肝細胞核内の脂肪滴がストレスに対抗するメカニズムを解明

名古屋大学

 名古屋大学の研究グループは、細胞の核内で脂肪滴(中性脂肪のかたまり)が形成されるメカニズムを解明し、さらに核内脂肪滴が持つ機能を初めて明らかにしました。

脂肪滴とは

 脂肪滴は中性脂肪を細胞内に蓄える構造で、脂肪細胞だけでなく、全身の細胞に存在し、エネルギーの産生、脂質代謝、タンパク質分解などが行われる場となることが分かっています。脂肪滴は、ミトコンドリアなどと同じく、細胞質にある小器官と考えられてきましたが、近年、肝細胞や肝癌由来細胞では核の内部にも脂肪滴が豊富に存在することが判明し、その形成機構や機能が細胞質の脂肪滴とどのように異なるのかが注目されていました。

内脂肪滴が小胞体ストレスを軽減させる

 肝細胞では、小胞体の中にあるミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質の働きによって小さな脂肪球(リポプロテイン前駆体)が作られ、超低密度リポプロテインとして細胞外に分泌されます。核内脂肪滴が肝細胞に多いことに注目した研究グループは、リポプロテイン合成と核内脂肪滴形成が関係するのではないかと考えました。

 そこでミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質を薬剤で阻害したところ、超低密度リポプロテイン分泌が減少するだけでなく、核内脂肪滴の形成も顕著に減少することが分かりました。肝細胞に由来する培養細胞では、核膜の一部が核の中に向かって延びた核膜延長構造※4が豊富に存在します。研究チームは生きている細胞の中の分子の動きを観察する顕微鏡法や電子顕微鏡技術を用いて、小胞体ストレスにさらされた細胞では、この核膜延長構造の中にリポプロテイン前駆体が蓄積すること、さらに核膜延長構造の一部が破れることによって、蓄積したリポプロテイン前駆体が核の中に侵入し、核内脂肪滴となることを明らかにしました。

 ついで、研究チームは、細胞を作る膜の主成分であるホスファチジルコリン合成する際に決定的な役割を担う酵素CCTアルファが、核内脂肪滴に分布することを見出しました。さらに、小胞体ストレス下の細胞では、核内脂肪滴の形成、CCTアルファの核内脂肪滴分布、ホスファチジルコリン合成が顕著に増加することも分かりました。また、CCTアルファの核内脂肪滴分布を阻害し、ペリリピン3というタンパク質がホスファチジルコリン合成を減少させるスイッチとして働くことが明らかになりました。

 小胞体ストレス下の細胞は、小胞体の膜の主成分であるホスファチジルコリン合成を活性化し、小胞体の体積を拡大することによって機能を維持しようとすることが分かっています。今回の結果は、核内脂肪滴が小胞体ストレスを軽減させるメカニズムの一端を担っていることを示したものと言えます。

脂肪肝等の予防や治療への応用への期待

 肝臓はリポプロテイン分泌のほか、タンパク質や脂肪の合成・代謝、薬物代謝など多くの働きを担う臓器であり、常に小胞体ストレスの危機にさらされていると言えます。正常な肝細胞には、小胞体ストレスに対抗して正常な機能を維持するための仕組みが備わっていますが、そのような仕組みの破綻は脂肪肝などを引き起こします。今回の結果をもとにして、核内脂肪滴の形成やホスファチジルコリン合成を調節することができれば、脂肪肝などの発症の予防や治療に応用することが可能になると考えられます。