北海道の知床半島で採れる〝羅臼昆布〟に育毛作用が期待できると判明

知床半島の羅臼昆布はアミノ酸を豊富に含む

人間の背丈ほどの大きさに成長する羅臼昆布は、ほかの昆布より多くのアミノ酸を含んでいる

 秋から冬になるにつれて空気が乾燥すると、髪や頭皮が乾燥してうるおいが失われるなど、髪のトラブルに悩む人が増加します。

 私たちの髪は12~13%が水分です。空気の乾燥に伴い髪の水分量が減少すると、髪や頭皮の乾燥も進みます。すると、髪の表面を覆っている細胞の層(キューティクル)がはがれ、枝毛や切れ毛が作られます。頭皮が乾燥すると、皮膚のうるおいを保つ角質層がくずれ、フケを増やしたりかゆみを引き起こしたりします。髪や頭皮の乾燥は抜け毛や白髪の原因になるといわれています。

 髪の乾燥を改善する素材として、注目が集まっているのが、羅臼昆布です。

 2005年に世界自然遺産に登録された、北海道の東端に位置する知床半島。知床半島の東側沿岸の羅臼町でのみ取れる羅臼昆布は、豊かな自然に育まれ、濃厚でコクのあるだしが取れます。〝昆布の王様〟と呼ばれ、高級だしとして重宝されています。

 別名を「オニコンブ」という羅臼昆布は、全長1.5~3㍍、幅は20~30㌢にも及びます。寿命は2年しかなく、2年間で大きく成長した羅臼昆布は、胞子を放出すると枯れて死んでしまいます。

 知床半島の漁師たちは、2年めの昆布を収穫しています。漁の期間は夏の90日ほどで、漁師たちは午前3時ごろから、羅臼昆布の収穫や加工作業を続けます。出荷までに20工程もかける昆布は、日本全国において羅臼昆布以外にありません。

羅臼昆布に含まれるアルギン酸は、葉よりも茎の部分に多く含まれている

 羅臼昆布の魅力を、多くの人に知ってもらうための活動をしているのが、芦崎拓也さん(ケミクル代表)です。芦崎さんに羅臼昆布が持つ働きについてお話を伺いました。

「髪の健康という観点からすると、羅臼昆布の魅力は豊富なアミノ酸です。羅臼昆布には、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸が、ほかの昆布に比べて10倍も多く含まれていることがわかっています」

 髪の主成分はたんぱく質です。たんぱく質はアミノ酸から作られているため、質のよいアミノ酸の摂取は頭皮や髪の健康維持に欠かせません。近年の研究では、経口摂取以外に、皮膚や髪に塗ることで、高い保湿効果を示すことがわかっています。

髪の成長を促す成分は羅臼昆布の茎に豊富

羅臼昆布のエキスには、髪の成長にかかわるIGF-1というたんぱく質が発現するのを助ける働きがある
(ハーバー研究所調べ)

「羅臼昆布のアミノ酸は、茎の部分に大変多く含まれています。茎は大きな葉を支えるために栄養を凝縮する必要があると考えられます」

 東京海洋大学の久田孝准教授と日本バリアフリーの共同研究によると、羅臼昆布には食物繊維の一種であるアルギン酸も、葉よりも茎に多く含まれていることが判明しています。

「羅臼昆布を加工するさい、茎には用途がなく、廃棄されていました。最近、茎に含まれた豊富な栄養素に髪の成長を促す働きが期待できるとされ、注目を集めています」

 ある研究では、羅臼昆布から抽出したエキスが、髪を作る毛乳頭細胞の内部で「IGF‐1」を活性化すると報告されています。毛乳頭細胞は毛根に存在し、発毛や育毛に大きくかかわる細胞です。

「IGF‐1とは、成長ホルモンにより肝臓などで作られるたんぱく質です。毛乳頭細胞の中で活性化されたIGF‐1が髪の製造工場である毛母細胞に働きかけると、発毛が促される可能性があるのです」

 髪には生えてから抜けるまでの、成長期→退行期→休止期を経る毛周期(へアサイクル)があります。男性の場合、毛母細胞が活発になる成長期に髪の栄養不足や乾燥が起こると、髪が十分に育っていない産毛の状態で成長が止まり、抜けてしまいます。

「IGF‐1は、毛周期の中でも、髪が成長する成長期に必要になる物質です。成長期にIGF‐1を増やすことができれば、発毛や育毛につながると期待できます」

 芦崎さんは、羅臼昆布の魅力を広めることで、少しでも羅臼町の活性化につながってほしいと話しています。

「羅臼町には昆布のほかにもいろいろな魅力があります。ぜひ一度遊びに来てください」

この記事は2015年12月号に掲載されています。