妊娠期喫煙および出生後の受動喫煙が子供の聴覚障害のリスクを上げる

 京都大学の研究グループは、妊娠期にタバコを吸わない母親の子どもに比べ、妊娠期にタバコを吸う母親の子どもは、聴覚障害の疑いの判定を1.75倍受けやすくなることがわかりました。さらに、妊娠期の母親がタバコを吸うことに加え、出産後4ヶ月に近くでタバコを吸う同居者がいる子供は、聴覚障害疑いの判定を2.35倍受けやすくなることがわかりました。

 今回の研究により、妊娠期の母親や幼い子供がいる家庭での禁煙の重要性を再確認されました。

京都大学

世界的に小児期の疫学データが限られている日本

 胎児期や乳幼児期は、子供の成長に与える影響が大きい時期です。また、疫学研究の対象として重要な発達段階であり、イギリスや北欧諸国では小児から成人や高齢者までを対象とした集団の健康状態を長期的に検討する研究がさかんに行われています。一方日本では、小児期から観察が始まる疫学研究や、解析のためのデータは限られているというのが現状です。

乳幼児健康情報を研究に活用

 そこで今回研究グループは、自治体の持つ乳幼児健康情報に着目しました。母子保護法に規定される幼児健診は、国勢調査などで使われる悉皆調査と呼ばれる調査法を用いており、母親の妊娠期から 乳幼児期に至るまでの健康情報が取得され、自治体に記録 ・保管されています。しかし、子供が小学生になる頃には、自治体での健診情報の保管義務がなくなるため、破棄されたりほとんど使用されることがありません。

 ちなみに乳幼児健診で取得される情報には、

・妊娠期の喫煙や飲酒の習慣
・体調や家族の状況
・出生時の体重や頭囲
・乳幼児期の栄養方法
・家族の状況
・発達発育の状況
・医師所見

 などがあり、これらは疫学研究にとって貴重な情報となります。これにより、例えば母親の生活習慣と子供の出生状況を分析すると、妊娠期の生活習慣が出生にどのような影響を及ぼしているについて知ることができます。

「後ろ向きコホート研究」を用いた調査

 今回の研究では、2004年〜2010年の間で神戸市の乳児検診を受診した母子50743ペアについて、「後ろ向きコホート研究」と呼ばれる疫学研究のデザインを用いて、妊娠期にタバコを吸わない母親の子供に対して、妊娠期にタバコを吸う母親の子供はどの程度の聴覚障害の疑いの判定を受けやすくなるかを、妊娠期の喫煙および生後の受動喫煙と3歳児健診の聴覚検査の結果について分析を行い、統計的な手法により検討しました。

 結果として、妊娠期にタバコを吸わない母親の子供に対して、妊娠期にタバコを吸う母親の子供は、1.75倍程度の聴覚障害の判定を受けやすくなること、加えて出生後4ヶ月に目前でタバコを吸う同居者がいる場合2.35倍聴覚障害疑いの判定を受けやすくなることがわかりました。

 妊娠期にタバコを吸うことで胎児の発育が阻害されることは、以前から知られていますが、今回の研究から胎児の蝸牛形成に、ニコチンが影響を与えている可能性が示唆されました。
また生後の受動喫煙が聴覚に直接的な影響するかについては、未だ解明されていませんが、難聴の原因のひとつである中耳炎は、タバコの副流煙があると治りにくいとされています。
その結果として聴覚への影響も考えられます。

 今回の研究で、自治体のもつ母子保険情報により、疫学的観点で母親の喫煙や飲酒、家族内での喫煙が子供の発育に影響することがわかったことで、妊娠期の喫煙や幼い子どものいる家庭での禁煙を促す必要性が再確認されました。