中皮腫がん細胞を的確に診断するマーカーSKM9-2の実用化

神奈川県立がんセンター、日本医療研究開発機構

国際問題となっているアスベスト被害

 アスベストを吸い込むことで発生する中皮腫は、国際的に大きな社会問題となっています。現在、中皮腫は有効な治療法や診断法が開発されていないため、中皮腫を早期に発見し的確に判断できる診断法の確立は、より有効な中皮腫治療の第一歩になります。

中皮腫がんマーカー抗体SKM9-2

 中皮腫がんマーカー抗体SKM9-2は、特異度99%、感度92%で中皮腫細胞を検出できる、これまでにない中皮腫抗体を持つ抗体です。SKM9-2は巨大分子シアル化HEG1を認識していることがこれまでに明らかになっていましたが、HEG1のどの部位を認識しているのか、どのようなシアル化糖鎖が認識に関わっているのかまでは分かっていませんでした。

実際の研究と成果

 HEG1の部分長変異体を用いて抗体の結合候補領域を狭めていくと、最終的に11アミノ酸からなる領域を認識していることが明らかになりました。さらに、この11アミノ酸配列のどの塩基にどのような糖鎖が結合しているかを質量分析とレクチン結合解析により同定しました。同定した領域のアミノ酸配列の置換や糖鎖の切断により抗体の反応性が大きく減少したため、抗体はアミノ酸配列と糖鎖によって形成される構造を認識しており、糖鎖の存在が中皮腫への高い特異性を規定していることが判明しました。

今後について

 本研究により、SKM9-2を用いた中皮腫診断の信頼性が高まり、これまでよりも中皮腫を的確に診断することができるようになったと考えられます。また、このエピトープを標的とした分子標的治療法を開発することで、治療困難な中皮腫に対する新たな治療法を開発することが期待されます。なお、中皮腫がんマーカー抗体SKM9-2は平成30年10月31日ニチレイバイオサイエンス社より病理研究用試薬として販売され実用化されます。