情報の9割を得る目の健康こそ健康寿命を延ばす生命線!

「母の黄斑変性をきっかけに目と脳の栄養療法をすすめています」

葉山生命科学研究所所長
葉山隆一

視力のいい人は悪い人に比べて認知症の発症リスクが6割も低下するとわかった

[はやま・りゅういち]

1975年、新潟大学医学部卒業。大学附属病院医長の後、1985年に米国留学。愛和病院副院長を経て、葉山眼科クリニックを開院。葉山生命科学研究所所長として研究活動を行う。著書に『医者がお手上げだった目の病気の次世代栄養素』(メタモル出版)など。

 人間は外界からのあらゆる刺激に対して、五感を駆使しながら脳に情報を伝えて対応しています。五感とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のこと。五感の中でも最も重要な働きをするのが、視覚です。五感がもたらすすべての情報のうち、視覚から得られる情報は8~9割にも達します。

 眼球に入ってきた光は、眼底にある網膜で像を結びます。網膜はその像を電気信号に変換し、視神経を通じて脳の大脳皮質(大脳半球を覆う層で思考や言語といった高次機能を担う)にある「視覚野」という部分に伝えます。左右の目から伝わる電気信号は、それぞれ別のルートで伝達され、視覚野で統合されて初めて1つの像として認識されます。いわば、視覚は目と脳が連携した結果なのです。

 米国で行われた調査では、視力が良好な人はそうでない人に比べて、認知症を発症する危険度が6割も低下することが判明しています。また、広島大学の研究では、白内障の手術を受けて視力が向上することで、認知機能が改善した人は9割にも上ったと報告されています。

 こうした事実は、目の組織がしっかりと働いて正しい情報を脳に送り、脳がその情報を正確に処理するようになったためと考えられます。視力がよくなれば脳は活発に働き、健康寿命が延びることにつながるのです。

 緑内障や加齢黄斑変性(以下、黄斑変性と略す)などの目の病気を改善したり、進行を抑えたりするには、目と脳の働きをともに高めることが大切です。そのためには、「目の栄養補給」と「脳の刺激」が欠かせません。私がそのことを切実に感じたのは、30代のときに米国のハーバード大学やマサチューセッツ工科大学で研究を重ねていたころでした。

 当時の日本の眼科では、視力の低下には眼鏡を処方し、緑内障や白内障の治療では薬で進行を抑えて手術をするのが主流でした。ところが米国では、目の栄養になる有効成分をとって、目の病気を予防・改善することに力を入れていました。目の栄養成分の中でも私が注目したのが、ハーバード大学で研究されていたルテインです。

 ルテインはカロテノイドという色素成分の1つで、目の水晶体や網膜に存在しています。体内で作り出すことができない栄養素のため、食事でとる必要があります。ルテインには極めて強力な抗酸化作用があり、目の病気の改善に強い力を発揮することが、ハーバード大学の研究で確かめられていました。

0.01以下だった視力が0.09まで向上し母の黄斑変性が大幅に改善した

眼球内に入った光は角膜と水晶体で屈折し、眼底にある網膜に像を結ぶ。網膜に到達した情報は視神経を通って脳に送られる。左脳と右脳が同時に受け取った電気信号を同時に処理しながら、ものの形や色、立体感などを認識している
(※イラストの顔と眼球の大きさの比率は実際とは異なります)

 私がルテインの研究で特に注目したのは、黄斑変性に対する働きです。米国において、黄斑変性は中途失明原因第1位の目の病気です。最近になって日本でも急激に増えていますが、私が30代のころは非常に珍しい病気でした。

 実は私の母も、左目が黄斑変性を発症し、失明に近い状態になっていました。私は、FDA(米国食品医薬品局)がルテインを認可すると同時に、母に試してもらいたいと思いました。そこで、マリーゴールドに含まれるルテインのほか、ビルベリーに含まれるアントシアニンが含有された健康食品を飲ませたところ、0.01以下だった左目の視力が0.09まで回復。右目の矯正視力は0.9~1.0まで改善したのです。

 その後、緑内障や黄斑変性、白内障の患者さんに了解を得て、通常の治療と併用しながら、ルテインやアントシアニンが含まれた健康食品を飲んでもらう試験を行いました。試験を終えるとほとんどの患者さんの視力が向上し、いきいきとした表情が見られたのです。

 患者さんの目の病気が改善して視力が向上すると、表情が豊かになり、積極性や意欲が高まることを日々の診療で実感しています。皆さんも目の健康を維持して、正確な視覚の情報を脳に伝えるようにしてください。脳が活性化して、健康寿命が延びることにつながるからです。