パーキンソン病治療に新たな可能性

 京都大学医学部附属病院は、京都大学IPS細胞研究所と連携し、「IPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を用いたパーキンソン病治療に関する医師主導治験」を開始すると発表しました。

京都大学

IPS細胞とは

 人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の多能性誘導因子を導入し、培養することによってできた「人工多能性幹細胞」のことをいいます。英語では「induced pluripotent stem cell」と表記します。様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞です。

パーキンソン病とは

 James Parkinson によって初めて記載された臨床的概念で、中脳黒質の緻密帯におけるドパミン産生細胞の脱落によって大脳基底核の機能異常が生じ、運動障害などを引き起こす変性疾患です。国内に約16万人の患者がいるといわれています。

ドパミン神経前駆細胞とは

 神経伝達物質のひとつであるドパミンは、ドパミン神経細胞の中でつくられます。ドパミン神経細胞が進行性に失われ、ドパミン産生量が減少することによってパーキンソン病は発症すると考えられています。ドパミン神経前駆細胞は、ドパミン神経に分化する前の細胞です。パーキンソン病モデル動物を用いた過去の研究から、ドパミン神経前駆細胞を移植することによって、脳内に成熟ドパミン神経細胞を効率的に生着できることが明らかになっています。

治験について

 今回の「パーキンソン病に対するヒトIPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植」は、2つの課題を計画・実施予定とのことです。

・治験の課題
 「ヒトIPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植による安全性及び有効性」と「ヒトIPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞の細胞移植時におけるタクロリムス(免疫抑制剤)の安
全性及び有効性」を検討するという2つの課題があります。

・治験の目的
 細胞移植は線条体(被殻部分)に行い、「移植することによる安全性及び有効性」と「移植した被験者に対するタクロリムスの安全性及び有効性」を評価することが目的とのことです。

・治験の内容
 再生医療用IPS細胞ストックから提供されたIPS細胞を使用します。このIPS細胞からドパミン神経前駆細胞へ分化させたものを被験者の脳に移植するとのことです。移植後の免疫反応に備え、既に臓器移植などにおいて臨床実績のあるタクロリムスを今回の治験では免疫抑制剤として使用します。

細胞移植について

 IPS細胞から分化誘導した約500万個のドパミン神経前駆細胞を定位脳手術(今回は頭部を固定した上で直径12mmの穴を頭蓋骨に開けて、そこから注射器のような器具を用い、ドパミン神経前駆細胞を注入するとのこと)により線条体(被殻部分)の左右両側に移植するとのことです。

治験参加患者の募集など

 ドパミン神経前駆細胞移植の安全性と有効性をパーキンソン病の患者さんで確認する今回の治験の実施予定人数は7名。観察期間は移植後2年間とのことです。治験参加患者募集については、京都大学医学部附属病院ホームページに9月末までの期間限定で特設ページが設けられています。