第2の原因は足の血流悪化で起こる閉塞性動脈硬化症で5年以内の脳・心筋梗塞に警戒

横浜総合病院創傷ケアセンター長/心臓血管外科部長
東田隆治

閉塞性動脈硬化症は心臓から遠い足で発症しやすく進行すると壊疽や潰瘍を招く

閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって血管が狭くなったり、つまったりして血流が悪化する症状。足に発症しやすく、細胞や組織に酸素や栄養が届きにくくなる

 間欠性跛行は神経に原因がある神経性跛行と、血管に原因がある血管性跛行の2種類に分けられます。血管性跛行の原因として、動脈硬化(血管の老化)が進行して起こる閉塞性動脈硬化症が挙げられます。血管が狭くなったり(狭窄)、つまったり(閉塞)して血流が悪化し、細胞や組織に酸素や栄養が届きにくくなる症状です。

 閉塞性動脈硬化症の患者さんは全国で約40万人と推定され、症状が出ていない潜在的な患者数を含めると約80万人にも達するといわれています。閉塞性動脈硬化症が起こりやすい部位は「足」です。足の動脈は長く、心臓から最も遠い位置にあるためと考えられます。

 閉塞性動脈硬化症の初期症状として、手足の末端の冷えや、足に痛み・しびれが起こる間欠性跛行があります。間欠性跛行は、動脈硬化によって足の筋肉に酸素や栄養が欠乏することで起こるため、「足の狭心症」といえます。速足歩きや階段・坂道の歩行は、普通に歩くよりも酸素が必要になるため、間欠性跛行が起こりやすくなります。

 閉塞性動脈硬化症の患者さんの中には、歩けなくなったのは年のせいだと思い込んでいる人が少なくありません。歩行時に足のしびれや痛みが起こる人は、すぐに病院で診察を受けてください。

 進行すると安静にしていても痛みが起こり(安静時疼痛)、足に壊疽や潰瘍が発生しやすくなります。壊疽とは、血流が悪化して酸素や栄養が届かなくなったり、細菌に感染したりすることで細胞が壊死を起こした結果、組織が腐敗した状態をいいます。潰瘍とは、粘膜や皮膚の表面の傷が再生せず、深くえぐれた状態のことです。

 間欠性跛行が進行して起こる安静時疼痛と壊疽・潰瘍を合わせて、「重症虚血肢」といいます。重症虚血肢の症状が現れるようになると、足の血流はほとんどがとだえ、手術が必要になります。バイパス手術や血管内手術(カテーテル手術)が難しければ、足の切断手術をさけられない場合もあります。

 閉塞性動脈硬化症で最も恐れられるのは、重症虚血肢による足の切断です。私が勤務する横浜総合病院内にある「創傷ケアセンター」では、主に閉塞性動脈硬化症による難治性の傷や壊疽などの治療を行っています。ほかの病院で足の切断を告知された患者さんのうち、67・3%もの人が私たちの治療で切断を回避しています。

 創傷ケアセンターで治療を受けた閉塞性動脈硬化症の患者数は、9年間で470人に上ります。そのうち、270人が糖尿病の患者さんでした。

心血管障害を起こす閉塞性動脈硬化症は糖尿病が最大の原因で生活習慣の改善が必要

壊疽を回避する足チェックリスト

 閉塞性動脈硬化症の治療は、初期の段階で対応できれば治療効果が格段に高まります。ところが、閉塞性動脈硬化症の患者さんは糖尿病を合併していることが多く、治療を困難にしているのです。

 糖尿病は動脈硬化を引き起こす最大の要因です。糖尿病の患者さんは、健康な人に比べて4倍近くも閉塞性動脈硬化症になりやすいことがわかっています。糖尿病の合併症で神経障害が起こると、感覚がマヒしてしびれや痛みを感じにくくなり、閉塞性動脈硬化症の初期に起こる間欠性跛行の症状が出ないこともあります。

 間欠性跛行は閉塞性動脈硬化症の初期に最も多く見られる症状の1つであるものの、症状が出ない無症候性閉塞性動脈硬化症の患者さんのほうが多いといわれています。無症候性閉塞性動脈硬化症は、症状のある患者さんの3倍にも上るといわれています。

 無症候性閉塞性動脈硬化症の患者さんは、病気が発見されたときにはかなり進行した状態だったということが少なくありません。足のしびれや痛みといった間欠性跛行の症状がなくても、糖尿病と診断された人は、定期的に循環器科や血管外科などを受診し、動脈硬化が進んでいるかどうかを確認するようにしてください。

 閉塞性動脈硬化症は、悪化すると治療の選択肢がどんどん減り、最終的に足の切断をさけられなくなってしまいます。足の切断を回避するには、壊疽につながるケガの予防が不可欠です。足に腫れ・赤み・水ぶくれ・傷がないかを観察する習慣をつけましょう。

 閉塞性動脈硬化症でさらに注意してほしいのが心筋梗塞や脳梗塞などの心血管障害です。閉塞性動脈硬化症の患者さんは、足だけではなく、心臓や脳を含む全身で動脈硬化が進んでいます。

 日本を含む世界の44ヵ国、6万8000人を対象にした調査では、閉塞性動脈硬化症の患者さんの約54%が虚血性心疾患、約24%が脳血管障害を併発していることが判明しました。閉塞性動脈硬化症の患者さんの多くは、発症して5年以内に30%近くが血管にかかわる病気で亡くなっていることがわかっています。5年以内に足を切断する可能性よりも大きな割合で、死亡率はがんよりも高くなっているのです。