腎機能を維持するには尿毒素や悪玉物質をためないことが重要で血糖値と腸内環境の維持がカギ

JCHOうつのみや病院院長/自治医科大学名誉教授 
草野英二

腎機能を悪化させる最大の要因は高血糖で悪玉物質が作られて動脈硬化が促進

[くさの・えいじ]

1974年、東北大学医学部卒業後、北里大学で研修。1976年、自治医科大学に赴任後、1981年から2年間、米国メーヨクリニックに留学。1993年、自治医科大学腎臓内科学助教授。2002年、同大学教授。2015年から名誉教授。日本腎臓リハビリテーション学会監事、栃木県透析会理事を務める。

 慢性腎臓病の進行を止めるには、腎機能の悪化を加速させる高血圧の改善が欠かせません。高血圧になって圧力の高い血流が腎臓へ流れ込むと、糸球体の毛細血管に大きな負担がかかってしまい、腎機能低下の原因となります。

 腎機能を低下させる原因として、さらに危険なのが高血糖です。最近では、高血糖こそが慢性腎臓病を悪化させる最大の原因と考えられるようになりました。食事をして血糖値が上昇すると、血糖値を適正に保つために膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。健康な人は、食事をすると正しくインスリンが分泌されるため、上昇した血糖値がスムーズに下がります。

 ところが、インスリンの分泌量が少なかったり、分泌量が十分でも効きめが弱かったりする(インスリン抵抗性という)と、食後に上昇した血糖値がなかなか下がらず、高血糖の状態が続いてしまうのです。

 高血糖の状態が続くと、余分な糖と全身のコラーゲンをはじめとしたたんぱく質が結びつくようになります。私たちの体の細胞や組織は、ほとんどがコラーゲンなどのたんぱく質で構成されています。特にコラーゲンは人体のたんぱく質の約30%を占め、血管壁や皮膚もコラーゲンが主な成分です。

 コラーゲン線維は規則的な網目状で構成され、お互いに橋をかけたように結びついています。さらにエラスチンというたんぱく質が網目のすきまを埋めて、組織に弾力性を与えています。高血糖の状態が続いてコラーゲンなどのたんぱく質に糖が結びつくと、一部がアマドリ化合物(変性した糖)という物質に変わります。

有機リンの含有量。近年、リンは老化促進と密接な関係のあるミネラルと考えられている。リンには有機リンと無機リンの2種類があり、上の表にはない無機リンのほうが体に吸収されやすい。無機リンは加工食品や食品添加物に多く含まれているので要注意
出典:日本食品標準成分表2015版(七訂)

 アマドリ化合物がさらに糖との結合(糖化反応)をくり返すと、「AGE(終末糖化産物)」という〝糖毒物質〟が作られてしまいます。AGEに変化した糖とたんぱく質の結びつきは非常に強く、分解することは非常に困難です。

 体内で作られたAGEは少しずつ蓄積されていきます。AGEは体の組織を構成するたんぱく質を糖まみれにして機能を奪ったり、受容体(物質からの刺激を受け取って細胞などに情報を伝える器官)に結合して炎症を起こしたりします。特に、腎臓の毛細血管など、細い血管ほどAGEの影響を受けやすいといわれています。

 血液をろ過して原尿を作り出す腎臓は、1㌘あたりで換算すると、全身の中で最も血流量が多い臓器です。腎臓に流れ込む血液は、毛細血管の塊である糸球体を通過しながらろ過されます。過剰に増えた糖が腎臓の糸球体に入ってAGEが作られると、血管の内側の細胞(血管内皮細胞)が傷つけられます。

 体内にAGEが蓄積されつづけると、腎臓内の糸球体にも影響が現れます。糸球体の毛細血管が動脈硬化を起こし、基底膜(尿をろ過するフィルターの役割を果たしている膜)という部分も厚く硬くなっていきます。その結果、腎臓のろ過機能が低下していくのです。慢性腎臓病の患者さんは、常に血糖値を意識した生活を送ることが大切といえるでしょう。

 高血圧や高血糖のほかに腎臓病を進行させるもう1つの要因として、腸内環境の悪化も挙げられます。体内の尿毒素を排泄している腎臓と同じように体内の不要物を排泄する働きをしているのが腸です。近年の研究では、腎臓と腸には密接な関係のあることがわかりました。

腸内環境の悪化も腎機能低下の原因で尿毒素が作られて腎臓を傷つける

トリプトファンが腸内の悪玉菌によって分解されるとインドールに変化し、インドールは肝臓でインドキシル硫酸に変化する。インドキシル硫酸は腎臓で炎症を引き起こし、腎機能を低下させる。クレメジンはインドールを吸着し、排泄する働きがある

 人間の腸内には数百兆個もの細菌がすみついているといわれています。腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(両者の強いほうに味方する菌)」の3種類に分けることができ、絶えず勢力争いをしています。

 善玉菌が優勢だと腸内環境は良好になり、便秘などが原因で悪玉菌が優勢になると、体に悪影響を及ぼす物質が生じます。問題なのは、悪玉菌によって作られる有害物質が腎臓にも悪影響を及ぼすことです。代表的な有害物質として、インドキシル硫酸が挙げられます。

 食べ物に含まれるたんぱく質は、腸管内で分解されてアミノ酸になります。腸内環境が悪化して優勢になった悪玉菌が必須アミノ酸(体内で合成できないアミノ酸)の1つであるトリプトファンを分解すると、インドールという有害物質が作られます。腸で吸収されたインドールは血液に乗って肝臓に届けられ、インドキシル硫酸に変化し、腎臓にたどりつきます。

 健康な腎臓であればインドキシル硫酸を問題なく排泄することができますが、腎機能が低下すると、腎臓にインドキシル硫酸がたまっていきます。蓄積したインドキシル硫酸は活性酸素(酸化作用の強い酸素)や炎症物質を作り出すため、腎臓が傷つけられ、腎機能がさらに低下してしまうのです。

 腎臓と腸の密接な関係は、医学的に「腸腎連関」といいます。慢性腎臓病の進行を抑えるには、食事療法などの治療を徹底することはもちろん、腸内で発生する有害物質に対処する必要もあるのです。

 腸腎連関の考え方から生まれた治療薬が、炭を原料にして作られるクレメジンです。クレメジンは腸内で作られた有害物質を吸着し、便といっしょに排泄することで腎臓の負担を減らします。

 クレメジンには便秘や腹部膨満感といった副作用が起こることもあるので、異変を感じたらすぐに担当医に相談するようにしてください。