オートファジー制御因子ルビコンが決定する老化と寿命

国立研究開発法人日本医療研究開発機構

オートファジーのメカニズムと制御因子Rubiconの解析

 老化がなぜ起こるのか、寿命がどうやって決まるのかという疑問に、明確な答えは出ていません。しかし、最近の研究から、老化や寿命も遺伝子や環境によって「制御」されていることが分かってきました。

老化のしくみ

 カロリー制限、インシュリンシグナルの抑制、生殖細胞の除去などによって寿命が伸びることには、オートファジーの活発化が関係しています。オートファジーを働かなくした動物では、これらの処置をしても寿命は伸びません。寿命にはオートファジーが関係していることが示唆されてきました。

オートファジーとは

 オートファジーとは、細胞内の活動のことを指します。細胞内のタンパク質や構造体を二重構造の膜で包み、消化酵素を持つ細胞小器官と融合することで分解する働きです。細胞内の不要物を分解することで、浄化作用をもたらします。近年、さまざまな疾患で、オートファジーの機能低下が関与していることが確認されています。細胞内の浄化が滞り不要物が溜まることで、疾患が発生する可能性が考えられています。

老化、寿命との関連性

 さらに近年の研究から、加齢に伴い多くの動物でオートファジーが低下することが分かってきました。そこで、オートファジー低下のメカニズムを担う負の制御因子「Rubicon」について、解析を行いました。

 オートファジーを抑制する働きを持つタンパク質が、Rubicon(ルビコン;Run domain Beclin-1 interacting And cysteine-rich containing protein)と呼ばれるものです。Rubiconが増加することでオートファジーが抑制され老化現象が起こり、Rubiconの発現を抑制することで寿命延長や運動機能低下の抑制など、表現型の改善が確認されます。

研究内容

 大阪大学の吉森保教授、中村修平准教授のグループは、東京都医学総合研究所の鈴木マリ 主任研究員、大場柾樹大学院生(芝浦工業大学)と共同で、細胞の新陳代謝と健康維持に必要とされる機能オートファジーが、加齢とともに低下する現象のメカニズムを明らかにしました。

 研究には、線虫、ショウジョウバエ、マウスが用いられ、加齢によりそれぞれの腎臓や肝臓組織でRubiconの増加が確認されました。次に実験的手法を用い、加齢に伴うRubiconの増加を抑制すると、オートファジーが活性化されました。線虫とショウジョウバエでは寿命の延伸が、マウスでは加齢性の表現系が改善する様子が分かりました。

 さらに、ゲノム編集によりRubiconの機能を欠損させたノックアウトマウスでは、加齢にともない増加する腎臓の線維化が軽減され、加齢性疾患であるパーキンソン病の原因となるαシヌクレインの蓄積も低下しました。また、線虫、マウスなどで、寿命を伸ばすとして知られているカロリー制限を行うことでRubiconの低下が確認されました。これらの結果は、Rubiconの増加がオートファジーを抑制し、個体老化を促進していることを示唆するものです。

制御因子Rubicon今後の研究課題

 日本を含め、先進国においては過去半世紀で寿命が30年伸びました。しかし依然として高齢者の有病率は高く、健康寿命をいかにして伸ばすかということが課題となっています。今回の研究により、老化と寿命に関係するオートファジー抑制因子Rubiconが、寿命延長や老化現象の改善につながることが明らかとなりました。Rubiconに関する今後の詳細な制御機構の解明と創薬によって、未来のヒトの健康寿命延伸につながるものと期待できます。