肥満治療につながるタンパク質「アクチビンE」の可能性

北里研究所

 北里大学は、肝臓から分泌されるタンパク質「アクチビンE」が脂肪を燃焼させる褐色脂肪細胞の活性化やベージュ脂肪細胞の増加を促進し、エネルギー代謝を亢進させる作用をもつことをつきとめたと発表しました。

最近注目の褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞

 日本人男性の約30%、女性の約20%が肥満であるといわれています。肥満になると、糖尿病や高血圧、心臓疾患、痛風、がんなどを発症しやすくなることが知られています。様々な疾患を引き起こす可能性のある肥満ですが、この予防・治療法のターゲットとして、最近、褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞が注目を集めています。

今まで役割がわからなかった「アクチビンE」

 アクチビンEは、肝臓で特異的に作られる細胞の分化・増殖因子のひとつとして発見されましたが、その機能は不明でした。マウスに高脂肪食を与えたり、空腹の状態にすると肝臓のアクチビンE遺伝子の発現が上昇することから栄養状態に関連する機能が予想されていましたが、その役割は長い間謎だったそうです。

「アクチビンE」を過剰に分泌するマウスでは

 今回、アクチビンEを肝臓から過剰に分泌するマウスを作製したところ、対象のマウスと比較して血糖値が低く、インシュリン感受性が向上しており、体温が高めだったことからエネルギー代謝が亢進していることがわかりました。マウスに高脂肪食を与えても体重増加が抑えられたそうです。

 また、白色脂肪細胞を詳しく調べてみると、褐色脂肪やベージュ脂肪の Ucp1(褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞のミトコンドリアにのみ存在する、エネルギーを熱に変えるスイッチとして働くタンパク質)の量が増加し、ベージュ脂肪細胞自体も増加していたことから、脂肪組織において熱産生が盛んになり、エネルギー代謝が亢進していると考えられたとのことです

「アクチビンE」遺伝子を欠損させたマウスでは

 一方、アクチビンE遺伝子を欠損させたマウスでは、寒冷刺激に対する反応が鈍くなり、白色脂肪細胞組織中のベージュ細胞の減少が原因とみられる低体温の症状がみられました。さらに、アクチビンEを培養した褐色脂肪細胞にふりかけたところ、Ucp1の量が増加したことから、アクチビンEに褐色脂肪細胞の熱産生を直接活性化させる働きがあることを確認したとのことです。

肥満の治療薬につながる可能性

 アクチビンEは、肝臓から分泌されるヘパトカイン(肝臓から分泌され、インスリン感受性やエネルギー代謝を調節するタンパク質のホルモン)として働き、褐色脂肪を活性化させ、白色脂肪でベージュ脂肪細胞を増加させることで、余分なエネルギーを熱に変換して消費させる役割があることを明らかにしました。このアクチビンEのダイエット効果は、様々な生活習慣病の原因となる肥満の治療薬につながる可能性があるとのことです。