変形性ひざ関節症は早期発見・早期治療が重要で加齢・肥満・O脚の高齢女性は要警戒

筑波大学医学医療系整形外科運動器再生医療学准教授
吉岡友和

高齢化に伴って増加中の変形性ひざ関節症は女性に多く発症し歩行が困難になる

[よしおか・ともかず]

1999年、筑波大学医学専門学群卒業。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本再生医療学会再生医療認定医。専門はひざ関節外科。ひざ関節疾患に対する手術治療(関節鏡視下靭帯・半月板・軟骨手術、関節温存骨切り術、人工ひざ関節置換術など)を数多く行っている。

「歩きだしのさいにひざが痛む」「ひざを曲げ伸ばしするとポキポキ音がする」など、ひざに痛みや違和感を覚える中高年の方は少なくないでしょう。中にはひざの形が徐々にO脚やX脚になり、歩行が困難になる場合もあります。ひざの痛みを引き起こす代表的な病気が、変形性ひざ関節症です。変形性ひざ関節症は、ひざの軟骨がすり減り、関節炎や関節の変形が生じて、痛みなどが起こる病気です。

 東京大学大学院医学系研究科の吉村典子特任教授らのグループが行った大規模調査によると、ひざ関節のレントゲン画像で変形が見られる割合は、40歳以上で女性が62.4%、男性が42.6%と報告されています。この割合を日本全体に当てはめると、40歳以上で約2500万人にも上ります。現在、変形性ひざ関節症の治療を受けていて痛みを有する患者数は約800万人と推定され、高齢化が進む中でさらに増加すると考えられています。

 変形性ひざ関節症は、加齢や肥満などの要因が絡み合って起こる「一次性」と、原因が明らかな「二次性」に分けられます。一次性は、加齢や肥満とともに、高血糖や脂質異常、高血圧など、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクが高ければ高いほど、変形性ひざ関節症になるリスクも高くなることが指摘されています。一方、二次性の変形性ひざ関節症は、靭帯や半月板、関節軟骨などの損傷によって引き起こされます。二次性の変形性ひざ関節症は、一次性より若い世代に起こる傾向があります。

年齢とともに変形性ひざ関節症患者の割合が増え、男女比では女性が多い

 変形性ひざ関節症が発症する明確な原因は、いまだに解明されていません。しかし、変形性ひざ関節症を誘発する危険因子は判明しています。主な危険因子について解説しましょう。

● 加齢
 変形性ひざ関節症は中高年以降に頻発し、年齢が高くなるにつれて患者数も増加します(「年齢別・変形性ひざ関節症の発症率」のグラフ参照)。長く生きるほど、ひざにかかる負担も蓄積することが影響していると考えられています。

● 肥満
 体重が重いほど、ひざにかかる負担は大きくなります。3㌔太れば、ひざにかかる負担が12㌔も増えるといわれています。ひざにかかる負担が増えると、ひざの関節軟骨もすり減りやすくなり、変形性ひざ関節症のリスクが高くなります。

● 女性
 変形性ひざ関節症は男性より女性がかかりやすい病気です。男女比は1対4で、女性に多く見られると報告されています。女性は男性よりも筋力が弱いことや、閉経を迎えて女性ホルモンの分泌量が減少して骨が弱くなることなど、さまざまな説がありますが、詳細は分かっていません。

● O脚・X脚
 日本人は一般的にO脚になる傾向があり、日本人の変形性ひざ関節症はO脚の人に多いのが特徴です。O脚やX脚が変形性ひざ関節症を引き起こしやすい理由は、ひざにかかる荷重のバランスの乱れにあります。通常、ひざ関節は荷重を分散して受け止めます。しかし、O脚はひざの内側、X脚は外側に荷重が偏るため、荷重が集中する側の関節軟骨がすり減りやすくなってしまうのです。

肉体労働やスポーツで関節軟骨に負担をかけると軟骨が摩耗しひざに痛みを招く

当てはまる項目が1つでもある場合は、変形性ひざ関節症の疑いがあるため、早期に受診することが大切

● 遺伝
 家族に変形性ひざ関節症の患者さんがいると、発症する確率が高くなるという調査報告があり、なんらかの遺伝的な要素が関係していると考えられています。現在、研究が活発に行われています。

● 重労働・スポーツ
 ひざの関節を長い間繰り返し使うと、軟骨がすり減って変形性ひざ関節症が起こりやすくなります。肉体労働者やスポーツ選手など、毎日のように重たいものを運んだり、ひざに負担をかける激しい運動をしていたりすると、ひざにかかる負担が増加して関節軟骨がすり減りやすくなるからです。

 変形性ひざ関節症は、自覚症状がほとんどなくジワジワと進行し、ある日突然、痛みを自覚するようになる場合が少なくありません。変形性ひざ関節症を治療せずに放置すると、確実に進行します。しかし、しっかりと治療を受けることで、進行のスピードを緩やかにすることは十分可能です。

 変形性ひざ関節症の治療には、薬物療法、理学療法、手術療法があります。末期になれば人工関節置換術という選択肢も検討されますが、ほとんどの患者さんは薬物療法や理学療法によってひざ関節を温存することができます。

 薬物療法には、湿布薬や軟膏などの外用薬、消炎鎮痛剤の内服薬、ヒアルロン酸などの関節内注射があります。理学療法とは、いわゆる運動療法のことです。大腿四頭筋(太ももの前面にある大きな筋肉)の強化や関節の可動域(動かすことができる範囲)の改善を目指す訓練があります。その他、装具療法や温熱療法などもあります。

 変形性ひざ関節症は、早期発見によって進行を抑えることがなにより大切です。まずは、このページにある「変形性ひざ関節症チェックリスト」で自分の状態と照らし合わせてみましょう。当てはまる項目が一つでもある場合は、早めに専門医の診察を受けるようにしてください。