手術なしで脊柱管狭窄症を克服した 吉松医師が伝授!栄養補給・温活・筋トレの [吉松式三大療法]と[吉松式ストレッチ]

長野寿光会上山田病院/財団大西会千曲中央病院整形外科医師
吉松俊一

脊柱管狭窄症の手術の利点・欠点を十分理解し現実的な目標に向けて治療に取り組むこと

[よしまつ・しゅういち]

日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本体育協会公認スポーツドクターとして活躍。主に子どもの肩・ひじ関節、またスポーツ現場で見られる腰痛と遺伝の関連性などを40年以上の長期にわたって研究。さらに、日本屈指のスポーツドクターで、負傷したプロスポーツ選手が数多く治療に訪れ、復帰に貢献している。

 腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症と略す)は、ほとんどの場合、問診と身体所見で診断がつきます。具体的には「間欠性跛行の有無」「痛くなるまでに歩ける距離や時間」「上体を反らすと症状が悪化するかどうか」「症状の出方や出ている部位」「筋力低下や知覚障害の有無」など、脊柱管狭窄症の主な症状を確認します。

 脊柱管狭窄症の治療法には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。安静時の耐えがたい痛みやしびれ、重度の感覚障害や運動マヒ、排尿・排便障害などの症状がある場合は手術を検討することもあります。しかし、多くのケースでは保存療法から始めるのが一般的です。

 保存療法には、薬物療法、理学療法、運動療法、神経ブロック療法などがあります。症状が比較的軽い患者さんの場合は、薬物療法でうまく症状をコントロールできることが多く、約8割の方が血流改善薬や鎮痛剤を服用することで満足できる状態を維持できます。

 薬物療法を治療の基本として、必要に応じてコルセットを使ったり患部を温めたりする理学療法や、筋力を維持・強化する運動療法をつけ加えます。しかし、脊柱管狭窄症に関しては、薬物療法以外の治療法が有効であることを示す、十分な科学的根拠が得られていないのが実情です。症状が改善しない場合や足腰の痛みやしびれがひどい場合は、患部の神経の近くに局所麻酔薬を注射する神経ブロック療法を行うこともあります。

腰部脊柱管狭窄症は、治療の具体的な希望を医師に正確に伝え、実現可能な目標を設定して治療に取り組むことが重要

 脊柱管狭窄症で膀胱・直腸の機能障害や、重度の筋力低下などが見られる場合は、最終的な治療法として、手術療法が検討されます。手術療法には、狭窄した脊柱管を部分的に取り除く開窓術や、全部取り除く椎弓切除術、チタン製のインプラントで腰椎を補強する脊椎固定術などがあります。

 脊柱管狭窄症の治療は、患者さんの意思が最優先されます。医師からは可能な治療法の選択肢を提示してアドバイスさせていただきますが、選択するのは患者さん自身にほかなりません。「旅行に行きたい」「歩行補助車なしで買い物に行きたい」「しびれを軽減したい」「杖をついて歩ければ十分」など、治療後の具体的な希望を医師に正確に伝え、実現可能な目標を設定して治療に取り組んでいくことが重要です。

 患者さんの中には、手術で症状が少しでも改善できるのであればいいと望む方もいれば、過大な期待を寄せる方もいます。しかし、手術によって100%完治するわけではないことを理解すると、手術以外の治療法を求める方も少なくありません。

 手術療法のメリットは、狭くなった脊柱管を広げることで神経の圧迫を取り除き、根本的な原因の解消が期待できる点です。しかし、デメリットとして、感染症などの合併症に加え、術後に足腰の痛みやしびれが残ることも珍しくなく、再発のおそれがある点が挙げられます。特にひざから足先にかけてのしびれは完治しにくく、長期間にわたって神経が圧迫を受けてきた場合、症状は軽減するものの、手術を受けた患者さんでもしびれが残るケースもあります。

 足腰の痛みやしびれが改善しない過去の症例を見てみると、治療に来られる5~15年前に発病したと考えられるケースがあります。脊柱管狭窄症を発症していても本人は気づかず、70歳くらいになって、より進行した状態で初めて自覚することが多いのです。

 では、なぜ手術によって根本的な原因が解消したにもかかわらず、足腰の痛みやしびれが残ったり、再発したりしてしまうのでしょうか。私は、その最大のカギを握るのは血流だと考えています。

 血管は、血液を体に行き届かせる通路となる管で、全身に酸素や栄養、老廃物、水分、体熱などを運んでいます。人間の血管は、心臓から出る血液を送る動脈と、心臓に戻る血液を送る静脈、それぞれの末端(細動脈と細静脈)をつなぐ毛細血管からできています。毛細血管は、太さが5~20㍃㍍(1㍃㍍は1000分の1㍉㍍)ほどの細い血管で、体中の血管の約90%以上を占め、総延長は10万㌔㍍を超えるといわれています。

