高齢化で患者が急増!足腰の激痛・しびれで生活の質が低下する[脊柱管狭窄症セルフチェック]

長野寿光会上山田病院/財団大西会千曲中央病院整形外科医師
吉松俊一

腰部脊柱管狭窄症は高齢化で急増しており患者数は数百万人で50代以降に多発傾向

[よしまつ・しゅんいち]

日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本リハビリテーション医学会認定臨床医、日本体育協会公認スポーツドクターとして活躍。主に子どもの肩・ひじ関節、またスポーツ現場で見られる腰痛と遺伝の関連性などを40年以上の長期にわたって研究。さらに、日本屈指のスポーツドクターで、負傷したプロスポーツ選手が数多く治療に訪れ、復帰に貢献している。

 腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症と略す)は、骨や関節、筋肉など、運動器の障害によって要支援・要介護になるリスクの高い状態(ロコモティブシンドローム)の主要な要因の一つです。「歩くとお尻や足がしびれて、近所のスーパーまで歩くのがつらい」「じっとしていても腰が痛くて何もできない」「尿漏れが心配で外出もままならない」など、患者さんの生活の質(QOL)を著しく低下させるおそれがあります。

 そもそも腰痛は、日本人の「国民病」といわれるほど、多くの人に見られます。2012年に行われた厚生労働省による大規模調査の結果では、推定2800万人の腰痛患者さんがいることが判明しています。日本人の成人の実に80%以上が一生に一度は腰痛を経験しているといわれているのです。

 腰痛の原因は、腰の骨や筋肉、神経の障害によるものから、ストレス、内臓疾患などによるものまでさまざまです。腰痛全体の約85%は、レントゲンやMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などで明らかな異常が見つからない「非特異的腰痛」といわれています。近年の研究で、非特異的腰痛の3分の2(腰痛全体の約半分)には、多かれ少なかれストレスやうつなどの心理的・社会的な要因が関与していることが分かっています。

腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症の腰椎部の状態の違い

 それに対して、原因がはっきりと特定できる腰痛を「特異的腰痛」といいます。特異的腰痛は腰痛全体の15%を占め、脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニア(以下、椎間板ヘルニアと略す)が合わせて約10%、内臓疾患が約1%、その他が約4%の割合となっています。

 腰痛の原因を探る場合、患者さんの年齢も重要なポイントになります。若い人や中高年の一部によく見られるのは、精神的ストレスや肉体的ストレスが原因の腰痛です。肉体的ストレスには、スポーツや作業中の姿勢による腰への負担、長時間の運転、重いものを持つなどが考えられます。さらに、椎間板ヘルニアも多く見られます。

 一方、高齢者に多く見られるのは、脊柱管狭窄症です。脊柱管狭窄症は50代以降になると急増し、患者数は250万〜570万人に及ぶといわれています。私が診療する病院にも、多くの脊柱管狭窄症の患者さんが来られます。今後、高齢化の影響で患者数が増大することが懸念されています。

上体反らしで痛みが悪化すれば脊柱管狭窄症、軽減すれば椎間板ヘルニアと判別

腰部脊柱管狭窄症チェックリスト

 一般的に椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の見分け方は、上体反らしによって痛みが悪化するかどうかで判別できます。上体反らしによって、痛みが軽減する場合は椎間板ヘルニア、痛みが悪化する場合は脊柱管狭窄症と考えられます。

 椎間板ヘルニアは、背骨の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が外にはみ出し、神経を刺激する病気です。椎間板はとても繊細な組織で、微細な損傷は10代前半から、老化は20代から始まるといわれています。

 椎間板に大きな負担がかかると、周辺部分の「線維輪」と呼ばれる、薄い軟骨が幾重にも重なった丈夫で柔軟性のある組織が壊れて、中心部から軟らかい「髄核」が突出してしまいます。すると、髄核から炎症物質が漏れ出し、腰椎(腰の骨)を通る神経に炎症を引き起こして椎間板ヘルニアを発症し、足腰に強い痛みやしびれなどの症状が生じると考えられています。

 一方、脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る脊柱管が狭くなって、神経を圧迫するために起こる病気です。背骨は24個の椎骨が首から腰にかけて積み重なって構成されています。椎骨の中央には穴があいており、つなげるとトンネルのような管状になり、「脊柱管」と呼ばれます。

 脊柱管には、脳からつながる神経の束(脊髄や馬尾神経)と、椎骨と椎骨をつなぐ黄色靭帯が通っています。脊柱管狭窄症は、加齢などが原因で脊柱管の周囲の骨が変形したり、黄色靭帯が厚くなったりして、脊柱管が狭くなることで起こります。脊柱管が狭くなると、脊柱管の内部を通る神経が圧迫され、足腰が痛んだりしびれたりする症状が出るようになるのです。

チェックリストで13点以上は脊柱管狭窄症のおそれがあるため専門機関を受診しよう

 脊柱管狭窄症は老化現象の一つで、誰にでも起こる可能性があります。実際に画像診断上は脊柱管の異常が認められても、自覚症状なく日常生活を送っている患者さんもたくさんいます。しかし、足腰の痛みやしびれなどの症状が出たら、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが症状の改善につながります。

 まずは、上の「腰部脊柱管狭窄症チェックリスト」を試してみてください。当てはまる項目の合計点数が13点以上の場合は、脊柱管狭窄症のおそれがあります。できるだけ早めに専門医の診断を受けるようにしましょう。