単一の回路ではない!皮質脊髄路には多様な神経回路が存在

新潟大学脳研究所とシンシナティ小児病院は、脳と脊髄を結ぶ「皮質脊髄路」の中に多様な神経回路が存在することを発表しています。それらが運動動作をコントロールする「神経地図」としての働きを示すとのことです。

新潟大学

皮質脊髄路とは

大脳皮質と脊髄を結ぶ「皮質脊髄路」。皮質脊髄路と呼ばれる神経回路は、特に、自発的に運動を始めたり、複雑で巧みな運動動作をコントロールしたりするのに重要な神経回路として知られています。
皮質脊髄路は大脳皮質にある神経細胞が神経の軸索を伝って、脊髄、そして筋肉へと指令を送り、運動をコントロールすると考えられています。
皮質脊髄路の存在は少なくとも19世紀後半には知られていました。しかし、100年以上経っているにも関わらず、どのような種類の神経細胞が接続して神経回路を形成しているか、どのようにして複雑で絶妙な運動動作を生み出すことができるのかなど、その接続様式や動作原理のからくりは、まだ不明のままでした。

多様な神経回路が存在

この研究では、マウスの皮質脊髄路をモデルとしています。神経回路を解析するための最新の技術(遺伝子改変技術、神経トレーサー、電気生理学的解析、神経活動の制御技術、3次元行動解析など)を用いて、皮質脊髄路に存在する詳細な神経細胞の構成とその働きを探っています。皮質脊髄路の中には、これまで知られていなかった多様な接続を持った神経回路、すなわち「神経地図」が内在していることを発見したとのことです。

運動をコントロールするしくみ

多様な接続を持った神経回路は、回路ごとに大脳皮質や脊髄の中で存在する場所が異なっています。例えば、大脳皮質の内側や外側など別々の領域に神経細胞が存在し、それらが背側や腹側など異なる脊髄の領域へとつながっていたとのことです。
また、神経回路ごとに多様な性質を持つ神経細胞と結ばれており、それぞれにおいて特異的な遺伝子を発現し、運動や感覚回路との接続様式に相違が見られ、興奮性・抑制性の神経伝達物質の種類が異なっていました。
さらに、各々の神経回路の活動を遮断すると、腕を伸ばして餌を取るといったきめ細かな運動において、腕をうまく前へ伸ばせなかったり、つかんだ物を離せなかったりなど、異なる動作の異常が発生したとのことです。
従って、皮質脊髄路中に存在するそれぞれの神経回路は、複雑で巧みな運動を実行する際に、運動のスピードや感覚情報の制御など、動作に必要な別々の機能に貢献していることが分かりました。
これらの結果から、皮質脊髄路は大脳皮質と脊髄をつなぐ単一で単純な回路ではなく、別々の働きを持った多様な神経回路の集合体として、巧みに運動動作をコントロールしていることが明らかになりました。

脳卒中や脳脊髄損傷の機能回復の手がかりに

今回はマウスで行われた研究ですが、ヒトにおいても、大脳皮質の異なる領域から、皮質脊髄路の軸索が脊髄へ伸びていることが知られています。
従って、今回見いだされた多様な神経回路は、ヒトも含め多くの種で共通の様式を持つと考えられ、私たちが日頃行う複雑な動作の基盤になっていると考えられます。
皮質脊髄路の詳細な神経回路の構成、すなわち「神経地図」が明らかとなり、今後、脳卒中や脳脊髄の損傷など運動機能が障害される神経疾患において、機能を回復させる神経回路の実体解明に大きな手がかりとなることが期待されるとのことです。