万葉集にも詠まれた県の特産品・ジュンサイと酒粕で便通改善

秋田県総合食品研究センター食品機能グループ上席研究員
畠 恵司

清酒の製造過程で生じる酒粕を粉末にして利用

ジュンサイと日本酒製造の副産物である酒粕は、健康維持や美容に役立つと判明

 東北地方の日本海側に位置し、豪雪地帯としても知られる秋田県。県内には世界自然遺産である白神山地や日本一の深さを誇る田沢湖など、雄大な自然が広がっています。良質な水に恵まれている秋田県は、「あきたこまち」に代表されるコメの生産地として有名ですが、ほかにもさまざまな特産品があります。その1つがジュンサイです。秋田県三種町は、日本一のジュンサイの産地として知られています。

 ジュンサイは、淡水に生育するハゴロモモ科(別名ジュンサイ科)の多年生の水生植物です。水が育む夏の風物詩として古くから食され、『万葉集』では沼縄という名で歌に詠まれています。

 秋田県総合食品研究センターでは、1995年から秋田県産の食材が持つ機能性に関する研究を行ってきました。その中で、ジュンサイは強い抗酸化作用を有することがわかりました。その後も研究を重ね、抗酸化成分の正体がポリフェノールであることを突き止めました。これらの研究をきっかけに、ジュンサイに秘められた機能性の研究を進めたところ、内臓脂肪の蓄積を防ぐなど生活習慣病の予防・改善効果や、皮膚のシワやたるみを抑える美容効果があると判明しました。

 清酒出荷額が全国第4位の秋田県は酒どころとしても有名です。清酒の製造過程で大量に生じる酒粕には脂質代謝異常や便通改善の効果が報告されていましたが、品質の低下が早いため利用法は限られていました。秋田県内の企業では、酒粕を乾燥させて粉末に加工することで、長期保存可能な酒粕粉末として販売しています。そこで私たちは、秋田県ならではの素材であるジュンサイエキスと酒粕粉末を含む健康食品の開発に乗り出したのです。

 ジュンサイエキスと酒粕粉末を含む食品素材の新しい機能性を解明するため、腸内環境の改善作用に注目。20代から60代の健康な女性26人を対象に、排便日数および回数に対する影響を調査しました。事前アンケートで、健康状態や喫煙、飲酒、服薬の有無、1週間あたりの排便日数、便の状態(硬さ、形状、便臭、排便時の爽快感)を調査し、便秘傾向の女性を試験参加者として選抜しました。

 試験用の健康食品として、1粒につきジュンサイエキス37.5㍉㌘と酒粕粉末237.5㍉㌘が含まれるカプセル(試験食)を作製。プラセボ食(偽薬食)としてコーンスターチが275.5㍉㌘入ったカプセルも作りました。1日あたりの摂取量は、それぞれ4粒にしました。

 まず、試験参加者26人は、就寝前に試験食もしくはプラセボ食4粒を2週間摂取します。4週間休んだ後に、前回とは逆のカプセルを摂取して便通改善作用を評価します。この評価方法は、二重盲検クロスオーバー比較法と呼ばれています。

健康女性の便通を改善し顔の毛穴を引き締める

ジュンサイエキスと酒粕粉末を含む健康食品はプラセボ食と比較して有意な便通改善作用が確認された

 便秘傾向のある試験参加者の試験食摂取期間中の排便日数・回数は、プラセボ食と比較して、排便日数で10.6%増加、排便回数で15.6%増加しました。

 便の硬さに関する調査において、事前アンケートでは試験参加者の57.7%が硬いと回答したのに対し、試験食の摂取期間中は23.1%まで低下。プラセボ食摂取群と比較しても割合は低くなりました。

 健康な便の形状は半練り状およびバナナ状です。水状や泥状は下痢症状で、カチカチ状やコロコロ状は便秘傾向と考えられます。半練り・バナナ状の便と回答した試験参加者は、摂取前は46.2%であったのに対し、試験食摂取期間では76.9%まで増加しました。

 便臭に関しては、試験参加者の26.9%が事前アンケートではくさいと回答したのに対して、試験食摂取期間には15.4%に減少。便臭が気にならないと回答した人は、3.8%から26.9%に増加しました。排便時の爽快感については、42.3%が不快と回答していましたが、試験食摂取期間における回答では23.1%まで減少しました。

 便の状態に関して、すべてのアンケート項目で、試験食摂取により改善され、しかもプラセボ食より良好な回答結果が得られています。

 同時に行った皮膚の状態を聞いたアンケート調査では、試験食を摂取した42.3%の女性が、顔の毛穴が目立たなくなったと回答しています。

 以上の結果から、ジュンサイエキスと酒粕粉末を含む健康食品は便通改善、毛穴引き締め効果が期待できるといえるでしょう。秋田県の特産品であるジュンサイと日本酒製造副産物である酒粕。この2つを利用した健康食品も市販されています。ぜひ、健康維持や美容に役立ててください。