てんかん専門医にも勝るとも劣らない人工知能

東大病院

 東京大学、自治医科大学、情報通信研究機構の研究グループが、脳波からてんかん発作を自動検出できる人工知能の開発に成功したと発表しました。てんかんの診断には、専門医の専門知識と経験に加え、膨大な検査データの精査が必要です。これに長い時間を要するため、脳波からてんかん発作を自動で検出できる手法が強く求められていました。

 今回の研究において、脳波検査データから作成した脳波画像を深層畳み込みニューラルネットワーク(2010年代に発展した人工知能技術。主に画像認識に用いられている)に学習させたところ、市販のソフトウエアにおける既存手法を大きく上回る結果が出たそうです。今後、さまざまな脳波データを集積していけば、てんかん専門医に勝るとも劣らない、てんかん発作を検出できる人工知能の開発の可能性が示されたとのことです。

てんかんについて

 てんかんの発症率は1,000人に5〜8人といわれており、日本国内には60万〜100万人のてんかん有症者がいると考えられてます。突然痙攣したり、意識を失ったりする「てんかん発作」は、脳の一部が異常で過剰な活動をすることが原因で起こります。

てんかんの診断

 てんかんの診断には、脳波検査が欠かせません。最近では、デジタル脳波計の開発や計算機の記憶容量増大といった技術的な進歩によって、数日間にわたる長時間ビデオ脳波モニタリングが普及してきました。しかし、専門知識と経験に加え、膨大な検査データの精査に長時間を要する大変な作業になっており、てんかん専門医の負担軽減のための手法が求められていました。

従来研究では

 てんかん発作を自動検出することを目的とした従来の研究では、脳波を時系列データとして扱い、解析が試みられていましたが、てんかん発作の脳波の特徴は患者さんによって違うため、統一的な手法は実現されていませんでした。

 また、数日間にわたって脳波検査をしたとしても、てんかん発作を示す脳波は数分程度と限られているそうで、てんかん発作の脳波の特徴を人工知能に学習させようとしても、訓練データが足りないという問題がありました。

画像を人工知能に学習させる

 てんかん専門医が脳波を精査するとき、自らの経験に基づいて、脳波計の画像の特徴から「視覚的に」診断しています。これをヒントに、今回の研究では、従来のように脳波を時系列データとして扱うのではなく、脳波データを脳波計の画面に出力されるような画像に変換して、これらの無数の画像を人工知能に学習させることを試みたとのことです。

市販ソフトウエアを大きく上回る結果

 今回、ビデオ脳波モニタリング検査を実施した24名のてんかん患者の脳波を解析対象としたそうです。これらの検査データから作成した脳波画像を用いて、既存の深層畳み込みニューラルネットワークに学習させ、画像にてんかん発作が含まれる否かの識別をさせたとのことです。

 23名の脳波を学習に用い、残り1名の脳波で検出精度を評価した今回の手法では、1秒ごとに脳波を画像化したところ、てんかん発作の検出精度は74%だったそうです。市販ソフトウエアの20%、31%を大きく上回ったとのこと。

 また、10秒単位での検出精度の中央値は100%(24名中20名で100%)。市販ソフトウエアでは73.3%、81.7%だったため、こちらも大きく上回る結果となりました。このときの誤検出率は5時間に1回程度と実用上問題ないほど低く抑えられ、体動や咀嚼といった発作様の紛らわしいノイズも誤認せず、正しく認識できたとのことです。

 てんかん発作は患者ごとに異なりますが、今回の手法では類似した発作の脳波を以前に一度でも学習していれば、高い検出精度を実現できることを詳細な解析によって示すことができたそうです。

専門医不足の地域でも

 てんかん専門医の脳波診断を支援する目的で開発された今回の手法。今後、さまざまな脳波データを集積していけば、てんかん専門医に勝るとも劣らない、てんかん発作を検出できる人工知能の開発の可能性が示されたとのことです。

 将来的には脳波判読の初学者用の教材としての利用も考えられているそうです。また、この手法を用いることで、てんかん専門医の不足している地域においても脳波診断を提供できるようになると期待されています。