた・ひろあき]

1970年、慶應義塾大学医学部卒業。1980年、米国ラ・ホーヤ癌研究所留学。1991年、同大学医学部産婦人科講師、1995年、同助教授。2000年、東京女子医科大学産婦人科主任教授。2010年から現職。日本骨粗鬆症学会前理事長、日本抗加齢医学会理事。2015年、日本骨粗鬆症学会学会賞受賞。著書に『骨は若返る!』(さくら舎)、『抜群の若返り!「骨トレ」100秒』(三笠書房)など多数。テレビ出演に『ガッテン!』『あさイチ』など多数。

 超高齢社会を迎えた日本において、高齢者の充実した生活を支える社会作りは急務といえます。しかし、平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の間には大きな乖離があり、約10年もの間、要支援・要介護の状態となっているのです。

 要介護になる主な原因の1つに骨粗鬆症が挙げられます。要介護になった人の10人に1人が、骨粗鬆症による骨折が原因で寝たきりになっています。骨粗鬆症は、骨強度が低下して骨折しやすくなる骨の病気です。日本国内の患者数は1280万人といわれ、そのうちの980万人は女性です。特に、50代以上の女性に発症しやすく、3人に1人が罹患しているといわれています。

 骨粗鬆症が女性に起こりやすい理由は、骨の新陳代謝のしくみにあります。骨が古くなったり血液中のカルシウム濃度が低くなったりすると、破骨細胞が骨を壊す「骨吸収」が行われます。一方で、骨吸収された部分には、骨芽細胞が新しい骨を作る「骨形成」が行われます。骨を壊す破骨細胞と骨を作る骨芽細胞が常に活動しながら、毎日少しずつ骨を作り替えているのです。ところが、加齢や閉経によって女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減少すると、骨の新陳代謝に異常が生じます。

 エストロゲンには、骨の新陳代謝のさいに骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。エストロゲンが減ってしまうと、骨吸収が速まるため、骨形成の速度が追いつかなくなり、骨粗鬆症になってしまうのです。

 これまで、骨強度を維持・改善するには、骨密度が重要と考えられてきました。骨密度とは、一定容積の骨に含まれるカルシウムやリンなどのミネラル成分の量のことです。

 しかし、近年の研究によって、骨強度は骨質の影響を受けることが分かってきました。骨質とは、骨の素材の質や、その素材をもとに作り上げられた構造の状態のことです。骨密度が高くても骨折してしまう人は、骨質が劣化している可能性があります。

 骨質の代表的な指標には、骨に含まれるコラーゲン線維などのたんぱく質があります。コラーゲン線維それぞれが生理的架橋という形で規則正しく結びついて線維の束を形成していると、骨に建物の鉄筋のようなしなやかさが備わり、強度が増すと報告されています。

 ところが、糖尿病などの生活習慣病や加齢が原因で体内に余分な糖が増えると、過剰な糖がコラーゲン線維のたんぱく質と結びつき、「AGE(終末糖化産物)」という糖毒物質が生み出されます。すると、規則正しく結びついていた生理的架橋のコラーゲン線維がAGEによってばらばらな状態になり、骨の強度と柔軟性が失われてしまうのです。骨粗鬆症の患者さんの骨を分析した研究では、AGEによって変質した架橋が増加していることが指摘されています。

骨粗鬆症が進行し圧迫骨折が起こると呼吸不全や食欲不振が起こり生活の質も低下

骨粗鬆症チェックリスト

 骨粗鬆症による骨強度の低下は、全身の骨で起こり、ささいなことで骨折するようになります。特に背骨がもろくなってしまうと、特別なきっかけがなくても、知らず知らずのうちに圧迫骨折が起こってしまうことがあります。圧迫骨折は、背骨に骨粗鬆症が生じることで起こる骨折です。

 背骨は椎骨という骨が積み重なってできています。骨粗鬆症が進行すると椎骨の一部がもろくなって押し潰され、圧迫骨折を起こします。圧迫骨折は70代前半の4人に1人に見られ、背骨がゆがんでネコ背になったり、身長が縮んだりするなどの症状を伴うのが特徴です。圧迫骨折が起こっても約3分の2の人が痛みを感じないため、「いつの間にか骨折」と呼ばれることもあります。

 圧迫骨折の進行に伴って背骨がもろくなると、姿勢が悪くなって内臓を圧迫し、さまざまな不調をきたすおそれがあります。呼吸不全や逆流性食道炎、食欲不振、便秘などがその一例です。圧迫骨折による痛み以外にも日常生活での動作が制限されるなど、生活の質を著しく下げてしまうのです。

 生活の質と密接な関係にある骨粗鬆症ですが、検診の受診率が全国平均約5.0%と非常に低いのが現状です。その背景には、初期段階の骨粗鬆症では自覚症状があまり見られないことがあると考えられます。右にある「骨粗鬆症チェックリスト」で自分の状態を確認してみましょう。10点以上の場合は、骨が弱くなっているおそれがあります。一度、医療機関で検査を受けることをおすすめします。