腸内環境が悪化すると腎機能の低下を招く! 便秘を解消すれば腎機能は維持される

JCHOうつのみや病院院長/自治医科大学名誉教授
草野英二

腸内環境が悪化して生じた有害物質が腎臓までたどり着き炎症を引き起こす

[くさの・えいじ]

1949年、福島県生まれ。1974年、東北大学医学部卒業後、北里大学で研修。1976年、自治医科大学に赴任後、1981年から2年間、米国に留学。1987年、自治医科大学腎臓内科講師を経て、1993年、同大学助教授。2002年、同大学教授。2015年から名誉教授。日本腎臓リハビリテーション学会監事、栃木県透析会理事を務める。

 腎臓の代表的な働きとして、血液をろ過して老廃物を除去する機能が挙げられます。体内で生じる老廃物には、クレアチニンや尿素窒素など有毒な物質も含まれています。体を老化させる元凶の〝リン〟が体内に過剰に存在していた場合、腎機能が正常であれば余剰分が除去されて一定に保たれます。

 腎臓は尿中に体内の毒素を排泄して、私たちの健康を守っています。腎臓と同じように、不要な毒素を排泄する臓器が腸です。近年の研究によって、腎臓と腸には密接な関係があることがわかってきました。

 小腸や大腸は、体に必要な栄養素と不要な物質を分け、吸収したり排泄したりする働きを担っています。一方で、口から入ってきた食物には、有害物質や雑菌類が含まれている可能性があります。有害物質に対抗するために、腸には全身の5割以上の免疫細胞が存在しているといわれています。

 免疫細胞の状態を左右するのが、腸内環境です。人間の腸内には数百兆個もの細菌がすみついています。腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(両者の強いほうに味方する菌)」の3種類に分けられ、腸内で勢力争いをくり広げています。

 善玉菌が優勢だと腸内環境は良好になり、便秘などが原因で悪玉菌が優勢になると、体に悪影響を及ぼす物質が生じます。問題なのは、悪玉菌によって作られる有害物質が、腎臓にも悪影響を及ぼすことです。代表的な有害物質として、インドキシル硫酸が挙げられます。

 食べ物に含まれるたんぱく質は、腸管内で分解されてアミノ酸になります。腸内の悪玉菌が必須アミノ酸(体内で合成できないアミノ酸)の1つであるトリプトファンを分解すると、インドールという有害物質が作られます。血液に乗って肝臓に届いたインドールは、インドキシル硫酸に変化し、最後に腎臓までたどりつきます。

 健康な腎臓であればインドキシル硫酸を排泄できますが、腎機能が低下していると、腎臓にインドキシル硫酸がたまっていきます。蓄積したインドキシル硫酸は活性酸素(酸化作用の強い酸素)や炎症物質を作り出すため、腎臓が傷つけられ、腎機能の低下に拍車がかかってしまうのです。

クレメジンは炭から作られた医薬品で腸内の尿毒素を吸着し体の外へ排泄する

トリプトファンが腸内の悪玉菌によって分解されるとインドールに変化し、インドールは肝臓でインドキシル硫酸に変化する。インドキシル硫酸は腎臓で炎症を引き起こし、腎機能を低下させる。クレメジンはインドールを吸着し、排泄する働きがある

 腎臓と腸が密接にかかわっていることを、医学的に「腸腎連関」と呼びます。慢性腎臓病(CKD)の進行を抑えるには、食事療法などの治療を徹底することはもちろん、便秘を予防して腸内で発生する有害物質に対処する必要があるのです。

 腸腎連関の考え方から生まれた治療薬が、炭を原料にして作られるクレメジンです。クレメジンは腸内で作られた有害物質を吸着し、便といっしょに排泄することで腎臓の負担を減らします。

 クレメジンが吸着するのはインドキシル硫酸に変化する前のインドールや、体内に残ると尿毒症を引き起こす尿毒素です。尿毒素には、尿素窒素・クレアチニン・AGE(終末糖化産物)などが挙げられます。

 尿素窒素は、たんぱく質が利用された後にできる残りかすです。クレアチニンも老廃物の1つで、筋肉に蓄えられたエネルギーが消費されたさいに生じます。尿素窒素とクレアチニンは、腎機能が低下すると血中で増加するため、腎機能を測定する検査に利用されています。

 AGEは、血液中に過剰になった糖とコラーゲンが結びついた老廃物です。体の組織を構成するたんぱく質の機能を奪ったり、炎症を引き起こしたりします。AGEが特に悪影響を及ぼすのは細い血管です。腎臓には細い血管がからまってできている糸球体がたくさんあるため、AGEの悪影響を強く受けてしまうのです。

 国内で行われた臨床試験で、人工透析への移行期間を延ばすことが証明されているクレメジンは、近年改良が加えられました。飲む量が少なくてすむようになり、患者さんの負担が軽減しています。

 一方で、処方されるのは、ステージG3~G4まで進行した慢性腎臓病の患者さんに限られるという欠点があります。クレメジンは尿毒素のみならず、ほかの薬の成分も吸着します。食後に別の薬を飲んでいる人は食間(食事と食事の間)など別の時間に飲む必要があります。複数の薬を使っている患者さんは、飲む時間を調整してください。

 クレメジンを服用すると、便秘や腹部膨満感といった副作用が起こることもあります。便秘になると、便といっしょに尿毒素も腸内にとどまります。副作用が出た場合は、すぐに担当の医師に相談してください。

 最近では、クレメジンと同じように炭を使った健康食品を見かけるようになりました。しかし、木炭や竹炭には、慢性腎臓病の患者さんが注意しなければならないカリウムやリンが含まれていることもあります。健康食品をとるさいは、安全性はもちろん、研究成果があるものを選びましょう。

 腸内の尿毒素を減らせるからといって、炭の力だけに頼ることはよくありません。腎機能を維持するためには食習慣を見直して、腸内環境の改善も意識するようにしましょう。