私の元気の秘訣

もっとうまくなりたいと思って努力を重ねる人はいくつになっても進化できます

舞踊家・振付家 名倉加代子さん

60年近くジャズダンス界の最前線で活躍する、伝説のダンサー・名倉加代子さん。77歳を迎えた現在も衰えない美しさとパワーには、「かきくけこ」のルールがありました。

感動的なダンスには基礎はもちろん内なる魅力も大切なんです

[なくら・かよこ]

1940年、新潟県生まれ。12歳で竹部玲子バレエ団に入団。数々のショー番組やステージに出演し、20歳でプロダンサーとなる。渡米してニューヨークやロサンゼルスでダンスレッスンを受けた後に、フリーのダンサー兼振付家として活動。1970年に名倉ジャズダンススタジオを設立。後進の指導にあたりながら、舞台やテレビなどのダンスの振りつけを手がけている。

 私のいまの夢は、ジャズダンス界の活性化です。特にクラシックバレエに取り組んでいる若者たちが、ジャズダンスに興味を持ってくれることに期待しています。なぜクラシックバレエかというと、ダンスの基礎を学ぶのに最適だと考えているからです。

 ダリやピカソのような個性的な作風で知られている画家も、若いころにデッサンの技術を磨いています。ダンスも同じで、まずは基礎が必要だと思っています。私は12歳のときからクラシックバレエを学びましたが、いまでもクラシックバレエをやっていてよかったと思っています。

 バレリーナになるのが夢だったのですが、20代からジャズダンサーとしての活動に重心を置くようになりました。テレビの人気番組のレギュラーを経験後、自分の実力を試すために渡米。本場のジャズダンサーに実力を認められたときは、ほんとうにうれしかったです。

 帰国後、30代で振付家として活動しながらジャズダンス教室を開き、プロからアマチュア、お年寄りから子どもまで、多くの方とともにダンスを楽しんでいます。ダンスの魅力にはまってから、あっという間の60年間でした。

 基礎はもちろん、ダンサーに必要な要素として「人間的な魅力」が挙げられます。ダンスは表現の技術です。人間としての中身が充実していなければ、感動を伝えるダンスはできません。振りつけどおりに踊るだけでは、100点は取れないのです。あるときは舞台に根が張っているような存在の大きさが、またあるときは、空気の精のような繊細さが必要です。心の動きと肉体の動きの両方がなければ、人を感動させることはできないのです。

 私は人間としての中身を磨くため、「かきくけこ」のルールを頭の片隅に置いて生活しています。「か」は感動です。心を動かすものにふれることは、人間としての魅力を高めます。旅行先での出来事はもちろん、日常の小さなことにも心を動かすようにしています。

 感動するためには、興味の「き」を持つことが大切。常識にとらわれることなく、さまざまな分野に興味を持ちたいものです。いままでは赤ワイン一辺倒だった私ですが、最近はシャンパンのおいしさにはまっています。

名倉さんは、バレエで習得したダンスの基礎がジャズダンスでも生きていると話す
(撮影:鈴木紳司)

 また、健康であることは、大きな魅力の1つです。好き勝手な生活を送るのはよくありません。「く」の工夫は、無理のないスケジュール管理にも発揮されます。「け」の健康管理は、この年になると無意識に行っているかもしれません。バランスのいい食生活や運動・睡眠の習慣が、いまでもダンスを続けられている理由の1つだと思います。

 何事にも興味を持って感動し、健康管理や工夫を怠らずに体を鍛える――以上を踏まえて「こ」の行動に移すのです。
「かきくけこ」のルールは大げさに聞こえるかもしれませんが、特別なことではありません。日々の生活の中で少し意識するだけで、心と体に大きな変化が起こるはずです。

人生に「遅い」はなく知識と経験を生かせばいつまでも進化できる

 健康について特別なことはしていません。肌がきれいといわれることも多いのですが、エステサロンに通ったり、高級な化粧品を使ったりしているわけでもありません。ダンスで汗をたくさんかいているので、新陳代謝がいいのかもしれません。

 体調がよくないと感じたときは、早めに医師に相談するようにしています。「何かあったときはこの先生に相談しよう」という医師が、外科や内科などにそれぞれいてくださるので、ほんとうに心強いです。

 家族の食事は私が作っていて、健康に気をつけたバランスのいい食事を心がけています。朝食にはこだわりがあり、定番メニューはトマトスープとパン。使うジャムはすべて手作りです。

 中高年の方から「年を取って体が動かなくなってきた」という声を耳にしますが、私のまわりにはいくつになっても元気な方がたくさんいます。その代表が、私が経営するダンススタジオのシニアクラスに参加している生徒の皆さん。私は幅広い世代にダンスを指導していますが、シニアクラスは私がいちばん楽しく指導しているクラスかもしれません。

 シニアクラスは週に1回、2時間のレッスンです。80歳以上の人も含めて、約40人の生徒さんが汗をかいています。皆さんとても元気で、2年に1回の発表会をめざしてがんばっています。生徒さんの中には、70歳よりも80歳のときのほうが、体がのびやかに動くようになっている方もいます。

いまでもステージに立ちつづけている名倉さん
(撮影:鈴木紳司)

 何事も上達するために大切なのは目標と回数です。うまくなりたいと思って努力を重ねる人は、何歳になっても進化しています。年とともに積み重ねた知恵や経験を生かして前向きに取り組むことが大事です。

 私は、「いまがいちばん早いとき」をモットーにしています。物事を始めるのに遅すぎることはありません。ダンスに限らず、興味を持ったものは年齢を考えずに始めてみましょう。すると、よりすてきな人生を送ることができます。新しく始めることの1つにジャズダンスがあれば、とてもうれしく思います。