アトピーの原因は「黄色ブドウ球菌」の異常繁殖!毒素を分泌してアトピーの炎症悪化の悪循環

東京女子医科大学東医療センター講師
出来尾 格

美肌菌である善玉菌は汗や角質をエサにして増殖し保湿成分を作り肌のバリア機能を向上

[できお・いたる]

1999年、慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。同大学医学部助教、アトピー外来担当を経て、2008年から島根大学医学部助教、後に講師。2010年、イングランド公衆衛生局研究員を経て、2013年から現職。皮膚に存在する善玉菌を生かしたアトピー治療の研究にたずさわっている。日本皮膚科学会専門医。

 アトピー性皮膚炎(以下、アトピーと略す)の原因を突き止めるためにさまざまな研究が行われていますが、はっきりと解明されていないのが現状です。アトピー患者さんの肌を調べると、健康な人に比べて常在菌のバランスがくずれているという特徴があると国内外の論文で報告され、常在菌バランスを整える治療が米国で臨床試験の段階に入っています。

 肌表面にある皮脂層の環境には「肌フローラ」と呼ばれる常在菌が生息しています。常在菌は「善玉菌(美肌菌)」「悪玉菌」「日和見菌」の3つに分けられます。菌の種類は体全体で20種類ほどしかいないといわれています。

 肌に存在する善玉菌の1つが、表皮ブドウ球菌です。肌のいちばん外側にある表皮に生息しています。表皮の角質や汗をエサにして増殖し、天然の保湿成分(グリセリン)を分泌して肌のバリア機能を高める働きがあります。表皮ブドウ球菌は弱酸性の状態で活発に活動し、アルカリ性に傾くと働きが弱まります。

 一方、肌の悪玉菌には黄色ブドウ球菌があります。肌が弱酸性の状態では活動がおとなしいものの、ひっかき傷や薬用石けんなどで洗いすぎるとアルカリ性に傾いて働きが活発になります。黄色ブドウ球菌はスーパー抗原などの毒素を作り出し、炎症やかゆみを引き起こすため、アトピー発症の原因の1つであるといわれています。

 ひっかき傷が多いアトピー患者さんは肌の状態がアルカリ性に傾きやすく、黄色ブドウ球菌の隠れ家となる角質に隙間もできるため、大量に増殖して湿疹や炎症が起こっています。そのため、黄色ブドウ球菌を減らすことが、アトピー患者さんには急務といえるでしょう。

 肌の善玉菌、悪玉菌のいずれにも属さない日和見菌の1つがアクネ菌で、酸素が少ない毛穴の中に生息しています。肌の状態が正常であれば、肌を弱酸性に保つ脂肪酸という成分を分泌して善玉菌が繁殖しやすい肌環境を作ります。しかし、毛穴に角質がつまって毛穴の中が酸素不足になると、アクネ菌が炎症物質を大量に分泌。その結果、毛穴を突き破ったり、肌の表面を溶かしたり、にきびを作って膿を出したりします。

 アクネ菌を常に味方にするには、肌荒れから起こる角質の増加で毛穴をつまらせないように優しいスキンケアをすることに加え、善玉菌を優勢な状態に保つ必要があります。

 アトピーの改善には、貴重な善玉菌を減らさないことが大切です。善玉菌を減らす大きな原因は、アルコールや保存料が入った化粧品類です。特にアルコールや保存料が入った化粧水は貴重な善玉菌を殺してしまうため、できるだけ含まれていない製品を選ぶといいでしょう。

 汗をふき取るウェットティッシュにもアルコールが含まれているので、アトピー患者さんが使用すると爽快感の後にかゆみを引き起こす場合が少なくありません。汗をかいたときは、ぬらしたハンカチなどで優しくふくとかゆみを起こさないのでおすすめです。

洗顔のしすぎは肌の善玉菌を減らして乾燥しやすくなるため1日1回にとどめよう

出来尾医師が考える常在菌の整え方

 顔にひっかき傷ができると傷口を清潔にするために、多くの場合は洗顔が必要になります。洗わなければ黄色ブドウ球菌が傷口で繁殖し、アトピーの悪化に加えて、とびひ(細菌による皮膚の感染症)を招く場合があります。一方、洗いすぎるのもいけません。1日2回以上洗うと善玉菌が減って肌は乾燥し、アトピーの悪化につながります。洗顔は無添加石けんで1日1回行うだけで十分なのです。

 アトピーの症状で必ず起こる乾燥は、患者さんによって原因が異なります。角質層のバリア機能の異常や湿疹のくり返し、皮膚表面のアレルギー物質を除去しようとする皮膚本来の反応など、肌のカサカサが起こる理由は非常に複雑です。カサカサ肌の原因を探るためには触診だけでなく、皮膚の水分量を専用の機器で計測する必要があるため、皮膚科専門医に相談するようにしてください。