健康科学の最高権威が若さの秘密を初公開!「大山式ストレッチ」で健康寿命をどんどん延ばそう!

大阪大学名誉教授 医学博士
大山良德

日本にストレッチを普及させた私は健康寿命を延ばす運動を考案し広めています

[おおやま・よしのり]

1930年生まれ。京都大学助教授、大阪大学教授を経て、1994年より大阪大学名誉教授。大阪科学技術センター・ヘルスケア産業フォーラム委員長、第37回近畿学校保健学会会長、第9回日本健康科学学会会長なども務める。著書に『大山式ストレッチ健康法』(JDC)、『しあわせストレッチ』(主婦と生活社)、『大山式ウォーキング』(主婦の友社)ほか多数。

 私は今年で87歳を迎えました。体力の低下が懸念される同年代の人たちだけでなく、現代の若者たちと比べても健康であると自負しています。

 日本は本格的な高齢化社会を迎えています。医療技術の向上によって寿命が延びるのは喜ばしいことですが、健康でなければ、生活の質(QOL)はどんどん低下してしまいます。

〝健康寿命〟という言葉が聞かれるようになりました。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。

 平均寿命と健康寿命が重なる「ピンピンコロリ」は誰もが望む生き方ですが、日本人の場合は2つの寿命の差が約10年も開いています。健康寿命を短くする大きな原因の1つが〝痛み〟です。加齢とともに発症しやすくなる腰部脊柱管狭窄症や変形性ひざ関節症などによって、生活の質は大きく低下します。

 私は現在も痛みに悩まされることなく、毎日元気に地元である奈良の街を歩き回っています。今回は、ピンピンコロリの人生を送るために私が実践している健康の秘訣を、余すところなく紹介しましょう。

 健康のために行う運動として、筋肉トレーニング(以下、筋トレと略す)を挙げる人は少なくないでしょう。しかし、何よりも大事なのは、運動とともに行う〝ストレッチ〟なのです。

 私は大阪大学を定年退職する直前、ストレッチに関する米国の文献を読んで興味を持ちました。いまでは誰もが行っているストレッチですが、当時の日本ではほとんど普及していませんでした。独自に研究と実践を重ねた私は、ストレッチこそが健康の維持に役立つと確信するようになったのです。

体の深部にある赤筋を鍛えるストレッチはしなやかな体を作り健康寿命を延ばします

健康寿命を延ばす!「大山式ストレッチ」

 研究を続けていたとき、NHKからストレッチ教室のテレビ番組に出演してほしいという依頼があり、3年間(2001〜2003年)に渡って出演しました。最初は隔週だった放送が毎週になるなど、出演するたびに大きな反響を呼んだのです。番組内でストレッチ教室に参加してくださった方々も、ストレッチの健康効果の高さを実感していました。

 ストレッチによって健康寿命を延ばせるのは、筋肉が柔らかくなって血流が促進されるからです。さらに、ストレッチは筋トレと組み合わせると効果が高まります。私は、この考えから「大山式ストレッチトレーニング(OST)」を考案しました。

 ストレッチや筋トレは筋肉を鍛えて、基礎代謝量(安静にしていても使われるエネルギーの量)を増やし、余分な脂肪を燃焼する働きも高めます。高齢の方の基礎体温が低いのは、年齢とともに筋肉が衰えて、作り出せる熱量が減ってしまうからです。加えて、筋肉の衰えに伴って運動意欲を失わせるため、運動不足で血流が悪化することも体温が低下する理由です。

 ストレッチや運動をして筋肉をつけると、全身から熱が作り出されます。その結果、低体温が改善し、体を病気から守る免疫力の向上にもつながります。

 可能であれば、ふだんから決まった時間に体温を測って自分の基礎体温をチェックしましょう。目標とする体温は36度C台です。35度C台の方は低体温といえますが、ストレッチやそのほかの運動で基礎体温を上げることができます。

 運動はすればいいというわけではありません。健康維持のために「1日1万歩」を目標に掲げている人も多いと思いますが、1万歩も歩くことがほんとうに健康に役立つのでしょうか。