 脊柱管狭窄症は、脊椎の狭窄部分の血流が時間の経過とともに乏しくなり、神経が酸素や栄養不足に陥ってやせ細ることで発症します。そのため、脊柱管狭窄症の症状を軽減するには、足腰の痛みやしびれの原因となっている神経に酸素や栄養を届ける、毛細血管の血流を改善することが非常に重要なのです。

毛細血管の血流を改善する「栄養補給」「温活」「筋トレ」で足腰の痛み・しびれ撃退

 毛細血管の血流を改善するため、私がおすすめしているのが「栄養補給」「温活」「筋トレ(筋力トレーニング)」の3つです。それぞれのポイントをご紹介しましょう。

 人間の体は、体外から摂取した栄養を原料として、消化・吸収・代謝することによって必要なものを作り出しています。脊柱管狭窄症と深く関わる骨や軟骨、椎間板、靭帯なども例外ではありません。私は、脊柱管狭窄症をはじめ、ロコモティブシンドロームの予防・改善に、軟骨を構成する成分であるコンドロイチンの摂取をおすすめしています。

 コンドロイチンには、血液中のコレステロールや過酸化脂質(活性酸素によって酸化した脂質)を取り除く効果があり、血流改善にも効果的です。しかし、コンドロイチンは、加齢とともに体内での生産量が減少し、40代以降はほとんど自力で作り出すことができないといわれています。コンドロイチンが不足すると、関節痛や腰痛の原因にもなるため、体外からの補給が必要になるのです。

 コンドロイチンには、さまざまな種類があります。市販されているコンドロイチンは、サメの軟骨から抽出されたC型がほとんどです。その他にも、ブタ由来のA型やB型、ウナギ由来のD型があります。そして、近年になって新しく発見され、注目を浴びているのが、E型のコンドロイチンです。E型のコンドロイチンには、他の型のコンドロイチンには認められていない、数々の優れた働きがあることが分かっています。

 また、血液をサラサラにする効果が期待できる食材もおすすめです。例えば、納豆のネバネバ成分である「ナットウキナーゼ」という酵素には血栓(血液の塊)を溶かす働きがあります。その他、お酢や梅干しなどに含まれるクエン酸、イワシやサバ、サンマなどの青魚に含まれるDHA・EPAといった脂肪酸には、血管の弾力性や赤血球の柔軟性を高める働きがあります。

 次に、体を温める温活に関してですが、「冷えは万病のもと」といわれるように、体温が私たちの健康に大きな影響を及ぼすことは周知のとおりです。温活で私がおすすめしているのが、全身浴です。

 肩までしっかりとお湯につかる全身浴は、高い水圧が体にかかるため、血管も圧迫されます。その結果、心臓に出入りする血流量が増えるのです。40度Cくらいのぬるめのお湯に、20分程度つかるようにしましょう。

 ただし、入浴の効果は一時的なものです。私は、日常的に温活に取り組みたいと希望する患者さんに「温圧チップ」という医療機器をおすすめしています。温圧チップは、貼るだけで患部周辺の血流を改善する効果が期待できるため、多くの患者さんに愛用されています。

ご紹介した撃退法で日常生活でできるものから実践し、諦めずに根気よく治療に臨もう


 最後に、血流改善の要ともいえるのが、筋トレです。筋トレを習慣的に行うことで筋肉量が増えれば、基礎代謝も向上します。さらに、基礎体温も高くなって、全身の血流が改善するのです。今回ご紹介する「吉松式ストレッチ体操」(筋力をアップして血流を改善する「吉松式ストレッチ体操」の写真参照)を習慣的に行うようにしてください。

 残念ながら、前述のように脊柱管狭窄症の根本的な原因を改善する運動療法はまだ確立されていません。しかし、適度な運動によって、足腰の痛みやしびれを軽減させることは十分に可能です。脊柱管は前かがみの姿勢を取ると広がって、神経の圧迫が緩和されます。前屈姿勢での水中歩行や自転車漕ぎ、杖や歩行補助車の使用など、工夫をしながら適度な運動を心がけ、下半身を強化するといいでしょう。

 さらにおすすめなのが、私も開発に携わった特殊なゴムバンド[吉松式ロコトレ・バンド]による筋トレです。臨床医としての経験上、脊柱管狭窄症では、ひざから下のしびれを改善することは非常に困難といわざるをえませんでした。ところが、私が開発に携わった吉松式ロコトレ・バンドを脊柱管狭窄症のリハビリに取り入れて下肢の筋トレを実践してもらったところ、ひざから下のしびれが軽減した患者さんが何人も現れたのです。それ以来、下肢の筋力を鍛えることの重要性を痛感しています。

「脊柱管狭窄症は命を取られる病気ではない」といわれることがあります。しかし、実際に脊柱管狭窄症を患ったことがある者として、足腰の痛みやしびれは想像以上につらいものです。今回ご紹介した脊柱管狭窄症の撃退法の中で、日常生活に取り入れられるものから実践し、諦めずに根気よく治療に取り組むようにしてください。