私の元気の秘訣

ヘバーデン結節を治すために夏でも大好きなビールを我慢しました

ピアニスト 
島 健さん

日本の音楽界に欠かせないピアニストの島健さん。ピアノとともに歩んできた人生の中で、弾くことができなくなる恐怖を感じた時期があったといいます。難治の関節症・ヘバーデン結節が回復に向かったきっかけを伺いました。

医師から治療法がないといわれて頭の中が真っ白になりました

[しま・けん]

1950年、東京都生まれ。1986年に米国から帰国後、ジャズピアニストとしての活動のみならず、スタジオ・プレイヤーとして数千曲に及ぶレコーディングに参加。編曲を手がけたサザンオールスターズ『TSUNAMI』、浜崎あゆみ『Voyage』がレコード大賞を受賞。テレビドラマやミュージカル、芝居の作曲、音楽監督など幅広く活動。自身のアルバムとしては『BLUE IN GREEN』『Shimaken Super Sessions』、夫人の島田歌穂さんとのデュオ・アルバム『いつか聴いた歌』などがある。

 僕はピアニストとしての演奏のほか、作曲や編曲などの仕事もやらせていただいています。皆さんが好きな映画やテレビドラマで流れた歌の中には、僕が担当した曲があるかもしれません。脚本家の倉本聰さんの作品『拝啓、父上様』(フジテレビ系)や、昨年放送されたテレビドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の音楽も僕が担当しています。

 僕は、父の影響で音楽家の道を歩むようになりました。父がタンゴのピアニストだった影響で、子どものころからタンゴやジャズ、ラテンといった音楽を聴いていました。幼稚園のころの僕にとって、クリスマスソングといえばビング・クロスビー(米国の歌手・エンターテイナー)のクリスマスアルバム。僕にとっての『ジングルベル』はとてもリズミカルでスウィングしている曲なんです。

 僕の人生にとって、ピアノの存在は欠かせません。ところが、ピアノを弾けなかった時期があります。「ヘバーデン結節」という難治の関節症を患い、指の痛みに苦しんでいたからです。

 ヘバーデン結節を発症したのは、5年ほど前のことです。両手の人さし指の第一関節がほんの少し赤く腫れ、痛みを感じるようになりました。「指が痛い」と思いながらも休まず仕事をしていたある日、人さし指の第一関節が曲がっていることに気づいたんです。大あわてで整形外科を受診してレントゲン検査などを受けると、ヘバーデン結節と診断されました。

名ピアニストとしてはもちろん、多彩な音楽活動を展開する島さん

 担当してくれた先生から「ヘバーデン結節は治療法がなく、痛み止めの薬しか対処法がありません」といわれたときは、あまりの衝撃に頭の中が真っ白になりました。さらに、「ヘバーデン結節をほうっておくと、全部の指に症状が広がっていきます」といわれ、とてもあせりました。

 指の痛みはどんどん悪化して、2014年には先生の言葉どおり、すべての指の第一関節に何ともいえない痛みを感じるようになりました。何もしなくても感じていた痛みは、負荷をかけると我慢できないほど激しくなるんです。

 ヘバーデン結節と診断されてからの私は、とてもピアノが弾ける状態ではありませんでした。6人のピアニストが共演する演奏会『ジャズ・ピアノ6連弾』への参加を断念したときは、ほんとうに悔しかったです。

縁の下の力持ちから自分の音楽を残すことにも意識を向けたい

「再びピアノが弾けるようになってほんとうによかったです」

 ピアニストなのにピアノが弾けないという現実に、落ち込む毎日を過ごしていました。「このままヘバーデン結節が治らなかったら、僕のこの先の人生はどうなるんだろう」と、精神的にかなり追い詰められていました。

 最も症状がひどかった2014年は、女房である島田歌穂のデビュー40周年にあたりました。僕がピアノとアレンジを担当することが決まっていた記念アルバムは、記念の年である2014年じゅうに発売しなければなりません。指の痛みで演奏ができなかった僕は、制作の予定を延ばしてもらいました。締め切り直前を迎えたときに痛みを我慢しながらピアノを弾いて、無事に女房のアルバムを出すことができました。

 ヘバーデン結節と診断されてから、改善に役立ちそうな情報を集めつつ、鍼灸や整体といった東洋医学にもとづいた治療法を試すようになりました。また、ヘバーデン結節の改善が期待できるという平戸つる草の粒食品を、朝と晩に飲んでいます。

 僕はお酒、特にビールとワイン、焼酎が好きなんです。あるとき、ヘバーデン結節にくわしい知人から「体を冷やすのはよくないので、冷たいビールは飲まないほうがいい」といわれたんです。暑い季節のビールは最高ですが、夏でも焼酎のお湯割りを飲んでいました。

 東洋医学にもとづいた多くの治療法を試すうちに、ヘバーデン結節の症状は少しずつ改善しはじめました。いまも両手の小指に軽い痛みがありますが、テーピングをすればピアノの演奏ができるようになっています。

 今年の5月12~13日には、あるコンサートに音楽監督兼ピアニストとして参加しました。約2時間の公演中、僕はピアノを弾きっぱなしです。とてもハードでしたが、昼夜2公演の2日間を無事に終えることができました。

 僕は長年、縁の下の力持ちの立場で「担当するアーティストを輝かせるお手伝いができれば」と考えながら音楽に向き合ってきました。これからは、自分の音楽を残すことにも、意識を向けていきたいです。

 ヘバーデン結節を患ったことで健康の大切さを痛感した僕は、今年から週に数日、ウォーキングを始めています。1日約20分、調子がいいときは1時間半近く歩いています。

 ヘバーデン結節は治りにくい病気といわれていますが、実際に僕はほとんど治っています。いま、ヘバーデン結節に悩んでいる方には「希望を捨てないで」とお伝えしたいです。