変形性股関節症には足をゆする「ジグリング」が有効!関節に負担をかけない小刻みな動きが激痛を軽減し可動域も改善

神奈川リハビリテーション病院病院長/東京慈恵会医科大学客員教授
杉山 肇

足を小刻みに動かすジグリングで股関節に栄養が行き渡り痛みの軽減・動き改善の期待大

[すぎやま・はじめ]

1957年、神奈川県生まれ。1982年、東京慈恵会医科大学卒業。同大学整形外科に入局、東京工業大学精密工学研究所へ国内留学し、人工股関節の生体材料開発に取り組む。1994年、東京慈恵会医科大学整形外科講師、2005年、山梨大学大学院整形外科准教授、2010年、神奈川リハビリテーション病院整形外科部長。その後、同副病院長(東京慈恵会医科大学客員教授)を経て、2016年より現職。

 変形性股関節症の治療は、手術と手術以外の治療法の2つに大きく分けられます。手術以外の治療法は保存療法と呼ばれ、薬物を用いる薬物療法と薬物を用いない理学療法に分けられます。

 理学療法は、運動や温熱、電気などの物理的な手段を利用して、運動機能を回復・改善する治療法です。靴や足底板(靴に入れる治療用の中敷き)、サポーターなどを利用する装具療法や、日常生活での指導(杖の使用や減量、股関節への負荷の少ない姿勢・立ち上がり方・座り方などの動作のアドバイス)なども含まれます。

 変形性股関節症では、病期にかかわらず、股関節に負担をかけすぎない程度に運動を行う必要があります。運動療法は、「筋力を維持・強化すること」「関節の安定性を増して動く範囲を広げること」「痛みを軽減すること」「日常生活における歩行や動作の支障を改善すること」を目的として行われます。

 股関節に痛みがあると歩くことがおっくうになるなど、股関節を動かす機会が少なくなりがちです。すると、股関節の周囲の筋肉が硬くなってしまい、ますます股関節を動かしにくくなってしまいます。股関節への負荷の少ない姿勢や立ち上がり方・座り方など、日常生活の注意を守りながら、運動療法を治療の基本として続けなければなりません。

 また、関節軟骨には、血管やリンパ管、神経がなく、栄養補給は関節液によって行われます。関節液による栄養補給は、関節の運動によって促されます。関節の運動が行われないと、関節液がよどんでしまいます。その結果、関節液が循環せずに関節軟骨への栄養が不足し、変形性股関節症の発症などの異常につながるおそれがあります。

「ジグリング(貧乏ゆすり)」のポイント

 そこでおすすめなのが「ジグリング(貧乏ゆすり)」です。運動療法の中でも、私は患者さんにジグリングを推奨しています。ジグリングは、関節に負荷をかけずに足を小刻みに動かす摩擦運動です。そのため、関節液が絶えず循環して関節軟骨に栄養が行き渡るようになります。その結果、股関節の痛みの軽減や可動域(動かすことができる範囲)の改善が期待できると考えられているのです。

 ジグリングをするさいは、くれぐれも無理をしないことです。リラックスして呼吸を整えながら、力まずにゆっくりと行ってください。1秒間に2~3回のペースが目安です。長く行えば行うほど効果が期待できますが、継続できなければ意味がありません。疲れがなく、心地よいと感じられる範囲内にとどめ、患者さんそれぞれのペースで行うようにしてください。痛みが生じたり悪化したりするようであれば、すぐに中止するようにしましょう。

変形性股関節症でも適切な治療を受ければ痛みや運動制限が軽減・解消する改善例も多数

 保存療法をはじめ、適切な治療を受けることによって、日常生活の質を低下させる痛みや運動制限などが和らいだり、解消したりする改善例は多数の患者さんから報告されています。たとえ変形性股関節症であっても、日常生活に支障のない範囲内に症状を緩和できるケースも珍しくありません。決してあきらめずに、ぜひ前向きに人生を歩んでいっていただきたいと考えています。