脂肪組織のベージュ化による血糖値改善

富山大学、日本医療研究開発機構

肥満による合併症

 現代の生活習慣の変化により、肥満人口が世界的に増加傾向にあります。肥満は2型糖尿病や高血圧症、脂質異常症などのメタボリック症候群の基盤であり、将来の脳卒中、心筋梗塞、悪性腫瘍や認知症などの大きなリスクになります。肥満を予防することは、これら合併症のリスクを軽減し、生活の質を大きく向上させますが、肥満の予防に有効な治療は現状ほとんどありません。

肥満の予防

 一般的に肥満の予防に有効な手段としては、過食を避ける、運動をしてエネルギーを消費する、基礎代謝を高めてエネルギーを燃焼するなどの方法があります。前2つは個人の生活習慣の改善によるものですが、実践が困難であることも否めません。

2種類の脂肪組織

 今回明らかにされたのは、基礎代謝を高める作用のある脂肪組織の「ベージュ化」を促進するベージュ細胞機能の新たな調節の機序です。脂肪組織にはエネルギーを貯める白色脂肪(肥満と関係する内臓脂肪や皮下脂肪)と、エネルギーを燃やすベージュ脂肪(抗肥満作用がある)の2種類があります。寒冷な状態では、エネルギーを燃やして体温を維持するため、皮下の白色脂肪の性質が変化したベージュ細胞が出現します。ベージュ化が促進されると、基礎代謝が高まり、抗肥満作用、2型糖尿病予防効果が期待できます。

M2マクロファージの除去による高ベージュ化

 脂肪組織には様々な免疫細胞が存在しますが、肥満の病態には、この免疫細胞の破綻が関与しています。当研究室では、免疫細胞の中でも特にM2マクロファージの役割に着目した研究を行ってきました。生体内のM2マクロファージだけを任意のタイミングで除去することができる遺伝子改変マウスを作成し、解析したところ、寒冷時には正常のマウスで皮下脂肪のベージュ化が起こりますが、M2マクロファージを除去しておくと、このベージュ化がより強く見られ、その結果、基礎代謝が高まって血糖値が低下し、インスリンの効きも良好な体質になることがわかりました。さらにこのベージュ化は、皮下脂肪にある前駆ベージュ脂肪細胞の数が増えることにより起こることがわかりました。本研究により、前駆ベージュ脂肪細胞の数の調節にM2マクロファージが関与しており、M2マクロファージを除去することでベージュ化を高め、より基礎代謝の高い肥満しにくい体質に改善できる可能性があります。

脂肪組織以外にも存在するM2マクロファージへの期待

 M2マクロファージを除去あるいは減少させることで、エネルギー貯蔵型の白色脂肪組織から、エネルギー燃焼型のベージュ脂肪組織へ脂肪組織の性質を変換させ、より基礎代謝が高く、肥満しにくい体質に改善できます。これにより、肥満、メタボリック症候群の新たな予防法の開発につながることが期待できます。また、M2マクロファージは肝臓や骨格筋など体内の他の臓器にも存在しています。脂肪組織以外の臓器のM2マクロファージの役割を明らかにしていくことも期待されます。