パーキンソン病の病因に不飽和脂肪酸の代謝異常が関与 ~新しい予防法・治療法の開発に期待~

 千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授(神経科学)、任乾特任助教らが、代表的な神経変性疾患であるパーキンソン病やレビー小体型認知症の病因に、不飽和脂肪酸の代謝に関わる可溶性エポキシド加水分解酵素の異常が関与していることを明らかにして2018年5月8日に発表しました。

 パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)は、α‐シヌクレニンというたんぱく質の凝集沈着が特徴的な神経変性疾患ですが、その原因はいまだ明らかにされていません。今回、この酵素阻害薬(TPPU)と遺伝子欠損マウスを用いて、これらの疾患の原因に可溶性エポキシド加水分解酵素が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。TPPUの投与は、パーキンソン病を発症させたマウスにおけるドーパミン神経系の脱落を予防しました。

 また、遺伝子の欠損マウスは、パーキンソン病モデルにおけるドーパミン神経系の脱落を示しませんでした。さらにパーキンソン病のモデル動物およびレビー小体型認知症患者の死後脳を用いた研究から、可溶性エポキシド加水分解酵素のたんぱく発現がモデル動物の脳組織やレビー小体型認知症患者の死後脳組織で増加していることが見出されています。

 興味深いことに、この酵素の発現とα‐シヌクレニンのリン酸化の間には正の相関があり、神経障害に繋がるα‐シヌクレニンのリン酸化の亢進と、この酵素の増加に関連があることが示唆されました。さらに、家族性パーキンソン病(PARKIN遺伝子変異)患者由来のiPS細胞から誘導したドーパミン神経細胞に対してTPPUを培地中に添加することにより、ドーパミン神経系の神経障害を予防し、正常細胞と同程度まで回復させました。

 可溶性エポキシド加水分解酵素は、不飽和脂肪酸(アラキドン酸、EPA、DHAなど)の代謝系におけるエポキシ脂肪酸の加水分解に関わる重要な酵素であり、近年注目されています。神経変性疾患の脳では、可溶性エポキシド加水分解酵素が増加することにより、α‐シヌクレニンの凝集・沈着にして、神経脱落に繋がっているものと推測されます。今回の研究成果は、α‐シヌクレニンの凝集・沈着が関与する神経変性疾患の新しい予防薬・治療薬になるものと期待されます。

 順天堂大学と東京都健康長寿医療センター、生理学研究所、米国カリフォルニア大学デービス校が共同で実施された今回の研究の成果は、2018年5月7日に米国科学アカデミー紀要の電子版で公開されています。

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