乳由来の「ラクトトリペプチド」が脳を活性化し認知症予防にも効果

筑波大学

加齢とともに、認知症患者の罹患率は増加していきます。認知症の発症は、脳の活性化だけでなく動脈硬化など血管の老化も関係していることも明らかになってきました。

認知症予防にラクトトリペプチド

 そのため、老化にともなう血管や脳活性の低下を抑制することが、認知症の予防に重要であるとの認識が高まっています。血管や脳活性の低下抑制には運動や食習慣を改善しなければなりませんが、特に乳由来の活性物質である「ラクトトリペプチド」が、中高年の脳、脳血流、血管の活性化に効果的であることが研究報告されています。

 ラクトトリペプチド(Lactotripeptide)は、「カルピス乳酸」の研究によって発見されたものです。乳カゼインが乳酸菌で発酵分解され生成される3つのアミノ酸の結合したトリペプチドを、ラクトトリペプチドと呼びます。ラクトトリペプチドには、血管の収縮に関係する「アンジオテンシン変換酵素」を阻害し、血圧を下げたり血管内皮機能を改善する効果が検証されています。

サプリメント摂取による効果の検証

 ラクトトリペプチドには、血管内皮機能や脳血流を改善させる効果があります。そこで、中高齢者の脳活性化にも効果的であるか否か、運動習慣の有無とともにサプリメントを摂取することで、継続的な「ラクトトリペプチド」摂取の効果が検証されました。

検証方法

 明らかな疾患の見られない中高齢者を選び出し、サプリメントのみ摂取するグループとサプリメントと運動を併用するグループに分けて検証します。さらに、各グループの半数にはそれぞれ「プラセボ」という効果のないサプリメントを摂取させ、脳の活性化を比較評価します。評価には機能的近赤外線分光法(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)を使用し、前頭前野の脳酸素化ヘモグロビン濃度の変化を測定。認知機能の評価は、ストループ課題により検証されました。

ストループ課題

 ストループ課題とは認知課題の一つで、注意選択機能や遂行機能を評価することで検証するものです。ある情報が矛盾する情報と同時に提示された場合に、反応時間やエラーが増大するような現象を「ストループ干渉」と呼びます。ストループ課題では反応時間やストループ干渉の時間を測り、その時間が短いほど実行機能が高いものとして評価します。

検証結果

 サプリメントのみ摂取するグループとサプリメントと運動を併用するグループ両者の検証結果から、プラセボを摂取したグループに比べ「ラクトトリペプチド」を摂取したグループでは左右の前頭前野の脳活性化が向上することが明らかになりました。さらに、ラクトトリペプチド摂取による左前頭前野の脳活性化の上昇が、認知機能の向上と関連することが認められました。これらの検証結果から、運動習慣の有無にかかわらず、ラクトトリペプチドの継続摂取が脳の活性化に効果的であり認知機能の向上につながることが可能性として示されました。

ラクトトリペプチドへの今後の期待

 今回の検証により健康な中高齢者における「ラクトトリペプチド」摂取の効果が明らかとなりました。今後の研究が進むことで、認知症発症リスクが高いとされている、糖尿病患者、高血圧患者、軽度認知障害患者における、ラクトトリペプチド摂取効果も期待できると考えられています。