間欠性跛行の第一の原因は腰部脊柱管狭窄症で神経が圧迫されて足の痛み・しびれを誘発

一般財団法人神奈川県警友会けいゆう病院副院長
鎌田修博

日本人の90%が悩む腰痛で高齢者に多いのが腰部脊柱管狭窄症で神経の血流障害が原因

[かまた・みちひろ]

1982年、慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。2009年より現職。慶應義塾大学客員准教授。日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会、日本側弯症学会、東日本整形災害外科学会、関東整形災害外科学会、脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会専門医。

 日本人の成人のうち、約90%が一生に一度は腰痛を経験しているといわれています。腰痛は日本人の「国民病」といわれ、2012年に行われた厚生労働省による大規模調査の結果では、2800万人の腰痛患者さんがいると推測されています。

 腰痛の原因は、腰の骨や筋肉、神経の障害、ストレス、内臓疾患などさまざまです。腰痛全体の約85%は、レントゲンやMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などの検査で明らかな異常が見つからない「非特異的腰痛」といわれています。

 それに対し、原因がはっきりと特定できる腰痛を「特異的腰痛」といいます。特異的腰痛は腰痛全体の約15%を占め、腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症と略す)と腰椎椎間板ヘルニア(以下、椎間板ヘルニアと略す)が合わせて約10%、内臓疾患が約2%、そのほかが約3%の割合となっています。

 高齢者に多く見られるのが、脊柱管狭窄症です。脊柱管狭窄症は50代以降になると急増し、患者数は240万人に達するといわれています。

 脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアの見分け方は、上体反らしによって痛みが悪化するかどうかで判別できます。上体を反らすことによって、痛みが悪化する場合は脊柱管狭窄症、軽減する場合は椎間板ヘルニアと考えられます。

 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に伴う神経の圧迫によって発生する足腰の痛みやしびれを「坐骨神経痛」といいます。坐骨神経痛は、人体でいちばん長くて太い末梢神経です。腰から骨盤、お尻、太もも、ひざの裏あたりを通って、足先まで伸びています。

 椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛は、腰椎(腰の骨)の神経の出入り口の部分が圧迫されるため、圧迫されている側の足腰だけに出るのが特徴です。一方、脊柱管狭窄症による坐骨神経痛は、神経が全体的に圧迫されるため、左右どちらかの足腰に出る場合もあれば、左右同時に出る場合もあります。

 手術で患者さんの脊椎の神経を見ると、椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症では状態が異なります。椎間板ヘルニアの場合は炎症物質によって神経が赤く腫れ上がっています。一方、脊柱管狭窄症の場合は、脊椎の狭くなった部分の血流が時間の経過とともに乏しくなり、神経が酸素不足でやせ細って白くなっているのです。

 椎間板ヘルニアは、背骨の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が外にはみ出し、神経を刺激する病気です。椎間板はとても繊細な組織で、微細な損傷は早くも13歳から、老化は20代から始まるといわれています。

 椎間板に大きな負担がかかると、周辺部分の薄い軟骨が層になった「線維輪」と呼ばれる、丈夫で柔軟性のある組織が壊れ、中心部から軟らかい「髄核」が飛び出します。髄核から炎症物質がもれ出し、腰椎を通る神経に炎症を引き起こして椎間板ヘルニアを発症。足腰に強い痛みやしびれなどの症状が生じるようになるのです。

 一方、脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る脊柱管が狭くなって、神経を圧迫するために起こる病気です。背骨は33個の椎骨が首から腰にかけて積み重なって構成されています。椎骨の中央には穴があいており、つなげるとトンネルのような管状になることから脊柱管と呼ばれます。

 脊柱管には、脳からつながる神経の束(脊髄や馬尾神経)と、椎骨と椎骨をつなぐ黄色靱帯が通っています。脊柱管狭窄症は、加齢などの原因で脊柱管周辺の骨が変形したり、黄色靱帯が厚くなったりして、脊柱管が狭くなることで起こります。脊柱管の内部を通る神経が圧迫され、神経周辺の血流障害で酸素不足が引き起こされるため、多くのケースで間欠性跛行を伴います。

歩きはじめて10分以内に痛み、休憩時間が1分以上になると重度の間欠性跛行

腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアの腰椎部の状態の違い

 間欠性跛行は「神経性跛行」と「血管性跛行」の2種類に分けられます。脊柱管狭窄症の間欠性跛行は神経性跛行と呼ばれ、少し休むと再び歩けるようになるのが特徴です。神経性跛行を発症している患者さんの多くは、下半身に鋭く刺すような痛みを訴えます。安静にしていても強い痛みが消えないほど重症化し、寝たきりの状態になることも少なくありません。

 神経性跛行は、起こる時間の間隔が短くなったり、休む時間が長くなったりしてきたら症状が悪化している証拠です。歩きはじめてから15分以上たって痛み、休憩時間が10~20秒であれば軽度です。しかし、歩きはじめてから10分以内に痛み、休憩時間が1分以上になると、中~重度と判断できます。中~重度の患者さんには手術をすすめる場合もあります。

 間欠性跛行は、重症化すればするほど日常の動作を大きく制限し、生活の質(QOL)を著しく低下させるおそれがあります。足腰に痛みやしびれを感じる人は年のせいと決めつけずに、必ず病医院を受診しましょう。