出会いを生み、交流も深めるお酒で人生を豊かに!


お酒を楽しみながら学ぶ熊沢先生の健康講座は大評判!

熊沢 義雄

[くまざわ・よしお]

医学博士(京都大学)。元北里大学教授。山梨大学大学院発酵生産学修了後、北里研究所、北里大学薬学部・理学部に40年間在職。順天堂大学医学部非常勤講師。専門は生体防御学(免疫学)。日本細菌学会名誉会員。現在は北里大学発のベンチャー企業の代表として奮闘中。

 人生は出会いによって、より豊かなものになります。今回は、お酒の話を含めた「出会いの魅力」についてお話ししたいと思います。

 出会いというと、多くの方は人との出会いを思い浮かべます。でも、私たちがこの世に生まれて最初に出合うのは人ではなく、別のものなのです。

 ほとんどの人が最初に出合うのは、お母さんの腟に存在している細菌です。出産前の腟の中は常在菌の中でも乳酸菌やビフィズス菌の数が増えています。酸を分泌することで、有害菌の増殖を防いでいるからです。出生時に赤ちゃんが腟の細菌に出合うのは、母親から受けとる最初の贈り物といえるでしょう。

 菌についてふれたので、腸内細菌が作る腸内フローラ(腸内細菌叢)の大切さについても話しておきましょう。

 私たちの腸内環境の状態は、何を食べるかによって大きく異なってきます。腸内環境を良好な状態に保つために、ビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌が必要であることは、皆さんもご存じだと思います。

 最近では乳酸菌に加えて、酪酸生産菌も善玉菌として認められるようになっています。専門的な話になりますが、短鎖脂肪酸の1つである酪酸は、腸の受容体に結合して、私たちの免疫を制御しているリンパ球(Tレグ細胞)を増やす働きをしています。私たちの体が食べたものに反応しないようにする働きを担っているTレグ細胞の数が少なくなると、食べ物に反応する食物アレルギーを引き起こしてしまうのです。

 腸内フローラを悪化させる原因にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群。以下、メタボと略す)があります。メタボと診断されている人は、腸内フローラの悪化に気をつけなくてはいけません。メタボの人の腸内では日和見菌(善玉でも悪玉でもない腸内細菌)の1つであるバクテロイデス属細菌が激減し、悪玉菌が増殖しています。悪玉菌が増えると肝臓にダメージを与えるようになります。メタボが進むと、脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎、そして最終的には肝硬変や肝がんまで進んでしまうといわれています。

 お酒を飲みすぎると肝臓の機能が低下しますが、腸内フローラも悪化します。マウスにアルコールを飲ませた実験では、ペクチン(水溶性食物繊維)を食べさせることでアルコールによる肝機能障害が抑えられたという報告があります。お酒を飲む人にとって良好な腸内環境を維持することは欠かせないといえるでしょう。最近では、毎日100㍉㍑程度の赤ワインを飲むと、血清中の過酸化脂質や糞便中の悪玉菌の数が抑えられるという研究もあります。

 私は料理研究家の川上文代先生が主宰する料理教室「デリス・ド・キュイエール」で、川上先生が作る料理と私が選ぶワインを楽しむ会を定期的に開いています。年齢やジャンルを問わず、さまざまな分野の方が参加する楽しい会になっています。

 川上先生とは以前、1年半以上にわたって「食から考える健康講座」を開催していました。毎回、健康に関する1つのテーマを取り上げ、私が講義した後に内容に合わせた料理を川上先生が作るというユニークな趣旨の講座です。参加者の皆さんは、私の話よりも、川上先生のおいしい料理が目あてだったかもしれません(笑)。いずれにしろ、楽しくておいしい健康講座と大評判になりました。新しい出会いを生んで交流も深めるお酒は、人生を豊かにしてくれるものだと、あらためて思いました。