炎症性腸疾患に対する新たな治療法

大阪大学

スーパーアパタイト法を用いた炎症性腸疾患の治療

 日本国内において、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)の患者数は増加の一途を辿っていますが、これらの疾患は、TNFaやIL6を含む様々な炎症性サイトカインが腸管壁を傷害して発症するので、サイトカインのシグナル経路が治療の標的になります。

 抗サイトカイン療法やサリチル酸やステロイドなどの古典的な薬物療法によって、一時的に緩解を得られる場合もありますが、再発によって外科治療が必要になるケースが後を絶たず、新たな治療法の開発が求められています。

 炎症性サイトカインの産生を抑制するマイクロRNAは複数明らかになっていますが、それらを安定して患部に送る手法はありませんでした。

 そこで今回、スーパーアパタイト法を用いた炎症性腸疾患の治療に迫りました。

スーパーアパタイト法によるドラッグデリバリーシステム

 2%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液の自由給水によりIBDモデルマウスを作成し、炎症性サイトカインの産生を抑制することが知られているマイクロRNA(miR)-29a及びmiR-29bに着目して効果を検証しました。

 スーパーアパタイト法を用いてmiR-29aまたはmiR-29bをIBDモデルマウスに全身投与したところ、マイクロRNAが炎症腸管にあまり集積しないにも関わらず、炎症性サイトカインが減少し、腸炎の予防と、予想以上の治療効果が示されました。

 さらに、マウスの腸管を調べたところ、スーパーアパタイトに搭載したマイクロRNAが効率よく炎症腸管の樹状細胞(免疫応答の司令塔細胞)に伝達され、炎症性サイトカインの産生を抑制していることが明らかになりました。

 これまでに核酸医薬を特異的に炎症部位に集積させる技術は開発されておらず、静脈注射・皮下注射などの全身投与でこれを可能にするスーパーアパタイト法は画期的な核酸デリバリー法であるといえます。

様々な疾病への応用を期待

 本研究の成果は、日本だけでなく欧米でも増加しており医療上の大きな問題となっている炎症性腸疾患の治療薬の創出へと繋がる可能性が高く、非常に大きな意義があると考えられます。

 スーパーアパタイト法は、炎症性腸疾患はもとより炎症反応が関与する様々な疾病に対する幅広い応用が可能であり、これらの疾病に対する新たな治療薬の開発が期待されます。