 人間の体には個人差があります。若い人もいれば、私のような高齢者もいます。無理をせず、自分の体に合った歩数で十分です。ちなみに私は、1日に7000歩も歩けばよしと考えています。

 1日の運動量が足りないと感じたときは、手軽に行える階段昇降で運動量を増やすようにしましょう。スクワットなどで下半身を鍛えている人は、ひざを傷める可能性もあるので無理に歩く必要はありません。

 ストレッチを行うことで、体がふだん使っている筋肉はもちろん、使われていない筋肉までほぐす効果が期待できます。筋肉の中には血管や神経が通っています。筋肉が柔らかくなれば血流が促進され、神経の伝達もスムーズになります。その結果、腰やひざの動きも滑らかになっていくのです。

 健康寿命を延ばすポイントである筋肉について、もう少しくわしく解説しましょう。筋肉には「赤筋」と「白筋」の2種類があります。赤筋は収縮の速度が遅く「遅筋」ともいわれています。体の深部に多く存在する赤筋は、有酸素運動など持久力が必要とされる運動に向き、しなやかな体形を作り出します。

 一方の白筋は体の表面近くに多く存在する筋肉で、主に瞬発力が要求される無酸素運動を行うときに使われます。白筋が発達すると、がっちりとした体形になります。

 白筋は衰えやすい筋肉ですが、赤筋は年を取ってもあまり落ちません。そのため、私は赤筋を〝生命力のある筋肉〟と考えています。赤筋を鍛えれば体はしなやかになり、健康寿命を延ばすことにも役立ちます。実は、ストレッチは体の奥深くにある赤筋に働きかけ、私たちの健康維持に大きく貢献しているのです。

健康の秘訣は〝刺激〟で運動や人との会話で心と体の両方に刺激を与えることが大切です

大山先生が実践する腰部脊柱管狭窄症の予防・改善に有効なストレッチを、大山先生自身が動画で紹介しています

 私には、毎晩欠かすことのない習慣があります。入浴後にスクワットを60回、ひざをついた状態で腕立てふせを50回行います。もちろん、筋トレで硬くなった筋肉をほぐすために、ストレッチも入念に行っています。

 以前はストレッチの後に筋トレを行っていたのですが、なぜか調子はいまひとつでした。考えてみれば、筋トレをして筋肉が硬い状態のままでは疲れが取れないのも当然です。筋トレの後にストレッチを行うようになってからは、心身ともに絶好調です。

 最近では、筋トレとストレッチの間に足裏やふくらはぎのマッサージを取り入れています。足裏は反射区と呼ばれる、内臓や諸器官につながる末梢神経が集中していると考えられています。足裏をまんべんなくマッサージすることで、全身を刺激することができます。

 毎日、筋トレと足裏マッサージ、ストレッチを行っているおかげで、腰痛やひざ痛とはまったく無縁の生活をしています。私の健康寿命はまだまだ延びていくと思っています。

 睡眠は毎日7~8時間、しっかり取るようにしています。若いころの睡眠時間はいまより短い6~7時間でしたが、年齢を重ねるごとに睡眠の必要性を実感するようになりました。

 運動や睡眠以外では、心の持ち方が大事です。「病は気から」というように、心と体は密接に関係しています。病気の最大の原因はストレスだと考えられます。
 私は心を健康に保つために〝刺激〟を大事にしています。おおぜいの人の前で講演をさせてもらうことや、雑誌のインタビューなどは大いに刺激になります。また、健康科学の専門家として、勉強を怠ることはありません。好奇心を持って新しいことを知るのも1つの刺激です。人とのつながりや新しいことへの好奇心が刺激となって、私の心を健康にしてくれているのです。

 運動やストレッチは継続することが大事です。年齢を重ねると、体の衰えを理由につらいことから逃げてしまいがちです。しかし、運動やストレッチはやればやるだけ〝健康な体〟という努力の結果がついてきます。人との会話や好奇心で心にも刺激を与えながら、健康寿命を延ばしていきましょう。