すい臓ガンがどのようにして発生するのか?そのメカニズムを名古屋大学が解明

名古屋大学

 名古屋大学の研究グループは、すい臓ガン発生の過程において、TFF1と呼ばれる細胞外分泌型タンパクが大きく関与しているということを明らかにしました。

すい臓がんの怖さ

 日本人の死因で最も多いとされるガン。その中でも、すい臓ガンは発生から5年生存率が10%程度と極めて低い難治性悪性腫瘍と言われています。これまで、すい臓ガンは良性腫瘍が悪性化することで発生すると考えられていました。しかし、そのガンが発生するメカニズムについては、これまで明確に解明されていませんでした。そこで今回、名古屋大学の研究グループは、胃の粘膜で多く生産される分泌型タンパク「TFF1」に注目し、研究を進めてきました。

研究の背景

 すい臓ガンは、日本の部位別ガン死亡数、第4位です。発生から5年生存率が10%程度という、悪性度の高い腫瘍と言われています。近年では、FOLFIRINOX,、ジェムシタビン+nab パクリタキセルなど、有効な化学療法による抗ガン剤治療が開発されています。しかし、どれも平均生存期間は1年と非常に短く、新たなすい臓ガン治療薬開発が望まれています。

 すい臓ガンはKRASと言うガン遺伝子の突然変異がほぼ100%、すい臓ガンで確認されていますが、KRAS遺伝子の突然変異だけではすい臓ガンは発生せず、それ以外の遺伝子の異常が重なることで、初めてすい臓ガンが発生することが分かってきました。このすい臓ガンの発生メカニズムの解明が、すい臓ガンの新たな治療の開発に役立つ可能性の高い重要な研究課題となっています。

分泌型タンパク「TFF1」とは

 TFF1は、胃潰瘍などで損傷した消化管の粘膜再生を促進する働きがあることが明らかにされてきました。しかしその反面、抗癌作用を有することも指摘されています。

 これまですい臓ガンは、KRASなどのガン遺伝子の突然変異により良性腫瘍が発生し、これを長期放置すると、増殖・浸潤・転移する能力を身に着け、ガンになっていくと考えられてきました。

TTF1によるガン抑制作用

 名古屋大学の研究グループは、すい臓ガンにおけるTFF1の作用を確認したところ、TFF1は、すい臓ガンの浸潤・転移する能力を弱めることが分かりました。また、TFF1 と膵癌発生の関係を遺伝子改変マウスを用いて調べたところ、TTF1は、すい臓の良性腫瘍が悪性度を増してガン化することを妨げていることがわかりました。今回の研究結果により、TTF1はすい臓ガン発生を抑制するガン抑制作用を持っていることが分かりました。今後、TTF1を使った新たなすい臓ガン治療の開発が期待されます。

今後の展開

 すい臓ガンは悪性度が非常に高いガンであり、その発生のメカニズムを解明することは、将来的なすい臓ガン治療の発展につながると考えます。今回の研究結果で、TTF1はすい臓ガンを抑制する作用を持っていることが分かりました。TTF1の抗癌作用を応用すれば、すい臓ガン発生を抑える予防的治療の開発につながる可能性があると同時に、進行性すい臓ガンの新たな治療法開発への可能性があります。
名古屋大学の研究グループでは、TTF1のすい臓ガン治療への応用の検討と、同じ仲間の細胞外分泌型タンパク「TTF2」のガン抑制効果も検討するとともに、TTFがすい臓ガンだけでなく、肝臓ガン発生も抑制する作用があるということの解明をすすめています。将来的には、TTFによる他の消化器ガンの治療にも広く応用できることを目指し、研究をすすめていくとのことです。