変形性股関節症の方の日常生活での注意事項

さいたま中央フットケア整体院院長
冨澤敏夫

痛み止め・睡眠導入剤に頼らない!変形性股関節症の「眠る姿勢の工夫」

[とみざわ・としお]

1969年生まれ。整体師を経て柔道整復師となる。20年以上の施術経験があり、足のトラブルを専門に「どこに行っても、何をしても解消しない症状」を改善させることを得意としている。全国から来院される患者数は年間2000名以上。足の痛みに関して、原因追究とその解決法を実践してきた足の痛み解消のスペシャリスト。

 変形性股関節症の方は、日常生活動作(ADL)に伴う痛みに悩まれることが少なくありません。じっとしていても痛い場合は安静が必要ですが、動くと痛い場合は少し動き方を変えるだけで痛みの軽減につながります。今回は「寝る」「座る」「立つ」「歩く」など、誰でも行う日常生活動作の注意事項とその対処法をご紹介しましょう。

 変形性股関節症の方には「痛くて夜目が覚める」といった訴えが多く見られます。この痛みの原因には股関節の可動域(動かすことができる範囲)の制限が大きく関わっています。

 横向きに寝る場合、痛いほうの股関節を下にすると股関節が圧迫されて痛みが強くなります。長時間股関節が圧迫されることで、血流が悪くなることが原因です。この場合の対処法は痛いほうの股関節を下にして寝ないことです。

 しかし、痛いほうの股関節を上にしたらまったく痛くないかというと、この場合も痛くなることがあります。これは、股関節が屈曲(ひざを曲げて胸に近づける)・内転(足を伸ばした状態で内側に閉じる)・内旋(足を体の内側にひねる)という姿勢になって硬く拘縮した筋肉(お尻の筋肉など)が引っ張られることで痛みが起こる場合や、可動域の制限で足のつけ根に詰まるような痛みが起こる場合などが考えられます。対象法としては、写真の図①のようにひざの下に枕などを入れると、股関節が痛むことなくらくに眠れるようになります。

 また、両側の股関節が痛い場合はあおむけに寝るのがいちばんです。しかし、両側の股関節が痛い場合は重症例がほとんどのため、あおむけの姿勢では股関節が足の重さで伸ばされるせいで痛くて眠れません。そのような場合は、写真の図②のように両ひざの下にグルグル巻きにした毛布を入れるとらくに眠れるようになります。

長時間座っても大丈夫!変形性股関節症の「座る姿勢の工夫」


 変形性股関節症の方は長い時間座っていると〝ズーン〟という痛みが足のつけ根などに起こるようになります。これも可動域の制限とお尻の部分の圧迫が原因です。変形性股関節症の方はお尻の筋肉が弱くなり、やせ細ってしまっています。座るときにお尻の筋肉はクッションの役割をしますので、クッション性がなく圧迫されて血流が悪くなってしまうのです。そのような場合は、図③のようにクッション性のよい座布団をイスに敷くといいでしょう。

 さらに、変形性股関節症の方は立ち上がるさいに股関節が痛くて伸びないことが少なくありません。この対処法としては座るさいに上半身と太ももの角度に注意することです。上半身と太ももの角度が90度以下の鋭角になると立ち上がるさいに股関節が伸びにくくなります。そのため、上半身と太ももの角度が90度以上になるようにしてください。そうすれば、らくに立ち上がることができ、長時間座っていても激しい痛みに襲われることはありません。

歩くと痛くなる股関節……変形性股関節症の「歩き方の工夫」

 重度の変形性股関節症の方は股関節に常に痛みを覚え、歩くことが極端に少なくなります。しかし、働き盛りの世代では歩く機会が多いため、長く歩いた後などに「夜痛くて眠れない」「次の日に痛くて歩きにくい」と訴える方が少なくありません。そのようなときの対処法として、おすすめなのが歩き方の改善です。

 ちまたでは「大股でかかとから着地して早歩きするのが健康にいい」とよくいわれています。しかし、変形性股関節症の方がこの歩き方で歩くと、かえって症状悪化の原因になってしまいます。変形性股関節症の方は、図④のように「狭い歩幅で足裏全体を地面に着けるようにしてゆっくりと歩くこと」が大切です。すると、地面から股関節や周辺の筋肉にかかる衝撃が少なくなるため、安全に歩くことができます。

 その他、日常生活で注意すべき動作には、次のようなものがあります。「お尻が沈み込むような柔らかいソファーに長時間座らない」「しゃがむ姿勢を長時間取らない」「階段の昇り降りはゆっくりと静かに行う」「長時間立ちっぱなしのときは痛くないほうの足に体重をかけるようにする」「荷物は痛くないほうの足側の手や腕で持つ」などです。