乳房再建手術の正しい情報を発信し乳がん患者の生活の質の向上をめざして啓発活動を行う

「エンパワリングブレストキャンサー」理事長
真水美佳さん

乳がんを患ったさいに情報が少なかった経験を通して正しい情報を発信する必要性を実感

エンパワリング
ブレストキャンサー(E-BeC)


2012年7月設立。2013年1月、NPO法人に認定される。「乳房再建手術への正しい理解と乳がん患者さんのQOL向上をめざして」という目標を掲げ、乳房再建手術に関する正確な情報を広く提供することを主軸に活動。『乳房再建手術ハンドブック』の刊行やアンケート調査、全国各地を回る「乳房再建全国キャバラン」を通じて乳房再建手術の正しい情報を発信している。

 NPO法人エンパワリングブレストキャンサー(E‐BeC。以下、イーベックと略す)は、2012年7月に設立されました。2013年1月に東京都から特定非営利活動法人(NPO)の認証を取得し、活動している団体です。乳房再建手術への正しい理解と乳がんを経験した患者さんたちの生活の質(QOL)向上をめざすという目標を掲げています。

 設立のきっかけは、私が2008年に乳がんを患ったことです。当時、乳がんに関する情報は現在と比べて少なく、私自身もがんに対する知識を持ち合わせていませんでした。そのため、両側ともに乳がんと診断されたときは、これからどうすればいいのだろうと、先の見えない不安に襲われる毎日でした。乳がんが見つかったときは早期の発見でしたが、左乳房の温存手術、右乳房の全摘出手術を受け、乳房再建手術を受けることになりました。

 私が乳がんと診断されて、治療を受けていた期間、その後の生活の中でもさまざまな不安と悩みを感じました。乳がんと闘っている女性、これから乳がんになるかもしれない方たちに、私と同じ思いをしてほしくないと考えたのです。乳がんに関する啓発活動の必要性を感じ、イーベックの設立に至りました。

 イーベックでは、客観的な立場から、乳がん患者さんをサポートする科学的根拠に基づいた情報発信を心がけています。特に、乳房再建手術に関する情報発信に力を入れています。

エンパワリングブレストキャンサーでは大学での講演会も行っている
(写真提供:NPO法人エンパワリングブレストキャンサー)

 イーベックの主な活動を紹介します。
①がん関連諸団体、医療機関、企業との情報交換やネットワークの構築
②乳がんおよび乳房再建に関する啓発活動
③地域や学校、医療機関、企業などでの講演会やシンポジウム、イベントなどの開催を通じた教育活動

 具体的には、東京都内で年1回の特別セミナー、全国各地を回る「乳房再建全国キャバラン」を年2回開催しています。11月19日には11回めとなるキャラバンを宮城県仙台市で行う予定です。

ハンドブックの刊行やアンケートを実施して客観的な情報発信と啓発活動に力を入れる

乳がんを告知された女性たちのために「乳房再建手術」の経験者が作る写真集『いのちの乳房 乳がんによる「乳房再建手術」にのぞんだ19人』(赤々舎)を発行している
(写真提供:NPO法人エンパワリングブレストキャンサー)

 イーベックの活動の根幹といえる乳房再建手術の啓発活動としては、『乳房再建手術ハンドブック』の刊行、乳房再建手術の経験者を含む乳がん患者さんたちの意識を把握する「乳房再建に関するアンケート調査」を行っています。

 ハンドブックでは、乳房再建手術に関する情報をわかりやすく伝えるだけではなく、乳がん治療に入る前の口腔ケア、手術の傷をきれいに治すためのセルフケア、手術後の下着についてなど、乳がん患者さんのQOL向上に役立つ内容を盛り込んでいます。

 アンケート調査については、2013年度から毎年実施しています。乳房再建手術の経験者や関心を持った人たちを対象にした意識調査は、乳房再建に関する貴重な資料になっています。

 イーベックを設立する以前の2010年11月に『いのちの乳房』(赤々舎)という写真集を刊行しました。イーベックの母体となる「STPプロジェクト」という異業種交流チームで出版しました。乳房再建手術を受け、1度失った胸と女性としての自信を取り戻した女性たちがモデルになった写真集です。

 写真を撮ってくれたのは、モデルさんたちの心に寄り添い、その人となりや生き方までを引き出してくれる〝アラーキー〟こと荒木経惟氏です。荒木氏の手腕をお借りして、病気を克服し、病気とともに生きる女性たちの美しく魅力にあふれた姿をありのままに伝えています。

がんという病気をきちんと理解するための教育が必要だと話す真水さん

 イーベックの活動を通して感じるのは、中学や高校、大学などで早い時期からがんの教育を充実させるべきだということです。乳がんになる人が増えるにつれて、若年層の患者さんも増えてきています。がんとはどういう病気なのか、どんな治療法があるのか、治療後の人生をより充実したものにするにはどうすればいいのか。がんと診断されたときのために、あるいは家族ががんとわかったときのために、がんという病気のことをきちんと理解するための教育が必要だと思っています。がんのことを理解していないと、不安や悩みに押しつぶされそうになってしまうからです。

 乳がんは、早期発見・早期治療を行えば生存率の高い病気です。乳房の摘出手術を受けても、乳房再建手術で失った乳房を取り戻すことができます。こうした情報を知っているのと知らないのとでは、がん治療に対する心構えも大きく変わってきます。

 これまでの活動経験から、情報の質と量について地域差を感じることが多くありました。都心部であっても地方であっても、乳房再建に関する情報格差をなくしていくことがイーベックの役割だと考えています。今後もさまざまな啓発活動を通して、乳がん患者さんに正しい情報を発信していきたいと思います。

「エンパワリングブレストキャンサー」の連絡先は、http://www.e-bec.com/です。