生産量全国1位を誇る宮崎県産の干しタクアンが血圧低下をサポート

宮崎大学農学部応用生物科学科教授
榊原啓之

天日干しをすることでGABAの量が7倍増加

ダイコンがつるされている風景は宮崎県の冬の風物詩として有名
写真提供:道本食品株式会社

 九州地方の南東部に位置し、温暖な気候が特徴の宮崎県。稲作においては温暖な気候を利用した超早場米の生産地として有名であるほか、野菜や果実などの促成栽培も盛んに行われています。

 そんな宮崎県で注目を集めている食品が、干しタクアンです。宮崎県はダイコンの作付け面積が日本国内4位、干しタクアンの原料である干しダイコンの生産量は日本一を誇ります。宮崎市内(田野町、清武町を中心とする地域)では、1960年からタクアン用のダイコンの栽培が始まり、適した風土から干しダイコンの生産が盛んに行われるようになりました。

 この地域が干しダイコン作りに適している理由は2つあります。1つめは、ダイコンが旬を迎える冬季に「霧島おろし」と呼ばれる乾いた西風が吹いて、ダイコンの乾燥を助けるためです。2つめは、火山灰が多く保水力のある「黒ボク土」の土壌で、皮の薄い弾力性のあるダイコンが採れるためです。干しダイコン作りに使う高さ約6㍍のやぐらが立ち並び、ダイコンが丸ごと整然とつるされている光景は、宮崎の冬の風物詩としても有名です。

 宮崎県産の干しタクアンは、県と宮崎大学、県内12社の製造業者などが運営する「宮崎県干したくあん・漬物研究会」の共同プロジェクトによって研究が進められ、血圧低下作用があることが確認されています。

干しタクアンの摂取で正常高血圧が約5%低下

天日干しをしたダイコンを利用した干しタクアンは、含まれるGABAの量が約7倍も高くなる

 高血圧は循環器疾患の代表的な危険因子です。トマトやダイコンなどに含まれるGABA(γ‐アミノ酪酸)は、血管を収縮させる物質(ノルアドレナリン)の分泌を抑制して血管の収縮を緩和することによる血圧降下作用の可能性があることが報告されています。GABAの日常的な摂取によって血圧上昇を抑制できる可能性があるのです。

 GABAの量は天日干しすると増加することがわかっており、天日干しをしたダイコンを利用する干しタクアンは、含まれるGABAの量が約7倍も多くなります。このような背景から、GABAを豊富に含む干しタクアンに血圧低下作用があるのではないかと考え、ラットを使った研究を実施しました。

 実験では、高血圧の状態のラットに、下漬けした干しダイコンの乾燥粉末を0.3%含むエサ(0.002%GABA含有)を与え、2週間後の血圧を確認しました。その結果、干しダイコンの乾燥粉末を含んだエサを食べたラットは血圧の上昇が抑制され、塩分が血圧の上昇に影響を与えないこともわかったのです。

干しタクアンを毎日の食事に取り入れることで高血圧の改善が期待できる
写真提供:道本食品株式会社

 この結果を受けて、私たちは人間に対する試験も行うことにしました。試験の方法は、重篤な疾患を持っていない正常高血圧(最大血圧130~139㍉)の21人に8週間にわたって毎朝、GABA高含有の干しタクアン(105㍉㌘/100㌘)を摂取する群とプラセボ群(GABAをほとんど含まない干しタクアン。9㍉㌘/100㌘)に分けて比較。試験開始前と摂取から4週間および8週間後に血圧や生理学的検査、生化学検査、血液学検査、食事調査を実施しました。食事調査では、両群の塩分摂取量は試験前後で変化がなかったことを確認しています。 

 結果は、GABA高含有の干しタクアン群の最大・最小血圧が摂取前と比較して、それぞれ5.2%、5.4%低下。GABAを多く含む干しタクアンの日常的な摂取によって、人間の高血圧も低下させることができる可能性が示唆されました。

 血圧が高くなってきた、なかなか血圧が下がらないといった悩みを持つ方は、ぜひ干しタクアンを毎日の食事に取り入れてみてください。