万病のもと「低体温・冷え症」改善!刺激するだけで自律神経のバランスが整い耳鳴り・めまいを撃退する「特効ツボ刺激」

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科教授
久島 達也

自律神経を整えて耳鳴りやめまいなどの症状を改善するにはツボ刺激が有効

[ひさじま・たつや]

横浜市立大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。鍼師、灸師。帝京平成大学、帝京大学、横浜市立大学などで、神経系や免疫系を中心に東洋医学、精神神経免疫学などの分野での研究と臨床にたずさわり、2010年より現職。所属学会は、全日本鍼灸学会、日本自律神経学会、統合医療機能性食品国際学会、日本解剖学会、日本神経科学学会、日本医真菌学会、日本顕微鏡学会など。

「万病のもと」といわれる冷えや低体温に悩んでいる人の多くは、自律神経(意思とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)のバランスが乱れ、耳鳴りやめまいなど、耳の不快症状を抱えていることが少なくありません。自律神経のバランスを整えて、耳鳴りやめまいなどの耳の不快症状を改善するには、ツボ刺激が有効です。

 ツボの起源は、2000年以上前の古代中国までさかのぼります。ツボや鍼灸が中国から日本に伝来したのは5〜6世紀といわれ、それ以来、ツボは鍼や灸の刺激部位として使われています。

 ちなみに、日本の鍼灸は、中国の伝統医学である中医学の影響を受けて日本独自に発展した、漢方医学の治療法の一つとして普及してきました。漢方医学とは、漢方薬だけではなく、鍼灸やあん摩、指圧、養生(予防医学)などを指し、それらを組み合わせて最も有効な治療法を提供するのが特徴です。

 漢方医学は、まず「証」を立てるところから始まります。「証」を立てるとは、患者さん一人ひとりの体質と病気の症状に対する反応や経過、病気の起こり方の見定めのことで、診断の基本となります。「証」には陰陽・虚実・寒熱・表裏・気血水などがあり、これらを物差しとして組み合わせ、体の状態と症状を総合的にとらえます。近年、西洋医学でも理想とされているテーラーメイド医療を、漢方医療では数百年以上も前から実践してきたのです。

 漢方医学で最も重視する「証」は「気血水」です。「気血水」は、体を構成する重要な要素で、互いに影響を及ぼし合っており、どれか2つのバランスが乱れると「未病(病気に向かいつつある状態)」、3つすべてのバランスが乱れると「病気」ととらえられます。

「気=自律神経機能」「血=血液循環・内分泌(ホルモン分泌)機能」「水=免疫機能」といい換えるとわかりやすいかもしれません。「気血水」は、外部環境が変わっても体内環境を一定に保ち、生命を維持するしくみである「ホメオスタシス(生体恒常性)」を支える三大要素なのです。

「気血水」が流れる経路のことを「経絡」といいます。経絡は体の左右半分に12本ずつあり、全身をくまなく覆い、互いに関連し合いながら全身の内臓を調節しています。そのため、肝経、心経、脾経、肺経、腎経などと内臓の名称がついています。経絡を鉄道の線路にたとえると、ツボ(経穴)は、経絡という線路上にある駅ということができるでしょう。

 経絡の流れが滞ったり内臓に異常があったりすると、その不調はツボに反映され、硬くなったり腫れたりして、圧痛(体を指先などで圧迫したときに生じる痛み)が強くなります。このようなツボを刺激することで「気血水」の流れを改善することができ、内臓の働きを整えることができます。代表的なツボの刺激方法には、鍼・お灸・指圧の3つがあります。ツボは、約365個あるとされています。偶然とはいえ、1年が12ヵ月、365日あることと関係しているのかもしれません。

 ツボには重要とされるものがいくつかあります。それらは神経や血管の近くに位置することが多く、温痛覚や触圧覚といわれる鍼灸や指圧による刺激は、感覚神経に直接働きかけて、筋肉のこりをほぐしたり、血流を改善したりする効果が期待できます。また、刺激は脊髄を経由して大脳にも伝わります。大脳は刺激を受けた特定の部位の不具合を調節する指令を出し、体の不調を改善するのです。

耳鳴り・めまいの原因の一つは脳の血流不全で「天柱」と「風池」のツボ刺激がおすすめ

耳鳴り・めまいの特効ツボ

 目・耳・鼻などの不調は、頸動脈と椎骨動脈といった脳に血液を送る血管の異常が原因であることが少なくありません。耳鳴りやめまいも例外ではなく、脳の血流不全が原因の一つと考えられています。耳鳴りやめまいは、漢方医学では水分代謝の異常によって起こる症状と考えることができ、「水」や「血」を整える漢方薬を使用します。

 耳鳴りやめまいなど、耳の不快症状を改善するツボとして、私がおすすめしているのが後頭部と首の境めにある「天柱」「風池」です(上の図を参照)。「天柱」「風池」は、昔から自律神経の安定に有効とされてきました。

 また、このあたりの筋肉が硬くなったり縮まったりすると、奥を通る椎骨動脈に負担がかかる可能性があるため、これらのツボの刺激が後頭部付近の筋肉を緩めるために効果的です。両手を後頭部に当てて、親指の腹で気持ちいいと感じられるくらいの強さで指圧してください。ただし、指圧しすぎると、もみ返しなどの反応が出る場合がありますので、注意が必要です。

「天柱」「風池」は首の後ろ側にあって、指圧しにくいという人もいるかもしれません。そのような場合は、食品用ラップフィルムを使った後の芯などにガムテープを巻いて補強し、就寝時に枕に乗せて「天柱」「風池」のあたりを刺激するといいでしょう。